この時期、雪はしばしば降るが屋根を白くしただけで、道路には積もらない。明日から師走。
翆は夜勤でまだ帰ってこない。アチキは起きたばかり。ならば、たまには朝の散策。陽が昇るのが遅くなった。もうじき冬至だろう。
いつもと違う風景でというので、近所の氷川神社の丘に建ち並ぶ住宅群でもスケッチしようか。
ヨーロッパなら遠くに教会の大きな建物がみえるアングルだが、ここでは氷川神社の枯れた樹木ですか・・・。寂しい、そして退屈な風景だ。
帰りしなに、ツカモッチャン家の前を通ったら小春が登校するところに鉢合わせした。
小春「叔父さんだ、珍しいじゃん朝からスケッチなんてさぁ」
「たまには、違う風景と思ってさぁ・・」
小春「違う風景と、夕方の海とどっちがいいの?」
「選択肢の問題ではなく、気分の問題だな。なんかときめく話題でもないの?」
小春「そうねえ、小春、ユウ君と結婚することにした!・・・とか」
「ハア!、小学校6年生で・・・・」
小春「冗談よ!。あのねえクラスで、セックスを経験した女の子は5人いるんだって、あたしもその一人。だからクラスの女の子は、もう彼氏を探すので、ときめいているの」
「まあ、お盛んというか、幸せというか・・・」
小春「だって、女の子のほとんどは生理がきたから、次は女になる!、というので、彼氏捜しで燃えているわけ」
「早熟の子達、しらぬは先生ばかりか・・・」
小春「だって先生は、30すぎて恋愛経験なしの処女よ。だから先生の嫉妬に引っかからないように、みんな超極秘なの」
「ふぅーん、その先生、一度見てみたいねぇー」
小春「こんど、ゆこうよ!」
セックスの経験ありと経験なしの差になるのか。そんな眼で見られると先生も辛い商売だな。でも翆から聞いた話では、居酒屋の文さんも30迄経験がなかったといってた。それは育った環境の違いなんだろうか。人間は、環境の動物というぐらいだから。
そんなことを考えながら、いつもの公園まで来ちゃったじゃないか。
小春「じゃあ学校へゆくね、いってきまぁーす!」
そういって小春を見送った。
寒くなってきた朝だ。それでもいつものように一日が始まる。