Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

小泉和裕&都響

2010年05月27日 | 音楽
 都響の5月定期Aシリーズは、レジデント・コンダクターの小泉和裕さんの指揮で、次のプログラム。
(1)ベルリオーズ:序曲「海賊」
(2)グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:ジェニファー・ギルバート)
(3)ニールセン:交響曲第4番「不滅」

 地味だけれども、興味をそそるプログラム。オーケストラとしても押さえておきたい曲のはずだ。こういうプログラムを振ってくれる指揮者がいることは、ありがたいことにちがいない。小泉さんは、ポストの名称はいろいろ変わったが、都響とは長い付き合いになる――固定的なポストに就いてからでも15年――。とくに最近は、自分のことよりもオーケストラのことを考える誠実な姿勢が、うかがえる気がする。

 3曲とも、見通しよく設計された演奏。オーケストラを過度に煽らず、充実した音が鳴っていた。真の自信がないと、こういう演奏は引き出せない。指揮者とオーケストラがぴったり噛み合って、稀に見るほどだ。ベルリオーズの奔放さ、ニールセンの劇的な表現にも欠けていないが、それらが全体の構築感を損ねることはなかった。

 ヴァイオリンのジェニファー・ギルバートはニューヨーク・フィル音楽監督のアラン・ギルバートの妹で、現在はフランスのリヨン管弦楽団のコンサート・ミストレスをしているとのこと。不安定さが感じられるところがあって、ソリストとしてはこれからか。

 私はいつの頃からかニールセンが好きになって、コペンハーゲンまでオペラ「仮面舞踏会」をみにいったことがある。あれは最高に楽しいオペラ経験の一つだった。

 先日、パリ管の副コンサート・マスターの千々岩英一さんのブログを読んでいたら、こういう文章に出会った。
 「なぜここまでニールセンに惹かれるのか自分でもよくわからないのだけれど、彼の作品を弾くとき、オオカミのように遠吠えしている自分がいる。まるで胎教でニールセンばかり聴かされて生まれてきたかのようだ。」
(「千々岩英一ウェブサイト」http://chijiiwa.exblog.jp/ 4月15日「ニールセン」)

 「不滅」は、たまたま今、新国立劇場で上演中のオペラ「影のない女」と同時期に作曲された曲。第一次世界大戦の暗雲の下で、シュトラウスは心の底にペシミズムを抱え込み、ニールセンは人間の尊厳を保とうとした――もっとも、大戦後に書かれた第5番では、ペシミズムの淵に立つのだけれど――。
(2010.5.26.東京文化会館)
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