Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブーレーズの全ピアノ作品演奏会

2011年11月24日 | 音楽
 ピアニストの大井浩明さんがPortraits of Composers(略称POC)という物凄いリサイタル・シリーズをやっている。9月がクセナキスの全鍵盤作品演奏会、10月がリゲティの全鍵盤作品演奏会、そして今月がブーレーズの全ピアノ作品演奏会。残念ながらクセナキスとリゲティには行けなかったが、ブーレーズは行くことができた。

 1曲目は「12の徒書(ノタシオン)」(1945)。今ではオーケストラ版のほうが有名かもしれない。日本でも最晩年の若杉弘が都響を振って聴かせてくれた。これはその原曲のピアノ版。ピアノ版では各曲が短くて、アフォリズムの連続のように聴こえた。
 2曲目は「フルートとピアノのためのソナチネ」(1946)。フルートは都響の首席奏者の寺本義明さん。大井さんとは高校・大学の学生オケの先輩になるそうだ。演奏は気迫みなぎるもの。演奏面ではこれが一番面白かった。
 3曲目は「第1ソナタ」(1946)。この曲はそれほど複雑ではないこともあり、クリアーな演奏だった。

 4曲目は「第2ソナタ」(1948)。若き日のポリーニがレパートリーに入れていた曲。わたしもそれでこの曲を知った。ブーレーズの代表作の一つだ。この曲では演奏が進むにつれて、だんだんもたれてきた。力演ではあるが、単調さを感じた。音色的な魅力を感じなかったこともその一因だ。
 休憩をはさんで5曲目は「第3ソナタ」(1956‐1957)。演奏者に細部をゆだねた曲、いわゆる管理された偶然性の曲だ。残念ながらわたしは最後のところで緊張感が途切れてしまった。

 この曲まではブーレーズの難解さが懐かしくもあり、また、時代と取っ組みあっているという意味で、好ましくもあった。ひるがえって、今の現代音楽のわかりやすさを顧みた。

 その点、6曲目の「内挿節(アンシーズ)」(1994/2001)と7曲目の「日めくりの一頁」(2005)は、なんといったらよいか。これはもう第2ソナタ、第3ソナタのころのブーレーズとは別人物だ。

 アンコールにシュトックハウゼンのピアノ曲第14番が演奏された。この曲はブーレーズ60歳を祝ってブーレーズに献呈された曲で、当時シュトックハウゼンが作曲中のオペラ「月曜日」に関連しているとのこと。演奏者の吐く息や声、あるいはピアノの内部奏法も加わり、ブーレーズよりも感覚的で、さらにいえばエンターテイメント性が感じられた。
(2011.11.23.Hakuju Hall)
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