Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブロムシュテット/N響&インキネン/日本フィル

2018年04月22日 | 音楽
 昨日はN響のC定期と日本フィルの横浜定期の連荘だった。渋谷から横浜への移動が億劫だが、両方とも定期会員なので仕方がない。

 N響はブロムシュテットの指揮でオール・ベートーヴェン・プロ。ピアノ協奏曲第4番(ピアノ独奏はピレシュ)と交響曲第4番。ブロムシュテットの指揮はもとよりだが、「2018年かぎりで演奏旅行と公開演奏から退くことが報じられた」(プログラムのプロフィール)ピレシュのピアノ独奏が注目の的だった。

 ピレシュはおいくつなんだろうと、プロフィールを読み直したら、1944年生まれとあった。まだ70代の半ば。お見かけしたところ、老け込んでもいないので、引退するには早すぎるように傍目には見えるが、それも人生の選択、むしろいかにもピレシュらしい潔い選択かもしれない。

 まったく飾り気のない容姿の、その通りの演奏。輪郭のはっきりした音楽が流れ出る。ブロムシュテット指揮のN響も、一本の絹糸のような、繊細な、細心の演奏でピレシュを支える。ブロムシュテットからすれば10歳以上も若い(正確には17歳若い)ピレシュだが、そのピレシュを尊重する気持ちが伝わる。

 感銘深かったのは第2楽章。ピレシュの奏でる音楽の、静まり返った、冒しがたい孤独感は、今のピレシュの心象風景そのものではないか。わたしにはピレシュに掛けるべき言葉はなく、そっとピレシュを見守るだけ。そんなピレシュの姿がそこにあった。

 アンコールを弾いてくれた。子どもが無心にピアノを弾くような曲。だれの曲だろうと、休憩中にロビーの掲示を見に行くと、ベートーヴェンの「6つのバガテル」作品126から第5番ト長調とのこと。ベートーヴェンとは思わなかった。

 交響曲第4番は、ブロムシュテットらしいドライヴ感があり、勢いのよい、骨格のしっかりした演奏だった。随所でファゴットの妙技が光った。第2楽章でのクラリネットのソロも見事だった。

 短いプログラムだったので、余裕をもって横浜に行けた。日本フィルはインキネンの指揮で没後100周年のドビュッシー・プロ。「小組曲」(ビュッセル編曲)、「クラリネットのための第1狂詩曲」、「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」、交響詩「海」。インキネンが、軽く、フレッシュな音を求め、日本フィルもそれに応えた演奏。「海」ではドビュッシーのオーケストレーションが明瞭に表れた。
(2018.4.21.NHKホール&横浜みなとみらいホール)
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