今年の秋には、見たい展覧会が3つあった。一つは「シャガール 三次元の世界」展(東京ステーションギャラリー)、もう一つは「表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち」展(パナソニック汐留ミュージアム)そして「オットー・ネーベル展」(Bunkamura ザ・ミュージアム)。会期末に追われながら、やっと3つとも見ることができた。
結果、それらの展覧会が、相互に重なり合うことに気が付いた。「シャガール‥」展は、シャガールの立体作品を中心に、油彩などを集めたもの。「表現への情熱‥」展は、カンディンスキー、ルオーそしてクレーの油彩などを集めたもの。「オットー・ネーベル展」は、オットー・ネーベルという未知の画家を中心に、ネーベルと交友のあったクレーとカンディンスキー、そして若い頃に影響を受けたシャガールの油彩などを集めたもの。ネーベルを媒介にして、3つの展覧会がつながった。
ネーベル(1892‐1973)はドイツの画家。ナチスに退廃芸術の烙印を押され、1933年にスイスのベルンに移住した。同時期にやはりベルンに移住したクレーとは、家族ぐるみの交友をした。
本展のHPでも紹介されている「避難民」(1935)は、その時期の作品。父と母と、その間に隠れるように子どもがいる。3人はどこかに避難するところ。画面の上方に矢印があり、避難の方向を示している。伝統的な「聖家族のエジプトへの逃避」の図像の応用だろう。
3人を描くリズミカルな線は、クレーの線描を感じさせる。矢印の使用もクレーを彷彿とさせる。だが、図版では分かりにくいが、本作は細かい点描でできている。キャプションでは「点描によるヴェールの手法」と説明されていた。わたしは織物の感触のようなものを感じた。
ネーベルにはクレーからの影響が窺われるが、今いった点描のように、画面の感触、マチエールが、クレーとは異なるという点もある。「避難民」は紙にグアッシュとインクで描かれているが、その他、樹脂絵具を使ったり、砂と卵を混ぜた油彩を使ったり、また支持体に木質繊維板を使ったりと、手法の多様性が特徴のようだ。
わたしは今後クレーの晩年の作品を見るときは、そこにネーベルの存在を感じると思う。また、クレーとの関係ほど濃くはないが、カンディンスキーの晩年の作品を見るときも、ネーベルを想い出すと思う。
(2017.12.15.Bunkamura ザ・ミュージアム)
(※)本展のHP
結果、それらの展覧会が、相互に重なり合うことに気が付いた。「シャガール‥」展は、シャガールの立体作品を中心に、油彩などを集めたもの。「表現への情熱‥」展は、カンディンスキー、ルオーそしてクレーの油彩などを集めたもの。「オットー・ネーベル展」は、オットー・ネーベルという未知の画家を中心に、ネーベルと交友のあったクレーとカンディンスキー、そして若い頃に影響を受けたシャガールの油彩などを集めたもの。ネーベルを媒介にして、3つの展覧会がつながった。
ネーベル(1892‐1973)はドイツの画家。ナチスに退廃芸術の烙印を押され、1933年にスイスのベルンに移住した。同時期にやはりベルンに移住したクレーとは、家族ぐるみの交友をした。
本展のHPでも紹介されている「避難民」(1935)は、その時期の作品。父と母と、その間に隠れるように子どもがいる。3人はどこかに避難するところ。画面の上方に矢印があり、避難の方向を示している。伝統的な「聖家族のエジプトへの逃避」の図像の応用だろう。
3人を描くリズミカルな線は、クレーの線描を感じさせる。矢印の使用もクレーを彷彿とさせる。だが、図版では分かりにくいが、本作は細かい点描でできている。キャプションでは「点描によるヴェールの手法」と説明されていた。わたしは織物の感触のようなものを感じた。
ネーベルにはクレーからの影響が窺われるが、今いった点描のように、画面の感触、マチエールが、クレーとは異なるという点もある。「避難民」は紙にグアッシュとインクで描かれているが、その他、樹脂絵具を使ったり、砂と卵を混ぜた油彩を使ったり、また支持体に木質繊維板を使ったりと、手法の多様性が特徴のようだ。
わたしは今後クレーの晩年の作品を見るときは、そこにネーベルの存在を感じると思う。また、クレーとの関係ほど濃くはないが、カンディンスキーの晩年の作品を見るときも、ネーベルを想い出すと思う。
(2017.12.15.Bunkamura ザ・ミュージアム)
(※)本展のHP