「日本陸軍とはいかなる軍隊だったのか」について、太平洋戦争において日本陸軍と戦った米陸軍の内部広報誌”Intelligence Bulletin”を紐解き、明らかにした一冊。米軍の内部広報誌という性格上、公平性・客観性には一定の留保が付くものの、戦争前線における日本軍の姿をリアリティを持って知ることができる。
日本の歴史家や作家の著作、また映像などによって、日本軍の非合理的で精神主義な思考や作戦は多々指摘されているところではあるが、米軍からの描写や分析に触れることで、違った角度で知ることができる。犠牲となった兵士たちに思いを寄せると、胸が痛み、読み続けるのが辛かった。
劣悪な傷病者への扱い、捕虜兵から見透ける前線兵士の士気、陸軍の面子に拘った玉砕戦などなど、本は付箋紙とアンダーラインで一杯になったが、本稿に書き残すには重く辛い。
本書では、日本軍をステレオタイプ的な精神主義組織と見做すのではなく、作戦のミクロレベルでの合理性や、白兵突撃一本やりではない作戦や、戦争後期後半には「バンザイ攻撃」も変更になったこと等も具体的に紹介する。一方で、日本兵個人の特徴として、「予想していなかったことに直面するとパニックに陥る、射撃が下手である。自分で物を考えず、「自分で」となると何も考えられなくなる」という日本サイドからは見えにくい米軍サイドの見立てを紹介するなど、新しい知見を提供している。
現代の社会・企業生活に依然残る日本人としての特質も感じる。単に過去の「組織と人間」の事例とするだけでなく、教訓として何を学ぶか。それが読者に問われる一冊だ。