かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

本格的な雨の前に布団を干して、今日は気持ちよく寝られそうです。

2009-06-28 22:01:16 | Weblog
 今週は、明日から本格的な雨の毎日になる、との予報です。今日はその前の貴重な日差しの出る日曜日になりましたので、久しぶりに敷布団を干してみました。もっとも、日差しがあるとは言え空にはいかにも怪しげなグレーの雲が空の大半を覆いつつ低空を流れて行ってましたので、今にも降り出しやしないか、と気になってしょうがありませんでした。まあこの時期にあんまり長いこと日に当てていたら夜暑くてとても寝られたものではありませんので、干していたのはほんの1時間少々でしたが、それでも取り入れ直後はすっかり熱せられておりました。それを日陰の風通しの良いところでしばらく置いて冷まし、今寝床に敷き伸べています。今夜はすっかりふかふかになった布団で、良い夢が見られそうです。
 ついでに、明日からの雨で四国の水がめ、早明浦ダムも水が溜まったらいいですね。現在の貯水率は28%ほど。このまま梅雨が明けてしまったら、また今年も沈んでいた旧村が出てくるようなことになるに違いなく、真夏に水無しという過酷な数週間を迎えることになりかねませんから。

 さて、連載小説「アルケミックドリーム 向日葵の姉妹達」は、再びシェリーちゃんとそのお姉さま、これに円光さんが加わって、海水浴に続いて夏の定番、お祭りに向かいます。目的のお祭りは天神祭。関西でも最大級の、連なる屋台、夜空を焦がす花火、そして繰り出す人々の数、で有名な一大イベントです。そんな楽しげな舞台で何ゆえに表題が「亀裂」? かというと、まあ既に概略はその前の章でモニター越しに間欠表示していたわけですが、今回を含めて4小節に小分けして、その詳細をアップして行く予定です。いよいよクライマックスに向けての前哨戦が始まった、という段階。真夏の夜の夢がどう動いて結末を迎えるのか、お楽しみいただければ幸いです。



 
 
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09 亀裂 その1

2009-06-28 10:45:59 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
「夏と言えばお祭りよお祭り!」
 ちょっとしたアクシデントで海水浴を中止したお姉さまこと佐緒里? こと謎の少女は、それまでと同じく私の手を力一杯引っ張りながら、また電車にと駆け込んだ。
 「ど、どこへ行くんですか?」
 朝、関西国際空港に到着してからずっと走り詰めのような気がする私は、さすがにへとへとになってきた。隣でなんの屈託もなく楽しげに鼻歌を奏でるお姉さまの様子がちょっと勘にさわる。
 ただ、これまでと違うのは円光さんがピッタリくっついて来てくれること。それだけでも、何となく心強い感じがして、少しだけ気持ちに余裕が出来る。
「さっきも言ったじゃない。お祭りよ」
 すると、隣で腕を組んで何やら考え事をしていた円光さんが、急にぽんと手を打った。
「そうか! 今日は7月25日、すなわち天神祭の日ではないか!」
「今まで考えてたの? 信じらんない。シェリーちゃんはともかく、貴方日本人でしょ? 7月25日と言ったら天神祭以外あり得ないじゃない」
 容赦なくお姉さまの呆れ声が飛ぶ。
「面目次第もない。拙僧、修行中は特に日取りなど考えることもない故、今日が何の日かすっかり失念していた」
 律儀に頭を下げる円光さんに、お姉さまはまんざらでもなさそうに笑みを浮かべると、私に言った。
「つまり、そう言うことよシェリーちゃん。今日のこの日に、日本のそれも大阪に来たからには、参加しない手はないわよ」
「しかしシェリー殿はキリスト教徒であろう? 天神祭は文字通り日本の天神を祀る宗教行事だ。シェリー殿は抵抗はないのか?」
 円光さんの言葉はもっともだ。私自身は確かにクリスチャンだから、他の宗教の行事に参加しようとは思わない。
 とはいえ、お祭りごとはきらいじゃない。それに、お姉さまによるとこれは日本でも代表的なカーニバルだそうだ。そう言われてはこれを見ずに帰ることもできないだろう。
「郷に入りては郷に従え、って聞いたことがあります」
 私は、こういうときに便利な日本語を口にして、ほんの一時だけ、敬虔なクリスチャンである自分を忘れることにした。
「なるほど、確かに」
 円光さんがしきりに感心したように頷く。お姉さまはにこにこして私に言った。
「じゃ、決まりね」 
「あ、でもお姉さまの捜し物は……」
「お祭りに行ったらきっと見つかるわよ!」
 本当? 
 私はいい加減適当に遊ばれているのではないのだろうか?
 実際ここまでの行動を思い返してみても、この人が何かを探しているような気配は微塵もなかった。
 疑わしげに見つめる私に、お姉さまはなんの衒いもなく華やかにほころんでみせる。私は疲れもあったのか、取りあえず疑問は疑問のまま棚上げにすることにした。どのみち聞いて答えてくれる訳でも無し、今は考え事をするには頭がうまく働いてくれない。
 私は幸いお姉さまと隣り合わせに座ることが出来た電車の座席で、自分でもまるで気づかないうちに眠り込んでいた。
 ……………………
「ほら起きて! 着くわよ!」
「れ、麗夢さん?……」
 突然肩ががくがくと揺すられて、私は唐突に目を覚ました。
 何かさっきまで麗夢さんが哀しげに呼びかけてくる夢を見ていたようだ。
 勝手に遊び回ってごめんなさい、と私は確かに謝っていた。
 そこをいきなり起こされたものだから、私は一瞬、自分が今誰とどこにいるのか、判らなくなっていた。
「もう、寝ぼけてたら一瞬で迷子になっちゃうわよ!」
 私はお姉さまの叱咤でようやく我に返った。
 なんだか異様に騒々しい。
 私たちの前にボディーガードのように立った円光さんの体が、すぐ目の前に迫っている。
 ちょっとどぎまぎして目をそらした私は、何故そうなっているのかに気が付いて愕然とした。
 ひとヒト人……!
 乗るときも結構混雑していて、これが噂に聞くラッシュと言うものか、と思っていたのだけれど、今、目の前に展開する光景は、自分が本当に何も知らないのだと言うことを思い知らさせてくれた。
 人ってこんなに固まりになれるものなの?
 日本語のすし詰め、と言う単語を思い出した。
 円光さんが私達の前で頑張ってくれていなければ、たちまち大勢の足で私達の足が踏みつぶされていたかも知れない。
 やがて、電車がぐうんと坐っていても体が持っていかれそうになるほど急激に減速した。
 立っている人達の体が、電車の進行方向に向かって一斉に倒れるのが見える。
 でも崩れるところまでいかない。
 皆、強い風に耐え忍ぶ木々の様に、足はしっかりと床について頑張っている。
 いや、あの押し合いへし合い状態では、倒れるための余裕すらないのかも。
 さしもの円光さんも、腰を軽く落として踏ん張っている。
 そうするうちにも電車はようやく止まり、開いたドアから一斉に人々が飛び出していった。まるで水が一杯入ったダムが放水するみたいに、皆怒濤の勢いで瞬く間に流れていく。
「さあ、行くわよ! はぐれないようにしっかり付いてきなさい!」
 私の手をぎゅっと握りしめ、お姉さまが立ち上がった。
 私もその引きにあって自然と腰を上げる。
 円光さんも少しほっとした様子で、私達が人の流れに呑み込まれないよう先導してくれた。
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