木工芸・漆・道具        

 木肌の美しさに惹かれ、指物の伝統技術と道具に魅せられて・・・・・ 木工芸 市川 (宇治市炭山)

栃重箱

2010-01-30 21:56:01 | 木工

またまた、重箱。今回は栃の杢を使ってみました。

ここまでは前回と同じ。仕口は隠し蟻(留形隠し蟻組接ぎ)です。

今回は底板を狂わない構造にする事を試みました。

十分に乾かし、狂いをとって厚み約8mmに削った板を、バンドソーで2枚に割りました。


これを鉋で削り平らにしました。厚みは約3mmです。


この間に3mmの厚さのスプルースの柾目板を、木目が直角の方向にはさんで接着します。
そうです、合板を作るのです。


本当はプレス機で圧着するのですが、ありませんので、平面を出した厚板に挟み、クランプを総動員して押さえました。
その数約30本。
接着剤は、PIボンドを使いました。


うまく接着できました。


これを、6mmの厚さに削りました。プレーナーを使うと縮みの逆目が飛んでしまう恐れがあるので、鉋で削りました。
片面を完全な平面に仕上げ、毛引きで厚みを出してもう1面を削ります。


ちょっと贅沢ですが、淡路の夕凪 1寸4分。
良く切れ、長切れする中仕工の鉋があると仕事がはかどります。


底板の3枚が仕上がりました。
側板に底板を嵌める小穴(溝)を突き、組み立てにかかります。


糊を付けて組み立てました。3つ重ねて大きさが揃っていることを確認します。

重箱の場合、使っている時は水で洗われ、使わない間は乾燥、と、木に取ってはかなり過酷な環境におかれます。
その影響を一番受けるのが底板です。長い使用に耐えるためには合板を使うのが良いのですが、拭漆仕上げにする場合市販の合板は使えません。
そこで、共木で合板を作ることを思い立ったのです。1枚の板を割って使うのですから、表と裏の木目は一致します。
プレス機がなくても、この程度の大きさでしたら十分圧着が可能です。
蓋もこの合板を使います。

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広重・胴摺刷毛

2010-01-27 21:13:56 | 
インターネットで、胴摺刷毛に軟らかめがあることを知り、注文しました。


広重・胴摺半通し・軟目一寸五分  九世泉清吉広重作です。
すぐにでも使ったみたかったのですが、ぐっと我慢して、まず布着せをしました。


薄めの麦漆を寒冷紗に塗って


刷毛の毛の部分に着かないように注意して全体に巻いてきれいに整え、風呂で乾かしました。


乾きました。寒冷紗の布目が残っている程度が滑らず、手触りも良いです。

早速使ってみました。

欅の座卓。もう一度#600の耐水ペーパーで研ぎ直し 


この刷毛摺りに使ってみました。これが実に具合が良い。
刷毛が厚いので漆の含みが大変良く、適度の柔らかさと腰の強さが絶妙。
漆ののびも大変良く、導管への漆の摺り込みもしっかりできそうです。

今まで使っていた硬い胴摺刷毛、欅やタモなど導管の太い材に、はじめに刷毛摺りをする場合は良いのですが、
研ぎと摺りを重ねていった時や、栃などの目の細かいやわらかい材の場合はこの胴摺り刷毛では硬すぎ、
かといって塗り刷毛では、広い面積を塗る場合、ちょっと腰が弱くて頼りなく、漆ののびももう一つでした。
これで一つ悩みが解決し、使う楽しみが増えました。

強いて問題点(?)があるとすれば・・・、

使った後の刷毛の掃除にたくさん油が要ること。
しかし、これは刷毛がたくさん漆を含んでくれることの証明でもあり、毛の柔らかさ・弾力とも相まって、掃除も気持ちが良いのです。


ところで、制作中の中椀の上塗りが乾きました。

刷毛目が残り、またブツも多いなど多くの課題が残りましたがいろいろ学ぶことができました。

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朱漆

2010-01-23 21:16:02 | 
発色の悪かった朱漆に熱を加え活性を殺してみました。

ガラスに試し塗り 右が元の朱漆。ベンガラのような色です。真ん中が活性を殺した朱漆。
鮮やかな朱になりました・・・が、活性を殺したので漆は乾きません。
そこで、クロメ漆を少し加えました。(左)


これで乾くはず。中椀に塗りました。
塗ったばかりの何とも言えない漆の艶は、ぞくっとする美しさがあります。


1日風呂で乾かしましたが、乾いていませんでした。
焦る気持ちを抑え、もう1日待ってみると、ほぼ乾いていました。(ホッ!)


発色も艶もまずまずです。もう1日乾かし、高台を塗ります。

こんなことしなくても、出来合いの朱漆を買ってくれば簡単なのですが、こんなことをすると漆のことが少しずつ解ってきます。
漆の師匠であるTさんに教えていただいた事、大藪さんからいただいた「漆」の本などで学んだことなどをひとつずつ確かめながら・・・。
それが実に楽しく、また喜びでもあります。

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日本文化財漆協会 会員漆芸展のおしらせ

2010-01-21 22:41:36 | 

文化財漆協会の会員による漆芸展が開かれます。





今回初めての出品です。今日作品を発送しました。
出品した作品は、「姫重(欅、拭漆)」「銘々皿(栃杢、拭漆、5枚セット)」「五稜箸」です。

京都からは遠いですが、お近くにお住まいの方、お近くに行かれた方は是非ご来場ください。

私は、8日~9日他の用事を兼ねて行く予定です。
会場にいる時間帯は未定ですが、最終日の午後は会場におります。

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三段姫重 完成

2010-01-20 22:55:28 | 木工
三段姫重の拭漆が完了しました。


最後はクロメ漆を使ってモスリンで拭いたので良い艶に上がりました。


蓋を取ると、こんな感じです。


内側を朱塗りにしたかったのですが、結局あきらめ、クロメ漆の塗立としました。
多少のブツはありますが、許容範囲としましょう。

朱漆を塗った中椀

発色が良くありません。


塗る前の朱漆と比べてみるとよくわかります。


朱の量を増やした朱漆で高台を塗って見ましたが、あまり変化がありません。
漆の活性を殺さないとだめなようです。
漆って本当におもしろいですね。
姫重の内側を朱塗りにできなかったのはこのためなのです。


桐箱を作って納めました。
小さな箱は、栃の銘々皿(5枚セット)です。
文化財漆協会会員展にむけて明日発送です。何とか間に合いました。

ところで、野沢パトロールさん依頼の座卓。昨日納品の予定で進めていましたが・・・

後から補修した部分がどうもまわりとうまくなじんでくれません。


もう一度天板の表面全体を軽く研ぎ直して拭漆をやり直すことにしました。
そんなわけでもうしばらくお待ちいただくことになりました。
野沢パトロールさん申し訳ありませんがよろしくお願いします。
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朱塗り

2010-01-18 21:44:48 | 
制作中の姫重の内側を朱塗りにするため、朱漆を作りました。


朱は本朱と赤口の顔料を使い、クロメ漆とも正確に重さを量って


混ぜました。混ぜると言うよりしっかり練るという感じですね。


吉野紙で漉してチューブに詰めました。


姫重に塗る前に、中塗りの済んだ中椀の上塗りをしてみました。


塗り立てで仕上げたいのですが、問題は埃対策です。
刷毛の塵、部屋の埃などかなり気をつけたのですが、今の環境では限界があります。


姫重の方は、内側の中塗りにクロメ漆を塗り重ねました。
搬入日がせまり、内側の上塗りを朱にするのか迷うところです。
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町家発ほんまもん 1月例会

2010-01-17 23:25:17 | 道具
12月に引き続き、町家発ほんまもん1月例会に行って来ました。


今回のテーマは「初削り」すなわち鉋の扱いです。
大工の工藤さんと、宮殿師の山田さんの実演と講習です。
お二人とも、現場での鉋使いについてのお話で、大変興味のある内容でした。


工藤さんは、節だらけの5寸の柱を仕上げるに必要な鉋の下端の調整や研ぎ、刃の調整など、実演をしながら詳しく説明してくださいました。


台直し


刃の研ぎ


削り
今まで大事と思っていた事の発想の転換が必要だったり、気軽にしていたことの中に大事な要素があったり、まさに目から鱗の連続でした。
特に、削りに合わせた刃先の管理、台の管理、研ぐものに合わせた砥面の管理ができることが大切、と言っておられたのがとても印象に残りました。


宮殿師の山田さん


千代鶴是秀の鉋や善作の鉋を実際に使わせていただいたり、和鉄と釜地の違いを実際に研いで確認させていただいたり、「経験することが大切。」と、普通ではおよそできない経験をさせていただきました。
特殊鉋の仕立てや調整など、もっともっとお話を聞きたかったです。


午後からは用意された削り台で、皆さん持参の鉋や槍鉋などで削りを楽しんでおられました。


奈良からおいでの、若い大工のEさん。
私の工房の近くで木工房を最近開かれた人のお知り合いで、炭山にも来たことがあるとお聞きしびっくり。
熱心に削りに取り組まれていました。。
いろんな方と親しく交流でき、また、初めてお会いする方から、ブログ見てますと声をかけていただいたのもうれしい出来事でした。

タイル作家で元職場の同僚のYさんも4ヶ月になる史くんを連れて会場に見え、久しぶりにお会いできました。お元気な様子で、子育てを楽しんでおられるのを感じました。

あっという間の一日でしたが、多くのことを学び充実した時間を過ごさせていただきました。

谷口さんをはじめスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。




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重箱 捨て摺り

2010-01-15 21:34:26 | 
重箱の捨て摺り 水研ぎを#240 #320 #400と進め、600番の耐水ペーパーでの研ぎで完了



箱の場合、隅が多いのでなかなか厄介。

そこで、角や隅がしっかり研げるよう、あて木にちょっとした工夫をしています。
四角のものは、人工大理石(デュポンコーリアン)、片面は面取りし、もう一面は面取りせず角が使えるようにしています。


平面を研ぐ時は、木地に傷を付けないよう、面取りのしてある面を使います。

一方面取りのしてない面は

このようにペーパーを巻き


角を研ぐ時に使います。


ヘラ状の物は、耐水ペーパーを先に巻いて隅を研ぎます。
木のへらではすぐにへたってしまうのでアクリルで作りました。左右あるとどこでも研げます。


ところで、今回木地の接着に使ったピーアイボンド。
耐水性がしっかりしており、密着性も良いので安心して使えそうです。これで一つ課題解決です。


生漆を刷毛摺りして、綿布で拭き取りました。


導管は完全に漆で埋まり、しっかりした下地ができました。
この後、内側は黒目漆で中塗りした後上塗り、外側は拭漆で仕上げます。
手間はかかりますが、サビなど使わず、こうして漆だけで下地を固めることにより、本当に漆の丈夫さを引き出した漆器ができると思います。
自然が長い年月かけて育んできた木や漆を使わせてもらう以上、長く使い続けられるものを作る努力を怠ってはならないと思うのです。

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初滑り

2010-01-13 13:30:37 | スキー
この3連休、所属するKTSスキークラブの合宿で野沢温泉へ行ってきました。
これが、今シーズン初滑り。
野沢温泉スキー場の魅力は、その広さ、ゲレンデの多様さと自然、そして雪の多さ・・・


この毛無山山頂に登れば、大きく視界が開けます。


晴天に恵まれた3日目、やまびこゲレンデ頂上から、樹氷と新潟方面の眺め


こちらは北アルプス方面


たっぷりの雪は雪質も抜群
久しぶりに、思いっきり滑りました・・・と言いたいところですが、すぐに足腰の疲れが出て、足はがくがく、太ももはつりそうになるわ・・・、日頃の運動不足がたたりました。

今回、1日目の午前中は恒例のクラブ行事、「KTSカップ」
初滑りの朝一番にレースというのはつらいものがありましたが、がんばりました。

小生の「勇姿?」
5シーズンぶりに2本とも完走し、堂々2位に入りました!!

2日目は講習会

この日は朝から雪、雪。T指導員のもと、基礎からみっちり指導を受けました。

野沢温泉のもう一つの楽しみは、やはり温泉
1日目の夜は温泉街の中心で、『ニコニコ冬まつり』オープニングフェスティバルが開かれ、行ってきました。


広場では道祖神太鼓が打ち鳴らされ、大勢の人で賑わっていました。


「スキー史パレード」も行われ、その当時の服装で当時の用具をもってパレード。
そういえば、信州生まれの小生が初めてスキー場でスキーを履いて滑ったのは今から47~8年前の中1の時、その時履いた板は180~190cm。
恐ろしく長かったのが印象に残っています。
教えてもらったスキーは外向傾を強調した「オーストリアスキー」でした。

しかし近年、スキー人口も減り、スキー場はガラガラ。今回も数少ない3連休とは思えない混み具合でした。
不況の影響か、若者のアウトドア離れなのか・・・どうなっていくのでしょう。
スキー場も経営が難しくなり、リフトの数も減っています。


この柄沢ゲレンデも2本あったリフトの内、上の1本は動いていません。

楽しかった3日間はあっという間に過ぎ、将来に対しちょっと複雑な思いも感じながら帰路につきました。

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手黒目漆

2010-01-08 18:04:21 | 
姫重の捨て摺りが乾く間に次の準備をしました。
生漆の手黒目です。


8月に寒冷紗で漉した荒味漆。細かなゴミを取り除くため漉しました。


気合いを入れて、なやし、くろめの開始
今回は80gの生漆をくろめました。


ひたすらへらでかき混ぜてくろめること2時間15分。くろめが完了。
80gの漆が62gになってしまいました。約22.5%の水分をとばした事になります。
今回は、1時間は室温(約18度)で。その後100W電球で暖めましたが、漆の温度は最高で27~8度までしかあげていません。
いろいろ調べた結果、低温でくろめる方がより艶が良く透明性の良い黒目漆になることがわかったからです。
温度を上げないので、部屋を暖房して湿度を低く(約40%)することにより、水分が飛びやすくしました。


くろめ作業中に入った埃等を取り除くため、もう一度漉し紙で漉してチューブに納めました。


最終的にできた黒目漆は50gになってしまいました。
この黒目漆を使って朱塗りをします。

今日のもう一つの仕事は、座卓の入り皮部に埋めた錆(さび)の研ぎ

かなりしっかり埋めたつもりですが、痩せにより埋めきらない部分が少し残りました。
再度錆を重ねました。


明日から3連休。この連休、小生は所属するスキークラブのツアーに参加。

そこで、スキーのホットワクシングをしました。
このチューンナップ台、家の中の作業でもワックスが床に落ちないように自作した物。
折りたたみ式です。
今まで家の作業場でやっていたのですが、物置と化している、工房に持ってきて作業をしました。

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