Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブルニエ/読響

2018年03月17日 | 音楽
 ベルリン・コーミッシェ・オーパーの音楽監督を務めていたヘンリク・ナナシが初登場する予定だった読響の定期が、ナナシ急病のため、直前になってステファン・ブルニエに交代した。ブルニエってだれ?というのが正直なところ。プロフィールによると、ボン市の音楽監督(ボン・ベートーヴェン管とボン歌劇場の首席指揮者)を務めていた人。1964年スイスのベルン生まれ。Opera baseで検索すると、最近はジュネーヴ歌劇場やフランクフルト歌劇場で振っている。そのブルニエが、ナナシに予定されていた、ちょっと特徴のあるプログラムを引き受けた。

 1曲目はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」序曲。ただし、ブゾーニ編曲。さて、どんな編曲か。演奏が始まると、曲の骨格は変わらないが、時々聴きなれない音が出てくる。それがおもしろくて聴いていると、最後に劇的な改変があった。曲が終わりそうになり、本来なら第1幕が始まるところで、石像の音楽が再現して、オペラのフィナーレの部分につながる。

 これはショックだった。序曲というよりも、「ばらの騎士」や「ニーベルンクの指輪」にあるような、オーケストラのための演奏会用の短縮版に近い感じ。遠い昔、どこかで一度聴いたことがあるような気がした。定かではないが‥。

 演奏は、明るい音色で、活気に富んでいた。初めて見るブルニエは、お腹の大きい巨体だったが、その体躯のイメージとは異なる敏捷さがあった。

 2曲目はブゾーニのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏はルノー・カプソン。曲自体は穏やかで、聴きやすい曲だが、ブゾーニならではの独自性はあまり感じられなかった。反面、カプソンの演奏は水際立っていた。演奏の優秀さに息をのんでいるうちに曲が終わった。

 アンコールにグルックの「精霊の踊り」が演奏された。ヴァイオリン一本で切々と歌われるメロディーが、これ以上ないくらいロマンチックに胸を打った。

 最後はリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」。1曲目の「ドン・ジョヴァンニ」序曲のときの明るさと活気に、ずっしりした重心の低さが加わり、聴き応えのある演奏になった。日下紗矢子のヴァイオリン・ソロも見事だった。

 後半のワルツが「ばらの騎士」のように聴こえた。この原石から「ばらの騎士」が彫られたのだな、と。そう感じられたのは、ブルニエがオペラ指揮者だからか。
(2018.3.16.サントリーホール)
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