Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

PEN LIFE1425. ひろめ市場

2017年03月28日 | field work
 ここは空いた席がすぐ埋まるぐらいにぎわっている。それに混沌とした空間がとてもよい。建築デザイナーが広場だの路地だのといってつくるような嘘くささがここにはなく、実際に人が大勢集まる広場があり、店が連なる横町がある。
 実はここの商売の仕組みに、にぎわい性の鍵がありそうだ。つまり総菜の店などから好きなものを調達して広場に集まる。もちろんピザを届けてもらうこともできる。それだけではなく、総菜屋で調達したものを持参して違う飲屋のカウンターで一杯やっていたりできる。だから隣の人の「カニ味噌ください」といっても、「あれは違う店で調達したからうちにはないですよ」といわれる。どこの店のものでもええじゃないかというおおらかさがこの市場にはある。
 それに高知は魚がまずければ店が成り立たないというぐらいだから、どこの店も新鮮な魚ばかりだ。そして店同士が競争するのである。それも他店とは違うメニューで競うのであるから、競争原理が働き店ごとに個性化され当然料理の種類も多岐にわたる。そのことが多様な利用者のニーズに応えている。だからメニュー看板がやたらと登場する。結果として混沌とした空間的魅力につながってくる。つまり商い上の動機付けがあってこの空間が成り立っている。夜の繁華街の人たちをすべてかっさらうような集客力ある「ひろめ市場」なのである。席が空けばおばちゃんたちが残された食器をさっさと片付けて、また次の団体やカップルがやってくる。そして大きな灰皿を置いていってくれる。
 こうしたおおらかさが今の大都会の飲食店にはない。客の注文に応えているうちに、いつのまにか神経質な店ばかりになってしまう。だから店のサービス精神がかえって疲れるのである。他店のものは持ち込み禁止、すべて予約制、もうお済みですかと会話を遮って食器を下げにくる、それは客席数をかせぐためにテーブルが狭いだけの話なのだが、のみ放題は時間制、禁煙、といった具合に店のルールや都合ばかり押し付けてくれる。客なのだからすきにしはってくださいとは絶対に言われないことが多い。そこも京都の老舗とは違うところだ。そんなやたらルールがましい店はそろそろ廃業してほしいと思うぐらいに、今の時代はユーザーの意識が違うのだよ。
 そんなことを勉強させてくれるひろめ市場である。

高知市
OLYMPUS OM-DE-M1, M.ZUIKODG12-100/F4
ISO6400,焦点距離17mm,露出補正-0.3,f11,1/40
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