その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

不思議ちゃんヘレンの物語:W.シェイクスピア 作、松岡和子 訳『終わりよければすべてよし』(ちくま文庫、2021)

2023-10-12 07:33:43 | 

今月、本作の芝居を見に行くので、予習として読んでみた。シェイクスピアの戯曲は20以上読んではいるが、本作品は初めて。

駆け足で読んでいるので細かい分はまたじっくり精読したいが、読んでいてどうも落ち着かない物語であった。その理由は主人公ヘレンの不思議ちゃんぶりに尽きる。

まずもって、何故、あれだけ自分をっているバートラムを追っかけるのか理解不能である。好青年風ではあるが、一貫性に欠ける(王の前で嘘をつきながら、あっさりと覆す)し、人を見る目も無い(ろくでなしでほらふきのパローレスに大きな信頼を寄せる)。こんな男を追い廻すヘレンは、バートラムの家柄目当てとしてとしか考えられない。そうだとすると、このヘレン、周囲の評価はかなり高い女性であるのだが、男を見る目が無いか、よっぽど打算的な女であると思わずにはおれない。 

また、ヘレンに本当に医学の技術があったのかも謎だ。亡父が名医でその遺産の薬を引き継いだと言うものの、多くの医者たちが治療不可として匙を投げた王を、その薬でいともたやすく王を治癒させてしまう不思議さ。魔法でも使ったのかしら。

さらにこの人、相当の策士である。旦那を取り戻すために、フィレンツェの婦人とその娘ダイアナと3人でグルになってバートラムを騙す仕掛けはとっても良く出来ている。王や伯爵夫人への取り入れ方も見事だ。なんかとってもあざとさを感じてしまうのは、偏見だろうか。

ということで、主人公ヘレンには全く共感できなかった。が、逆に芝居では、このヘレンにどういう性格が当てがわれて、作り上げられるのか。とっても楽しみである。それだけでも予習の意味は十分あった。

 

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