かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

戦うべきときは戦うべし、という当たり前のことが、ようやく言えるようになってきたのでしょうか。

2009-06-07 22:06:21 | Weblog
 連載小説「アルケミックドリーム 向日葵の姉妹達」も新章に入り、いよいよ夢の世界が舞台になります。この夢、果たして表題どおりの「アルケミック」な夢になっているかどうか。もう少しで折り返し地点に差し掛かるところまで進んだこの小説。色々なことはおいおい確かめていただければと思います。

 さて、エールフランス機の大西洋遭難事故、とうとう決定的な発見があり、男性二人の遺体を初めとする、事故機のもの、と推察される様々な残骸が回収されたそうです。フランス原潜の到着までもう少しかかるようですが、果たしてブラックボックスは回収されるのか。生存者、という本当の奇跡はありうるのか、原因究明まで進めるのか、などなど、まだまだ興味は尽きません。日本の報道機関ももう少し情報を流してくれたらいいのですが、日本の会社の事故ではなく、日本人も乗っていなかったということで、その関心はごく低いようです。でも、現代のこと、搭乗者の中には、日本と縁のある人がいるかもしれませんし、日本人と友人とか、ひょっとして親戚とか、無関係とはいえないような人もあったかもしれません。そんな少数のために貴重な紙面を割くわけには行かない、ということなのかもしれませんが、現代の最新鋭旅客機の謎の事故、というのは、原因が解明されない限り常に機体設計の不備などの不安を抱え込むことになりかねません。正直どうでもいいようなニュースにしかみえないものも散見されるわけですし、もう少しだけ関心を持って報道してもらえないか、と思うのです。

 ところで、総理大臣が、核実験、長距離弾道ミサイル実験準備、など矢継ぎ早に緊張を高める隣国への対処として、「我々は戦うべき時は戦わねばならない。その覚悟を持たなければ、国の安全なんて守れるはずがない」と勇ましくも宣言してくれました。色々と物議をかもし、正直あまり評価できない総理ではありますが、この断固たる姿勢はまずまず好感が持てます。もっともわが国の戦力は近接防衛のみに特化していて危ないところを強制的に消火しに行くだけの能力を持っていないので、単なるリップサービスにとどまるのかもしれません。そこでできれば、露骨な選挙対策でも何でもいいですから、実のあるところも政策として見せて欲しい気がいたします。あるいはアメリカなり中国なりがちょっと本気を出しつつあって、そんな流れが総理の耳に入っていたりするが故の強気だったりするのかもしれません。韓国軍も緊張を高めている様子ですし、本当に近々「何か」あるのかもしれませんね。いずれにせよ、マスコミや政府には、信頼できる情報を出来るだけ多く提供してもらいたいです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

08 悪夢 その1

2009-06-07 09:26:43 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 夢に入るという感覚は、スカイダイビングに似ているかもしれない。
 夢の中に上下がはっきりあるわけでも無し、重力が働いていると言うわけでもない。そもそも心の問題なのであるから、現実世界の物理法則などここではほとんど意味がないと言えばそう言えてしまう。だが、いかに夢があらゆる事において自由自在だと言っても、それが人間に起こる事象である以上、自ずとその制約を受けることになる。人は、まだ重力のくびきからは逃れられていない。だからこうして夢に入るときは、形として、下へ下へと落ちていくイメージを伴うのだ。
 麗夢の周りを、30分も眺めていれば気が触れてしまいそうな極彩色の光の渦が、奇怪に歪みながら下から上に流れていく。ひしゃげたあぶくのような灰白色の塊が、ぶよぶよと蠢きながら堕ちていく自分の両脇を避けるように浮き上がっていく。そんな様子を見ると、これはスカイダイビングと言うよりは深海探査艇のそれに近いとも言える。
 ただ違うのは、いくら潜っても圧力が増すことがないことと、多分こちらの方が重要なのだが、命綱の類がないことだろう。いつもならそんなことは百も承知で飛び込む麗夢なのだが、今回に限っては、どうもいやな予感がしてならなかった。多分、アルファ、ベータがいないことや、円光等の助力も期待できないことが、余計不安を助長しているのだろう。
 でも、それよりも麗夢の心に引っかかっているのは、結局まだこのこと自体に釈然としない思いを拭えないでいることだ。今、麗夢が侵入を試みている夢。これは、黒髪のロムこと真野佐緒里嬢の夢なのである。
 麗夢は正直気乗りしなかった。第一、ROMはプログラムのバグから暴走したのである。真野昇造氏はそのことを理解し、そのバグを修正してから佐緒里嬢に移したのであろうか。真野氏はその事について何も語らなかった。つまり、最悪ROMの暴走部分を、佐緒里はそのまま受け継いでいる可能性があるのだ。それでも、まさに土下座して頼み込む昇造氏の願いを、麗夢は無下にすることもできなかった。結局首を縦に振った麗夢は、ようやく降り立った佐緒里の夢にその建物を見たとき、あの苦戦した闘いのことを思い出して、嫌な予感に囚われた。
 麗夢の目の前にそびえ立つ建物。それは間違いなく屋代修一の屋敷そのものに違いなかった。思わずごくりと息を呑むほどの威圧感を覚える。しかも今回は円光の助太刀はない。何かあっても、麗夢一人で切り抜けなくてはならないのだ。
(でもまあ、ここは夢の中なんだから……)
 前回は現実世界での闘いだったから、自ずとこちらにも力の限界があった。だが、今いるのは間違いなく夢の中。確かに普通の人の夢とはどこか違和感を覚えるが、ジュリアンの夢に比べればはるかに自然だ。それに、麗夢の持つ本来の力を掣肘する物は何もない。麗夢は懐の拳銃を確かめると、意を決して記憶のままの扉に手をかけた。
 ぎい。
 古風で重厚なドアを引きあける。
 中はうっすらとほこりが溜まり、調度品や天井には、ほこり塗れのくもの巣が乱雑にかかっている。
 永らく生きて動く者がないまま、封じられた世界。
 あの時もそうであったように、麗夢は慎重に辺りをうかがいながら、屋敷の中に足を降ろした。
 ふわっと浮いたほこりが足元を舞い、そっと降ろした足音が、小さく屋敷の奥にこだましてささやきかえしてくる。そのままじっと耳を澄ましてみるが、自分の足音以外聞こえてくるものは何もない。
 麗夢はそっと入口から離れて、三歩エントランス・ホールへ足を進めた。その背後で、再びぎいと音を立て、入り口のドアが閉まる。どうやら麗夢が侵入してきたことを、夢の主はご存じらしい。そしてその気配は決して友好的とは思えなかった。
「どうやら、ただの調査行ではすみそうにないかもね……」
 麗夢はチラとドアをかえりみると、不敵な笑みを浮かべ、まっすぐ奥へと進み出した。
 前回、屋代邸を訪れたときは、グリフィンの設置場所が判らず、闇雲にドアというドアを開けながら奥に進んだが、今回はその必要はない。
 麗夢は、左右に並ぶドアの数々を無視しながら、最奥の突き当たりに歩を進めた。
 その奥に目指すグリフィンがある。
 そして、おそらくは夢の主、ROMのプログラムで構成された、佐緒里の精神がいるに違いない、と麗夢は確信していた。
 やがて麗夢は、暖炉のある古い応接間に入り、正面にあるドアの前に立った。
 本物の屋代邸では、このドアの向こうで待ちかまえる凄まじいセキュリティシステムの波状攻撃に、円光と二人危うくやられるところであった。
 麗夢は左脇のホルスターから愛用の銃を取り出すと、左手をドアのノブにかけた。
 その奥で待つのは友好の握手の手か、はたまた手荒い歓迎の嵐か。
 がちゃり。
 思いの外軽くドアが開き、麗夢は電子の神殿、グリフィンの元へと侵入した。
 同じ光景。
 同じ雰囲気。
 唸りを上げて稼働する巨大なグリフィンが奥に鎮座し、その周囲に、かつて雨霰と弾丸を浴びせかけてきたバルカン砲の銃口が並び立つ。
 ただ唯一の違いは、一人の少女が砲列に取り囲まれるようにしてグリフィンの前に立ち、無表情にこちらをじっと伺っていることだった。
 その姿形は、さっき真野昇造の横に佇んでいたのと同じ、ストレートの黒髪に、清楚な白のワンピースといういでたちである。
「やっぱりここにいたわね。佐緒里さん、いえ、ROMと呼んだ方がいいかしら?」
 すると佐緒里は問いかけには答えず、黙って軽く首を右に振った。
 その視線の前にある壁に、突然音もなく四角い明かりが瞬いた。
 見ると四〇インチはありそうなディスプレイが壁に埋め込まれている。
 あの時はこんなのは見なかったな、と麗夢は興味深げにその画面に目を向けた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする