麗江から4時間以上走り続け、標高3200m の高原に入ると、深い山並みから丘陵地へ風景が変わり、車窓の四方がとても明るくなる。丘の背後からラマ教固有の尖塔が見えてきた。私達が目指した松賛林寺である。この地域を別名シャングリラ、すなわち桃源郷と呼ばれている。雲南省は、山岳地帯だったから、どこかしら圧迫感を体の外側で感じていた。そうした圧迫感が、スッと消えた感覚を体感する。天国にあがったらこんな感覚なのかもしれない、と思わせてくれるところが、やはり桃源郷と呼ばれる所以なのだろう。
松賛林寺は、雲南省最大のチベット仏教寺院である。1679年にダライラマ五世の発願で創建され、700名の僧侶が暮らしている[注1]。傾斜地に広がる数多くの建築は、日本における塔頭のようでもある。こうした建築の屋並みが傾斜地に幾重にも重なり合うように広がり、奥行き感や連続間を形成している景観を重畳景観という[注2]。
丘の頂上には、極彩色調の寺院を頂く。中国は儒教寺院が大半を占めており、礼節節度といった重々しさや禁欲さが建築様式などに感じられたのだが、松賛林寺には仏教固有の華やかさが漂っている。衆生済度の世界からは、憧憬性を持ちたくなるようなシャングリラという桃源郷に、燦然と輝く仏教寺院が建っている様相は、仏教哲学の反映のようでいて大変面白い。環境や景観形成に果たす宗教の影響力の大きさを表している。
注1.地球の歩き方、雲南・四川・貴州と少数民族,ダイヤモンド社,1999〜2000版.
注2.土肥博至編著:環境デザイン辞典,井上書院,2007.
1999年9月撮影
Canon EOS3.F3.5-5.6/EF28-135mm.コダクロームⅡ.
CanoScan9950F
松賛林寺は、雲南省最大のチベット仏教寺院である。1679年にダライラマ五世の発願で創建され、700名の僧侶が暮らしている[注1]。傾斜地に広がる数多くの建築は、日本における塔頭のようでもある。こうした建築の屋並みが傾斜地に幾重にも重なり合うように広がり、奥行き感や連続間を形成している景観を重畳景観という[注2]。
丘の頂上には、極彩色調の寺院を頂く。中国は儒教寺院が大半を占めており、礼節節度といった重々しさや禁欲さが建築様式などに感じられたのだが、松賛林寺には仏教固有の華やかさが漂っている。衆生済度の世界からは、憧憬性を持ちたくなるようなシャングリラという桃源郷に、燦然と輝く仏教寺院が建っている様相は、仏教哲学の反映のようでいて大変面白い。環境や景観形成に果たす宗教の影響力の大きさを表している。
注1.地球の歩き方、雲南・四川・貴州と少数民族,ダイヤモンド社,1999〜2000版.
注2.土肥博至編著:環境デザイン辞典,井上書院,2007.
1999年9月撮影
Canon EOS3.F3.5-5.6/EF28-135mm.コダクロームⅡ.
CanoScan9950F