Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

グルスキー展

2013年08月26日 | 美術
 ドイツの現代写真家アンドレアス・グルスキーAndreas Gursky(1955‐)の作品展。現代写真の素養はまったくないので、なにをどう観たらよいのか、見当もつかないのではないかと危惧しながら、ともかく経験だけはしておこうと思って出かけた。

 ところが、驚くほど面白かった。金曜日の夜間開館日に行ったのだが、あっという間に閉館時間の8時になった。

 なかでも面白かったのは、チラシ(↑)に使われている「カミオカンデ」だ。岐阜県の神岡鉱山の地下1000メートルにあるニュートリノ放出装置スーパーカミオカンデを題材とした作品。荘厳な美しさだ。縦228.2cm×横367.2cm×奥行6.2cmの大作。グルスキーの作品は、このくらいの大きさのものが多い。

 下のほうに水が張ってあり、右端には2人の男がゴム製のボートに乗ってこの光景を見上げている。この驚くべき光景に見入っているわたしたちの分身だが、実をいうと、わたしは黄泉の国に流れる忘却の川レーテーにたどり着いた男たちかと思った。そんな物語性を感じた。

 作品リストに記載されたコメントによれば、実物は直径39.3m、高さ41.4mの巨大な円筒形のタンクだそうだ。それを平面的に構成した作品。水はグルスキーが付加した。2人の男ももちろんそうだ。これはグルスキーが抱いたイメージを表現したもので、現実の記録ではない。

 もう一つ、駅の構内などで見かけるポスターに使われている「99セント」も面白かった。びっしり、かつ整然と並べられた各種のお菓子。大きなディスカウントショップの店内だ。これも「カミオカンデ」に優るとも劣らないインパクトがあった。

 この作品にもポスターでは気が付かなかった点があった。商品の棚をのぞいている人々のなかに、一人仮面をつけている人がいた。ドキッとした。これは虚構だろう。整然とした光景のなかに、あえて破調というか、アクセントをつける手法は、他の作品にも見受けられた。なお、もう一つ、ビスケット(?)の山の上に、ドーナッツが一袋放置されていることに気が付いた。これも虚構だろうか、それとも現実だろうか。

 この作品も「現実を切り撮った各ショットを元にデジタル加工を施して作り上げられた」ものだそうだ(作品リストのコメント)。これもグルスキーが捉えた「イメージ」だ。
(2013.8.23.国立新美術館)

↓「カミオカンデ」と「99セント」を含む主な作品
http://gursky.jp/highlight.html
コメント
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