Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2018年03月18日 | 音楽
 高関健はタングルウッドでバーンスタインに学んだことがあるそうだ。恒例のプレトークでは、そのときの想い出を交えながら、バーンスタインを20世紀の“巨人”と評していた。音楽に限らず、哲学も、文学も、膨大な知識を有していた。英語で話していると、次から次へと哲学や文学の話が出てきた。自分は半分くらいしか分からなかったが、バーンスタインが“巨人”であることはよくわかった、と。

 今回の定期はそのバーンスタイン・プロ。1曲目は「キャンディード」序曲。コンサートの幕開けにふさわしい華やかな曲なので、よくプログラムの冒頭を飾るが、今回の演奏は、威勢がいいだけではなく、音がよく整えられた、丁寧な演奏でもあった。部分的に木管のアクセントが強調されていた。

 2曲目は「セレナーデ」。ヴァイオリン独奏は渡辺玲子。今年1月のN響定期でもこの曲が演奏されたが、そのときのヴァイオリン独奏の五嶋龍が、滑らかな、品のいい演奏だったのに対して、渡辺玲子は、鋭く食い込むような、アグレッシヴな演奏。とくに終曲の最後はスリリングだった。

 休憩後の3曲目(「ウェスト・サイド物語」よりシンフォニック・ダンス)の前に、高関健がマイクを持って再登場し、「マンボ!」の掛け声について説明があった。バーンスタインはこの曲を3度録音しているが、2度目までは「マンボ!」が入っていないそうだ。(※)

 高関健はタングルウッドでこの曲を聴いた。そのときは客席から「マンボ!」と声が掛かった。それを今回やってみましょう、と。「マンボ!」の箇所に来たら、皆さんの方に振り向きますから、掛け声をお願いします。

 で、練習が始まった。高関健が客席に向かってキューを出す。1回目は「声が小さい。では、もう一度」。客席から笑い声。2回目は「結構です。でも、ちょっと遅れる。そこは8分休符です」。再度笑い声。3回目はきれいに揃った。高関健も満面の笑み。

 こうして演奏が始まった。「マンボ!」も無事通過。演奏終了後は、会場に和やかな空気が漂った。

 最後は「ディヴェルティメント」。鮮やかで、かつエンターテイメント性にも欠けない演奏。終曲のマーチでは、木管、金管の各奏者が立ち上がり、てんでんばらばらな方向を向いて賑やかに演奏。アンコールにそのマーチを、今度は弦楽器奏者も含めて、オーケストラ全員が立ち上がって演奏。客席は沸いた。
(2018.3.17.東京オペラシティ)

(※)東条先生のブログを読んでいて気が付いたが、「3度録音」はわたしの聞き違いだったようだ。正しくは、「3つの版」があり、その「最初の2つの版」には「マンボ!」の掛け声は書かれていない。また、バーンスタインがニューヨーク・フィルを振った初期の録音にも、「マンボ!」の掛け声は入っていない、ということだったらしい。申し訳ありませんでした。
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