Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち」展

2017年12月15日 | 美術
 わたしは旅先で美術館に立ち寄るのが好きだ。出張の場合は難しいが、休暇で出かけたり、友人たちとの集まりのために出かけたりした場合は、観光名所に行くよりも、美術館を訪れる。

 個性豊かな美術館が各地に点在する。行く前にはできるだけ予備知識を持たないようにするので、行ったときの発見が楽しみだ。思いがけないコレクションがあったり、地元の未知の画家との出会いがあったりする。

 とくに印象に残った美術館の一つは、宮城県美術館だ。十年以上も前になるが、全国の職場の同僚たちとの集まりに参加するため、仙台に行った。宴会は夕方から始まるので、少し早めに行って同美術館を訪れた。まったく予期していなかったが、カンディンスキー(1879‐1940)の「商人たちの到着」(1905)という絵があった(チラシの絵↑)。当時のカンディンスキーはメルヘンチックな絵を描いていたが、その中でもこれは大作だ。わたしは度肝を抜かれた。

 美術館を出て、宴会場に向かうためにバスに乗った。同僚の一人も乗ってきた。かれも美術館に寄ったそうだ。二人で笑い合った。

 前置きが長くなったが、「商人たちの到着」をはじめとする宮城県美術館の所蔵品が、東京のパナソニック汐留ミュージアムに来ている。懐かしいので見に行った。

 「商人たちの到着」はやはり力作だ。商人たちの到着の情景。右下に壷などの陶器が山積みになっている。その上に帆船が見える。城門から人々が押し寄せてくる。商人たちの到着は人々の大きな楽しみだ。城門の中にはロシア的なネギ坊主型の尖塔が見える。左奥にはロシアの平原が広がる。

 宮城県美術館からはその他、カンディンスキーの抽象画の傑作や、クレーの美しい水彩画など、多数の作品が来ている。また同美術館以外にも、高知県立美術館、広島県立美術館、姫路市立美術館など、各地の美術館から作品が来ている。

 それらの(主にドイツ表現主義の)作品と、汐留ミュージアムが所蔵するルオー(1871‐1958)の作品群とを並置する試みが本展。結果的には、まったく齟齬を生じない。ギクシャクせず、違和感もない。お互いに打ち消し合わず、並存している。それは意外な光景だった。

 なぜそうなるのか。本展では「表現への情熱」を共有しているから、という視点を提示している。それをヒントに本展を楽しんだ。
(2017.12.12.パナソニック汐留ミュージアム)
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