1月ソヒエフ祭りの最終回。フランス、ロシアに続いて、最後は鉄板のドイツ・オーストリアプログラムです。ソヒエフさんがどんなベートーヴェンの「英雄」を聴かせてくれるのか、ワクワクでサントリーホールへ。
「そう来るか~」と唸らせられた「英雄」でした。ソヒエフさんの音楽作りは、とっても丁寧で繊細。細かいニュアンスが音の強弱やテンポの変化で表現され、兎にも角にも、そこから生まれる音がピュアで美しく、流麗。いわゆる力強さ、逞しさ、劇性と言ったところではなく、純粋に音楽として美しい。好きな第2楽章も胸に迫る感情が巻き起こるというよりも、メロディに身を委ね、音楽に浸るような感覚でした。こんな「英雄」があるのだと、いつもとは一味違った新しい世界を見せてくれました。
N響もソヒエフに前のめりで応えていました。吉村さんのオーボエをはじめソロも美しい。オケ全体からソヒエフさんへの信頼と敬意の「気」が立ち籠っています。今回の演奏、私の好みだった迷いなく突き進み、感情入った逞しい「英雄」演奏とはずいぶん違ってはいたものの、素晴らしい音楽に立ち会えた感動は一塩でした。
前半はモーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」。実演に接したのは初めてかも。いかにもモーツァルトらしい快活さと悲しさを合わせた楽曲です。N響の顔とも言える2人のソロの溌溂とした演奏が印象的でした。音楽や演奏をふんだんに楽しんでいる雰囲気が伝わり、楽曲の良さが倍増するようでした。音楽も透明感あふれ美しい。このお二人を見ているとN響も随分と変わってきたなあと思います。こういう若さ、伸び伸びさって、以前のN響にはありませんでしたよね~。ホント。
N響が変わったという意味では、今日のコンサートマスターは藤江扶紀さん。このポジションに女性が座るのは初めて拝見しました。現在はトゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団のコンサートマスターということなので、ソヒエフさんとのご縁でのご招待でしょうか。舞台映えもしますし、音も良く聞こえてきました。演奏が性別によって変わるということがあるのかどうかはようわかりません(職場なら性差別と言われますし・・・)が、この日の雰囲気が変わったというのは事実だと思います。
今日ほどP席のマイシートに感謝したくなった日はないかも。ソヒエフさんの指揮ぶりが見え、視覚で音楽を楽しむことができました。また、来年1月にも来日が予定されているようです。大いに期待したいと思います。
第2003回 定期公演 Bプログラム
2024年1月25日 (木) 開演 7:00pm
サントリーホール
曲目
モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K. 364
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
1/25アンコール:モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第2番 変ロ長調 K.424 ― 第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」
ヴァイオリン:郷古廉、ヴィオラ:村上淳一郎
指揮 : トゥガン・ソヒエフ
ヴァイオリン : 郷古 廉(N響ゲスト・コンサートマスター)※
ヴィオラ : 村上淳一郎(N響首席ヴィオラ奏者)
Subscription Concerts 2023-2024Program B
No. 2003 Subscription (Program B)
Thursday, January 25, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall
Program
Mozart / Sinfonia Concertante for Violin and Viola E-flat Major K. 364
Beethoven / Symphony No. 3 E-flat Major Op. 55, Eroica (Heroic Symphony)
[Encore]
Jan 25: Mozart / Duo for Violin and Viola No.2 B-flat Major K.424 - 2 mvt. Andante cantabile
Conductor: Tugan Sokhiev
Violin: Sunao Goko (Guest Concertmaster, NHKSO)
Viola: Junichiro Murakami (Principal Viola, NHKSO)