Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ピロスマニ

2013年09月13日 | 映画
 シネマヴェーラ渋谷で開催中のロシア映画傑作選。そのチラシに「ピロスマニ」を見つけたときには、アッと思った。グルジアの画家ピロスマニの生涯を描いた映画があることは知っていたが、古い映画なので、観る機会はないものと思っていた。

 ピロスマニPirosmani(1862‐1918)、グルジアの首都トビリシで貧しい生涯を送った画家。素朴で温かみのある絵を描いた。芸術のためというよりも、日々の食事代と酒代のため。それらの絵は居酒屋の壁を飾った。また看板も描いた。一時期、トビリシの街にはピロスマニの絵が溢れたそうだ。

 日本には2008年の「青春のロシア・アヴァンギャルド展」でまとまった点数が来た。わたしはそれで注目した。ロシアの前衛画家マレーヴィチが目玉だったが、後々まで気になる画家はピロスマニだった。

 じつは以前からピロスマニのことは知っていた、絵で知るよりも先に歌で。加藤登紀子が歌った「100万本のバラ」はピロスマニがモデルだ。ある貧しい画家が旅回りの踊り子に恋をする。画家はありったけのお金でバラを買い集め、踊り子の泊まっているホテルの前に並べる。窓の外を見て驚く踊り子。木の陰からそっと見ている画家。踊り子は夜汽車で去っていく。画家は思う、バラのことはきっと覚えていてくれるはずだと。

 もっともこの話は、真偽のほどは定かではないらしい。多分に脚色が入っている伝説的なものらしい。そうかもしれないが、人々がピロスマニに投影したいロマンが反映されていることはたしかだ。

 映画「ピロスマニ」にはこの話は出てこなかった。その一事をとっても、この映画が商業主義的なものではなく、ピロスマニにたいする敬意に裏打ちされた誠実なものであることがうかがわれた。

 映画は淡々とピロスマニの生涯をたどる。多くの場面にピロスマニの絵が何気なく置かれ、またピロスマニの絵でお馴染みの情景が下敷きになっていることも多かった。1969年のカラー映画なので、さすがに少々古臭いが、その古臭い色がピロスマニの絵に相応しいといえなくもなかった。

 二本立ての上映だったので、もう一本「田園詩」も観た。グルジアの名匠イオセリアーニ監督の若いころの作品。さすがに技巧的で、みずみずしい感性に溢れている。これは傑作だと思った。1975年の作品だが白黒、その白黒の映像が、ため息が出るほど美しかった。
(2013.9.11.シネマヴェーラ渋谷)

↓ピロスマニの絵
http://www.pirosmani.org/marias/

↓「放浪の画家ニコ・ピロスマニ」
http://www.fuzambo-intl.com/index.php?main_page=product_info&cPath=11&products_id=146
コメント (2)
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