小樽高校は、作家伊藤整を輩出したぐらいだから、市内ではNO1の歴史と偏差値をもつ公立高校だ。自由な校風だから、制服がなく、細かい規則もなく、そしてプールもない。小太郎が通学している高校だ。同級生で美術部の部活が一緒の母一人子一人の陽茉凛が小太郎の恋人だ。
・・・
小太郎「ふぅー、進路相談会が終わった」
陽茉凛(ひまり)「どうだったの?」
小太郎「相談することもなく防衛大だよ。先生が北大じゃいけないのかって?」
陽茉凛「だって北大の合格圏内だもん」
小太郎「俺、夏の大学公開でみたんだ。北大たって飛行機の模型をいじっているのではねぇー、防衛大は実物だからね。その差は大きいよ。だから陽茉凛は、首都圏の大学を受けるべし!」
陽茉凛「うーーん、ならば多摩美か筑波だな?。小太郎はアッサリ美術の世界を捨てたよね」
小太郎「捨てたわけじゃないけど、数学を理解するのに美術、つまりイラストで覚えたんだ」
陽茉凛「数学を図解で?」
小太郎「我が家の教育方針で、わからないことは全てイラストにすればいいじゃん、というのがあったんだ。パパがつくった手製のテキストは、微積分を全部イラストにしちゃったのよ。図解と言っても数学の人の図解ではなくて、芸術系の図解だから、最初から全部空間になっているの。そのなかでこれは薄っぺらい板に描いた線で・・・とやっていたら簡単にわかっちゃった。それを数式にすると、こんな風に表現すればいいじゃんとなってさ。美術の応用だよ・・・」
陽茉凛「だもん、小太郎は、幾何学なんかダントツだよね」
小太郎「幾何学は空間で考えれば簡単。陽茉凛は何を専攻するの?」
陽茉凛「やっぱ、グラフィックデザインかなぁー」
小太郎「じゃあ将来はデザイナー志望だ。陽茉凛は美術を勉強して素直に美大志望だけど、ボクは横に走ったもんね。担任だって、最初は、ボ・ウ・エ・イ・ダ・イ?。何それ?、って顔してたもん」
陽茉凛「小太郎らしいじゃん、回りの期待に応えないとういあたりが・・(笑)」
小太郎「それをいわれると思い出す・・・、あれ!」
陽茉凛「運動会のクラス対抗リレー。クラス一押しで推薦されて、走り出して一気に5人抜きをしようとしたら大きくこけちゃって、しかもバトンが観客席に飛んでちゃって、それを探しているうちに周回遅れで次の走者に不思議な目をされながら追い越されて、クラスのみんなは目が点になって、それでビリで・・・あれ笑えたよね」
小太郎「ボクっていつも人から期待されて、それに応えない運命なのです(笑)」
陽茉凛「それにしても首都圏の大学かぁー、ママと相談してみよ!。それよか今日は、家に来ない。ママが出張で一人だから寂しいよぉー、夕飯、つくるからさぁー」
小太郎「OK!、夕飯のあとでいつものエッチ!!」
陽茉凛「もう、しょうがないんだからぁー(笑)」
小太郎「青姦に比べたら快適じゃん」
青姦といえば、小樽の郊外は小さな山が多いから、灌木に囲われたプライベートな空間が数多くある。そのあたりが都会の窮屈さとは違っている。恋人達の山々なんだろう。
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小樽の夕陽が早々と沈みかけている。もう冬が近いかなぁー。