木工芸・漆・道具        

 木肌の美しさに惹かれ、指物の伝統技術と道具に魅せられて・・・・・ 木工芸 市川 (宇治市炭山)

隠し蟻

2008-07-31 21:47:34 | 木工
煎茶の茶道家のHさんから箱手前に使う茶箱の依頼を受けました。
良い桑の木が見つかったので制作に取りかかりました。

箱の仕口には「隠し蟻」を使います。「隠し蟻」というのは、正しくは「留形隠し蟻組接ぎ」といい、ちょっと複雑ですが、丈夫な接合方法です。

まず、両方の板の接合部分の内側を3mm程度残して直角に欠き取ります。



長手の板に蟻ほぞの墨付けをして、まず鑿(のみ)で直角に掘ります。



欠き取った穴を蟻型(台形に)します。



蟻ほぞが完成。



これを妻手(短い方の)の板に乗せ、よくとがらせた鉛筆でほぞ穴の墨を付けます。



ほぞ穴は、初めに導突き鋸で、墨線に沿って切り込みを入れます。
このとき、線のやや内側に鋸を入れるのがポイントです。



そして鑿で掘ります。鑿は鎬(しのぎ)鑿を使います。



掘り終わりはこうなります。



次は留(45度)の加工

留木口台、際鉋、のみを使って、蟻ほぞの両端とほぞの下側部分の留(45度)を削ります。



これで完成。どう組み合うかわかりますね。



仮組をしてみます。



良さそうですね。

加工に使った鑿(のみ) 幅は1分半(4.5m)から2分(6mm)です。



次は、蓋の加工。蓋はもっと細かくなります。



使った鑿も、1分と1分半です。



仕口がぴたっと合ってくれると実に気分爽快です。



え、合わなかったら・・って。そのときはもー、最悪!
・・・実は、蓋の板は、厚みの墨付けを板の表にしてしまい、線が残ってしまったのでやり直しなのです・・・。

次は、箱の身と蓋のかみ合わせの野籠(段欠き)や底板や天板の入る小穴(溝)の作里(しゃく)りです。
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物置

2008-07-29 13:57:00 | 工房
しばらく書いていませんでした。
その間何をしていたかというと・・・、座卓の拭き漆をしながら、工房の裏に物置を建てていました。

畳3畳半ほどのものですが、一応軸組工法です。
暑い日中の作業はさすがにきつかったです。



中は・・・。



主に、材料置き場です。明かり取りに窓もつけました。

ついでに、工房の裏に軒を付けました。



これで洗濯物も干せるようになりました。

ところで昨日の雨、すごかったですね。

ここ炭山でも、1時間半くらい降り続きました。



裏の川も見る間に増水。



夕方、山を下りる道は至る所「川」状態。大きな木が1~2本電線に倒れかかっていました。

神戸の事故、本当にかわいそうですね。

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祇園祭

2008-07-17 23:06:32 | その他
義母と叔母のお供で祇園祭の山鉾巡行に行ってきました。

過去にも何回か写真を撮りに来たことはあったのですが、今回は
「有料観覧席」を予約しての見物。

まずは、御池通を進む「長刀鉾」



お稚児さんの舞



近づいた月鉾 



こうしてみると高いですね。ちなみに写真は合成写真です。

山鉾は別名、「動く美術館」ともいわれています。



鶏鉾の見送、16世紀のベルギー製の毛綴で重要文化財に指定されています。
今から500年も前に、このような大きな鉾を作り、それを遠い異国の絨毯で飾った京町衆の美意識、すごいものですね。

月鉾の屋根方



かっこいいですね。

ところで、鉾にはもう一つ注目に値するものがあります。
この鉾、ほぞで組み合わされた部材の固定はすべて荒縄です。きれいに巻かれた荒縄が巡行の際鉾にかかる力をうまく吸収してくれているのですね。こんな知恵と技術どこで知ったのでしょう?



装飾の彫り物もさることながら、12トンの車体を支える木製の車輪をはじめ、至る所に木工技術の粋が結集されています。
そしてこの巨大な鉾を立てるのも、重機は全く使わず人の力だけで立ててしまうのです。(来年は是非鉾立の一部始終を見学しよう!)

直進しかできない鉾の方向を90度変える「辻回し」は有名ですが、進行の微調整は、車方が持っているてこ一本でやってのけます。

そして、昭和32年までは、寺町通りから 松原通り 新町通りと あの狭い道をこの巨大な鉾が巡行していたというからそれもまた驚き。

先人の美意識、そして知恵と技術のすばらしさにふれたひとときでした。

コメント (4)
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巨大台杉の群生

2008-07-15 21:56:54 | その他
京都木工芸同好会「一木一優」の作品展{ 9月20日(土)~23日(月・祝)の打ち合わせ会で、京北町井戸へ行ってきました。 (「一木一優」のブログはこちら)

打ち合わせ会のあと、参加者で、片波川源流域の台杉の群生地の見学に行ってきました。

京北町井戸から車で20~30分林道を走り、車を降りしばらく歩くと


「片波川源流域京都府自然環境保全地域」の看板。

そこから、森に入っていくと・・・。



巨大な杉が出現

写真ではその大きさがわかりませんが、



こうしてみるとその巨大さがわかるでしょう。

こんな杉が、この地域に20~30本も群生しているのです。




これらの巨木は伏条台杉と呼ばれる「アシウスギ」の巨木



一本の株からいくつものの幹が立ち上がるという特異な形態をしています。




奥に見える巨大な杉は「大主杉」。 そのボリュームには圧倒されました。

いろいろ調べてみると、この区域の中で一番大きな杉は「平安杉」といい、
樹齢800年を超える、とありましたが、悠に1000年は超えているように思えます。

そして、もう一つ驚いたのはこれ、



近づいてみると・・・



なんと、立っている杉から、直接「板」(盤)を切り出していたのです。
魚の活き作りならぬ、杉の活き作り??? なんと残酷な・・・と思いましたが、よくかんがえてみると、
何百年も生きてきた杉を切り倒すことなく、生活に必要な材をもらう・・木で生活していた人々の、木との共存の姿なのかもしれません。

わずか1時間程度の見学時間でしたが、日々木を相手にしている私にとって、感動と、身の引き締まる思いに満たされた至福の時間でした。

この地で1000年近くにわたり歴史の流れを見てきた杉達、これからも何千年も地球と人類の歴史を見守っていてほしいと願いつつ山を後にしました。






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拭き漆仕上げと蜜蝋ワックス仕上げ

2008-07-05 21:48:25 | 木工
木工品の場合、そのままでは汚れや、水分によるシミができたりしますので塗装をします。
木工品の塗装というと般的には「ニスやウレタン塗料」を塗るのが一般的ですが、いずれも合成樹脂なので、家具には特別の場合以外は私は使っていません。
丈夫さ、安全性、美しさ等から一番良いと思っているのは拭き漆です。
漆と言うと漆塗りを連想すると思いますが、拭き漆は「加飾のための塗り物」というより、漆による木肌の保護(塗装)という意味合いが強いと思います。
いわゆる「漆塗り」では木の地肌はほとんど見えなくなり漆の艶や色が表に出ますが、拭き漆の場合は木の木目をより美しく浮き上がらせます。
拭き漆の難点は、漆の価格も高いのと、それ以上に仕上げにとても手間がかかること。

拭き漆以外には、オイルや蜜蝋ワックス使って仕上げています。

ホワイトアッシュで作ったいすで、拭き漆仕上げと蜜蝋ワックスで仕上げたものの違いをご覧ください。



こちらが蜜蝋ワックスで仕上げたものです。

以前は、白木で仕上げる場合は「オイルフィニッシュ」を使っていましたが、においがきついので最近は蜜蝋ワックスを使っています。
いずれも材にしみ込ませて固まらせるものです。ニスと違って塗膜ができませんし、天然素材ですので安心して使っていただけます。
ホワイトアッシュという白い材なのでこんな感じですが、タモなどのもう少し色の濃い材を使うと、もう少し落ち着いた感じになります。

そして



こちらは前にも載せた、拭き漆を施した椅子です。

同じ材で作ったものでも雰囲気がまったく違ってきますね。
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欅座卓 その後

2008-07-01 21:28:48 | 木工
制作中の欅の座卓。木地ができました。



こちらは天板の木表を上にした時。

そしてこちらは



木裏を上にした状態 (この方が広く使えます)

どうなっているかというと・・・



どちらも使えるよう、脚部に天板を乗せるだけにしました。

つまり、リバーシブル!

天板が重いので置くだけで大丈夫

明日から拭き漆に取りかかります

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