堤未果さんのルポルタージュ。今回のテーマは食。人工肉、遺伝子組み換え動物、アグリビジネス、工業型畜産、デジタル農業などの「現場」が報告される。「デジタルテクノロジーによる一元支配が、いよいよ食と農の分野に参入し、急速に勢力を拡大してきている。・・・<食のグレートリセット>がこうしている間に着々と進行している」(pp7-8)中で、「読者が未来を考え、選び取るためのツールを差し出していく」(p8)ことを目的とした本である。
アンチ・企業、アンチ・テクノロジーにとれる舌鋒は相変わらず主観的すぎて読むのがしんどい。筆者や関係者の事実と推測と意見がごちゃまぜになった書き方に加えて、感情が入っているので、読者としては本当に知りたいことが見えにくい。本書はルポであるので、問題の全体像や構造を明らかにするものではないとはいえ、テーマについての掘り下げた分析が無いのは残念だ。
ただ、大事なテーマであることは同感だ。私自身、食とは生きていくための基本的活動であるにも関わらず、その中身についての理解は乏しい。もう少し真面目に考えて、勉強せねばだなとは感じる。
日本をはじめとした各国の草の根の再生型、循環型農業の取組みの事例紹介は参考になった。ただ、どうしてもその影響力・範囲は限定的だ。地球上の80億の人々の養うやり方になるには相当ハードル高い。
これだけ身近な食が、いかに難しい自分課題であり地球課題であることか。
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目次
第1章 「人工肉」は地球を救う?―気候変動時代の新市場
第2章 フードテックの新潮流―ゲノム編集から食べるワクチンまで
第3章 土地を奪われる農民たち―食のマネーゲーム2.0
第4章 気候変動の語られない犯人―“悪魔化”された牛たち
第5章 デジタル農業計画の裏―忍び寄る植民地支配
第6章 日本の食の未来を切り拓け―型破りな猛者たち
第7章 世界はまだまだ養える―次なる食の文明へ