その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

脇園彩&小堀勇介 ニューイヤー・デュオリサイタルwith 園田隆 @浜離宮朝日ホール

2024-01-11 09:26:16 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

新国立劇場の「セビリアの理髪師」でのロジーナ役で、その歌声や溌溂とした演技に魅了させられた脇園彩さん。その後も、チェネレントラでの題名役ははまり役で2回見に行ったし、昨年の「ファルスタッフ」のページ夫人役は、出番こそ多くは無かったが存在感たっぷりだった。今回、彼女とテノールの小堀勇介さんと組んでのデュオ・リサイタルが開催されるということで、浜離宮朝日ホールに出かけた。このホールを訪れるのは初めて。

ベルカント曲を集めたプログラムは、聴いたことのあるのは《マリア・ストゥアルダ》ぐらいだが、公演は、脇園・小堀両氏の本領が十二分に発揮され、素晴らしい歌声に包まれる極上の時間を堪能した。

脇園さんは、相変わらずその声量がパワフル。今回は前から4列目のセンターというめちゃ良い席を取れたので、その歌声を全身で受け止めることができた。声量だけでなく、声の美しさ、表現の多様さなどもうっとりさせられる。加えて、彼女の魅力は歌声だけでなく、その演技やしぐさにも現れる。ステージ上で簡単な演技が入るのだが、ちょっとした視線や表情で、その場面や気持ちが表現され、ピアノだけのシンプルなステージが、視覚と想像力でオペラの一場面に変換されてしまう。なんと強いオーラを持ち合わせた歌い手さんなのか。

失礼ながら脇園さん目当てででかけたリサイタルだったが、相方の小堀さんも素晴らしかった。(演奏後に記録を追ったら、昨年7月に日フィル、広上さんの「道化師」に出演されていて、日本人歌手の中では一番印象深かった人だった。)声にとっても張りがあって、透明感がある。やや硬めの印象もあるが、表現もとっても深遠。そして、細身の方な外見とはかけ離れた、その声量の大きさ、伸びやかさがサプライズ。

この2人によるソロ曲、重唱曲がうまくちりばめられたプログラムで2人の魅力が良く引き出されていた。個人的には、《エルミオーネ》の脇園さんの血気迫る歌唱と小堀さんの《オテッロ》のロゴリードには特に感銘を受けた。そして、最後のアンコールは《ラ・チェネレントラ》からの一場面を二人でやって頂いたのには狂喜。

加えて、てっきり指揮の方だと思っていた園田さんのピアノは、初めて聴く曲もイメージが明確に湧く表現豊かな演奏だった。終始笑顔で、二人を立てる様子も暖かい。

ほぼ満席の会場はブラボー、ブラバー、ブラビーのコールが舞いまくり、大いに盛り上がった。こういう小ホールでのリサイタルは、聴くほうの個人的な応援の気持ちが場の雰囲気を作りだして、とっても暖かな空気が流れる。

このお二方、今後も応援していきたい。

2024年1月9日

脇園彩&小堀勇介 ニューイヤー・デュオリサイタル with 園田隆一郎

出演
脇園彩(メゾ・ソプラノ)、小堀勇介(テノール)、園田隆一郎(ピアノ)

◆ Program 

・ロッシーニ:
 《アルミーダ》より「甘美な鎖よ」★◆
 《湖上の美人》より「おお、胸を熱くする優しい炎よ」◆

・ドニゼッティ:
 《マリア・ストゥアルダ》より「空を軽やかに流れる雲よ」★ 、「全てから見放され翻弄されて」★◆

・ロッシーニ:
 《ランスへの旅》より 「私にいったい何の罪が?~卑怯な疑いを持ったことです」★◆

 ******

・ロッシーニ:
 《湖上の美人》より「たくさんの想いが今この胸に溢れ」★
 《オテッロ》より「ああ、なぜ私の苦しみを憐れんでくれないのですか?」◆

・ドニゼッティ:
 《ロベルト・デヴリュー》より 「苦しむ者にとって涙は甘美なもの」★
 《ラ・ファヴォリート》より 「王の妾だと?~夢の中の清らかな天使」◆

・ロッシーニ:
 《エルミオーネ》より「何をしてしまったの? 私はどこに?~復讐は果たされました」★◆

(アンコール)
・ロッシーニ:《ラ・チェネレントラ》より「すべてが静かだ~えも言わぬ甘美なものが」★◆

★=脇園彩、◆=小堀勇介

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする