インキネン/日本フィルのワーグナー・プロ。1曲目は「ジークフリート牧歌」。オーケストラが出てきて驚いた。大編成の16型。室内オーケストラ編成だと思っていた。これほどの大編成で聴くのは久しぶりというか、ちょっと記憶がない。
なので、懸念もあったが、出てきた音はまったく重くなかった。流れのよい、きめの細かい音、いつものインキネンの音だった。聴いていると、細かいテンポの変化があり、けっして平板ではない。それどころか、熱い感情の起伏があり、だんだん惹き込まれた。
2曲目は楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死。オーケストラだけの演奏かと思っていたが、ソプラノのエディス・ハーラーも登場した。嬉しい驚きだった。前奏曲の冒頭のチェロのテーマが、これ以上ないというくらいの弱音で始まったとき、この演奏にかけた準備のほどが感じられた。
前奏曲もそうだったが、愛の死も、暗い官能の高まりというよりは、淡い色彩の移ろいを感じさせる演奏だった。透明な光がオーケストラから漏れてくるような演奏だった。
3曲目は楽劇「ワルキューレ」より第1幕。冒頭の嵐の場面で、踏み込みのよい、勢い込んだ演奏が始まったとき、これはいつもとちがうと思った。ジークムントのサイモン・オニールが登場して、第一声を発したときは衝撃を受けた。これはすごいと思った。続けてジークリンデのエディス・ハーラーが登場したときもそうだった。
この2人は世界でもトップクラスだ。実はフンディングのマーティン・スネルをふくめて、バイロイトで聴いたことがあるのだが、日本のオーケストラに登場すると、あらためてそのすごさが際立った。
もう一つ驚いたことは、日本フィルの変貌ぶりだった。普段はオペラを演奏していない日本フィルが、目覚ましいばかりに気合の入った、オペラ的な演奏を繰り広げた。3人の歌手が日本フィルの演奏家魂に火をつけたのだと思う。
予想を超える演奏会だった。翌日土曜日は山に行くつもりだったが、急きょ変更して、もう一度聴きに出かけた。2日とも聴くと、オーケストラも歌手も、少しずつちがいがあって、それも面白かった。
日本フィルは、どういうコネクションがあって、この3人(とくにオニールとハーラー)を連れてきたのだろう。メモリアル・イヤーのこの年、世界中で引っ張りだこだろうに、よく押さえたものだ。
(2013.9.6&7.サントリーホール)
なので、懸念もあったが、出てきた音はまったく重くなかった。流れのよい、きめの細かい音、いつものインキネンの音だった。聴いていると、細かいテンポの変化があり、けっして平板ではない。それどころか、熱い感情の起伏があり、だんだん惹き込まれた。
2曲目は楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死。オーケストラだけの演奏かと思っていたが、ソプラノのエディス・ハーラーも登場した。嬉しい驚きだった。前奏曲の冒頭のチェロのテーマが、これ以上ないというくらいの弱音で始まったとき、この演奏にかけた準備のほどが感じられた。
前奏曲もそうだったが、愛の死も、暗い官能の高まりというよりは、淡い色彩の移ろいを感じさせる演奏だった。透明な光がオーケストラから漏れてくるような演奏だった。
3曲目は楽劇「ワルキューレ」より第1幕。冒頭の嵐の場面で、踏み込みのよい、勢い込んだ演奏が始まったとき、これはいつもとちがうと思った。ジークムントのサイモン・オニールが登場して、第一声を発したときは衝撃を受けた。これはすごいと思った。続けてジークリンデのエディス・ハーラーが登場したときもそうだった。
この2人は世界でもトップクラスだ。実はフンディングのマーティン・スネルをふくめて、バイロイトで聴いたことがあるのだが、日本のオーケストラに登場すると、あらためてそのすごさが際立った。
もう一つ驚いたことは、日本フィルの変貌ぶりだった。普段はオペラを演奏していない日本フィルが、目覚ましいばかりに気合の入った、オペラ的な演奏を繰り広げた。3人の歌手が日本フィルの演奏家魂に火をつけたのだと思う。
予想を超える演奏会だった。翌日土曜日は山に行くつもりだったが、急きょ変更して、もう一度聴きに出かけた。2日とも聴くと、オーケストラも歌手も、少しずつちがいがあって、それも面白かった。
日本フィルは、どういうコネクションがあって、この3人(とくにオニールとハーラー)を連れてきたのだろう。メモリアル・イヤーのこの年、世界中で引っ張りだこだろうに、よく押さえたものだ。
(2013.9.6&7.サントリーホール)