Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

アンサンブル・ノマド

2017年12月23日 | 音楽
 アンサンブル・ノマドが結成20周年を迎えて、今年は全4回の演奏会をすべてメンバーまたはレギュラーゲストがソリストを務める曲で構成した。今回はその第4回。

 1曲目はジャック・イベール(1890‐1962)の「アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内協奏曲」(1935)。サクソフォン独奏は江川良子。オーケストラの定期では聴いたことがあるが、そのときは弦の各パートは複数の奏者で演奏されたように思う。今回は各1名。これがオリジナルかもしれないが、勝手が違った。

 2曲目はアレハンドロ・ビニャオ(1951‐)の「マリンバ協奏曲」(1993)。マリンバ独奏は宮本典子。ビニャオは、わたしは初めて聞く名前だが、1951年アルゼンチン生まれなので、わたしと同年齢。「1994年からイギリス市民としてロンドンに居を構える」(佐藤紀雄氏のプログラム・ノート)。

 「持続的に打ち続けるパルス」(同)が出没する。それはジョン・アダムズ(1947‐)に似ていなくもないが、それはさておき、楽しめる曲だ。とくに「5拍子のダンサブルなリズムをベースに進んでいく第三部」(同)はノリがよかった。

 ソリストの宮本典子を紹介する文章は、「世界中の作曲家が勝手に選んでくる、全貌が分かっていないほど種類の多い打楽器を文句一つ言わずにこなし、アンサンブルを後方から支えてきた」(同)と。仲間意識の温かさが感じられる。

 3曲目は藤倉大(1977‐)の「ダイヤモンド・ダスト―ピアノ協奏曲第2番」(2012)。ピアノ独奏はメイ・イー・フー。作品としては当夜の白眉。「ピアノの音から派生する豊かな倍音がアンサンブル全体に広がる効果を狙っており、ピアノの金属弦から発する音の倍音が他の楽器に響き合いながら散ってゆく」(同)。今まで聴いたことのない音が鳴っていた。

 メイ・イー・フーはこの曲の初演者。集中力の強い演奏だった。お腹に赤ちゃんがいるらしい。カーテンコールで元気よく駆け出てくる彼女を、ノマドの女性メンバーが慌てて制していたのが微笑ましい。

 4曲目はエベルト・バスケス(1963‐)の「デジャルダン/デ・プレ」(2013)。ヴィオラ独奏は甲斐史子。2016年のサントリー芸術財団サマーフェスティヴァルでも同メンバーで演奏された。今回はそのときより自由度が増したように思う。
(2017.12.22.東京オペラシティ・リサイタルホール)
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