かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

梅雨突入を控え、今年最後の花を楽しみました。

2009-06-21 21:35:25 | サボテン
 今日は朝からそれほど暑くも無いか、と思っていたのですが、3時過ぎに軽く通り雨がさっと行った後に日差しが戻るというイヤな天気で、まるでサウナ風呂にでも入っているかのような蒸し暑いひと時がありました。ようやく梅雨本番というところでしょうか。明日からはしばらくお日様とは縁の薄い日々が続くらしいですし、この春から初夏にかけてはとにかく雨がありませんでしたから、このあたりでしっかり降ってくれることを期待しています。
 
 さて、そんなわけで、サボテンの花もそろそろおしまいです。本当はまだつぼみが付いていて、後1週間もすれば花が咲くぐらいまで膨らんできてもいるのですが、本格的に入梅したとあっては、そろそろ夏越しのための休眠の準備に入らないといけませんし、ここで無理に花を咲かせて消耗してしまうと、秋の生育、ひいては来年の花にも影響しますので、涙を呑んで残るつぼみを摘んでしまいました。更に小さいつぼみが残ってはいますが、恐らくこれはそのまま咲くこともなくしぼんでしまうことでしょう。春、もう少し早く植え替えして水をやり、休眠から目覚めさせてやれば、花も早く咲いて全てのつぼみを開かせることも出来るのですが、簡単なフレームしかないうちの施設では、やはりお彼岸を過ぎるまでは植え替え・水遣りを始めるのは高いリスクがあります。昔それでたくさんのサボテンを3月最後の寒波で枯らしてしまった経験があるだけに、なかなか思い切って作業できないのです。そのためにも、この冬が来るまでに温室を何とかしたいと思っております。

それで、今年最後の花は、例によって青王丸の黄色い花です。



アップでも一枚撮ってみました。金属光沢を持つ半透明な花弁が重なり合って生み出すグラデーションの造形美は、まさに絶品の自然の妙味をかもし出してくれます。


 青王丸は自家和合性ですので、このまま放っといても種子が実ります。花の右下の小ぶりのサボテンは、2年前にこぼれた種子が芽を出して、知らぬ間に育っていたという第2世代ですが、いくら花がきれいでも青王丸ばかり増やしてもしょうがないので、どうしたものか、とちょっと思案中です。

 ところで連載小説は来週から再びシェリーちゃんの独白による「お姉さま」とのめくるめく大阪探検の再開です。今度は円光さんも加わっての珍道中になります。もちろんその先にはクライマックスが控え、いよいよ後半に突入! という段階です。



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08 悪夢 その3

2009-06-21 10:01:55 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 この期に及んで何を? となおもその華奢な姿に迫ろうとした麗夢の全身に鳥肌が立った。身体を圧する驚異的な威圧感が、肌をピリピリと震えさせる。麗夢は、気を奮い起こして目の前の佐緒里=ROMを凝視した。その背後、グリフィンの中心から、漆黒の闇よりも濃い負のエネルギーが、渦巻きながら吹き出していた。
 暗黒の瘴気だ。
 瘴気は、所々で不気味な稲光をちらつかせながら急激に佐緒里=ROMの夢を侵食していった。
 更に所々で一段と濃く凝り固まった瘴気から、実体を得た悪魔の手先が生まれていった。
 人の夢を啜り喰らい、悪夢へと落とし込む夢魔の群である。
 麗夢は背筋にぞっとした冷や汗を覚えつつ、醜く変容した佐緒里=ROMの夢を凝視した。
「なぜ夢魔がここに?」
 すると佐緒里=ROMは、今や幾百とも知れぬ数まで膨れ上がった夢魔達に囲まれながら、麗夢に言った。
「人間達の夢を集めていたとき、その一つから彼らを取り入れた。私の完成に不可欠な因子の一つだ」
 まさか! 麗夢は思わず出かかった叫び声を呑みこんだ。
 かつて、ROMは人間の心を理解するため、その精神を根こそぎ奪い取っていった。人口一千万人を超える東京都中心部が、そのために目覚める者とて無いゴーストタウンに変じたのだ。だが、その夢の中に、夢魔に苛まれていた人がいたとしたらどうだろう。ROMはなんの区別もしないままその悪夢を取り込み、保存したのではないか。そしてその解析にも取り組んでいたのであろう。その課程でROMが夢魔に汚染されてしまったとしたら……。純粋なプログラムであったが故に、人間なら多少は備えている太古の呪いへの抵抗力を、ROMは持っていなかったに違いない。それが佐緒里=ROMと言う格好の器を得たとき、悪夢と直結した佐緒里=ROMの夢は、そのまま悪夢の噴出口としてその火口を現実世界に開いたのだ。
「まさかプログラムが夢魔に侵されるなんて、正直思わなかったわ」
 麗夢は一人突然のピンチに唇をかみしめながら、剣の束をぐいと握り直した、その時である。
「にゃーン!」
「ワンワンワンっ!」
「アルファ! ベータ!」
 突然空から降ってきた二色の毛玉が、麗夢の左右に見事な着地を決めた。右のオレンジは子猫のアルファ、左の焦げ茶は子犬のベータである。二匹のテレパシーが、鬼童と共に、大阪ビジネスパークの一角にそびえる真野製薬のビルディングに駆け付けてきたのだと告げていた。間一髪と言えたかも知れない絶妙のタイミングに、麗夢の気合いが一段と高まった。
「ありがとうアルファ、ベータ! それじゃ、この悪夢をきれいさっぱり掃除しちゃうわよ!」
 麗夢の言葉を待っていたかのように、二匹はその持てる力を解放した。ドリームガーディアン降臨に匹敵する光の柱が二本、麗夢の左右に噴騰し、掌に乗りそうな小さな身体が、人の背丈を超える巨大な姿に生まれ変わった。鋭い爪、長大な牙、あらゆる物を噛み砕く強靱な顎を備えた二頭の魔獣が、麗夢の左右に出現したのである。
「行くわよ、アルファ、ベータ!」
「グゥオウワゥオゥ!」
 肝魂も消し飛ぶほどな咆哮の二重奏が闇をうち払った。横溢する力を光に変えて惜しげもなくなびかせながら、三本の光芒が一気に飛んだ。
 麗夢の斬撃が闇を裂き、アルファ、ベータの爪と牙が瘴気を打ち払う。一陣の颶風となって夢魔達を屠りまくった三つの光が、瞬く間に佐緒里の夢を席巻し、数だけは圧倒的多数を誇った夢魔が見る見る討ち減らされる。遂に最後の一体があえなく消滅し、麗夢、アルファ、ベータは、三方から佐緒里=ROMを取り囲んだ。だが、佐緒里=ROMは一向にひるむ様子もなく、相変わらず無表情に麗夢を見つめて言った。
「これまでのデータを解析した結果、現状でお前達を排除するのは不可能であるとの結論に達した」
「賢明な判断ね。降参する気になったの?」
 すると佐緒里=ROMは、抑揚のない平板な声で答えた。
「準備が整った。私の主体を向うの私に移動させる。この肉体はもういらない」
「どういう意味よ!」
 見ると、既に佐緒里=ROMの体が足元から薄く透け始めているではないか。麗夢の視界の端に、あの大きな液晶ディスプレイが映った。その中のシェリーちゃんが、信じられないことに声を荒げて怒りをぶつけているようだ。やがて映像が不安定に揺れ、シェリーちゃんの顔を外れて、その足元へと急に移動した。
「いずれお前達のデータもいただく。お前達も私の完成に必要な因子かも知れない」
 佐緒里=ROMは今や全身透明感を増しながら、麗夢に最後の一言を告げた。
「待ちなさい!」
 麗夢は思わず叫んだが、佐緒里=ROMは遂にくすりとも笑うことなく消滅した。
 その途端、佐緒里=ROMの夢が急激に光を失った。
 奇妙に歪み、明らかに崩れはじめている。
 たちまち麗夢、アルファ、ベータは現実感を喪失し、次の瞬間には、意識そのものを鷲掴みにされて、猛烈な勢いで投げ飛ばされた。
 はっと気が付いたとき、麗夢達は、既に佐緒里=ROMの夢から強制的に排除されていた。いや、その母胎を動かす命というエネルギーが唐突に失われたため、佐緒里=ROMの夢もまた消失してしまったのだ。そのために麗夢達の意識が居場所を失い、一気に本体に帰ってきたのである。
 麗夢は、まるで静かに眠ったままに見える佐緒里=ROMの首筋に手を当てながら、近寄って鼻を鳴らすベータに言った。
「どう?」
 麗夢の問いかけに、ベータは難しい顔のまま首を左右に振った。命の匂いがしない。すなわち、たった今、佐緒里=ROMは生命活動を停止したのだ。
 まるで、コンピューターののスイッチをぷつりと切ったときのように。
 麗夢はやりきれない思いを持て余しながら、とにかく立ち上がった。今はシェリーちゃんを助けないといけない。
 きびすを返し、仮眠室に当てられた部屋を出ようとした麗夢の耳を、真野昇造翁の悲鳴が駆け抜けていった。
 どうやら一刻の猶予もないようだ。
 麗夢、アルファ、ベータは、文字通り脱兎の如く駆け出した。
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