フランス近代音楽を中心としたニューイヤーらしいプログラム。1曲目はルーセルの「バッカスとアリアーヌ」第2番。最後の狂宴(バッカナール)での興奮はラヴェルの「ダフニスとクロエ」の最後を彷彿させた。ステファヌ・ドゥネーヴ指揮N響の演奏も、アンサンブルが見事だった。
2曲目はサン・サーンスのチェロ協奏曲第1番。チェロ独奏はゴーティエ・カプソン。わたしは初めてではないが、あらためてその姿を見ると、典型的な美男子だ。1981年生まれというので、今では渋さも加わり、惚れ惚れするような紳士の雰囲気を漂わせている。そんな渋さと甘さを兼ね備えたフランス紳士がサン・サーンスのこの名曲を演奏する姿は、まことに様になっている。
その演奏は、甘くしようと思えばいくらでも甘くできるこの曲を、むしろ渋めに演奏した。弱音中心でとくに中間部の出だしは、オーケストラともども、ほとんど聴こえないくらいの弱音だった。わたしはこの曲の真の姿を見る(聴く)思いがした。通常の演奏はポピュラー名曲的な甘い演奏かもしれない。
アンコールではびっくりした。なんと指揮者のドゥネーヴのピアノ伴奏で、サン・サーンスの「白鳥」が演奏された。思いがけない新年のご祝儀のような趣向だった。ドゥネーヴのピアノは繊細でチェロとよく合っていた。
3曲目はベルリオーズの「ローマの謝肉祭」。これもポピュラー名曲といえばポピュラー名曲だが、演奏はお祭り騒ぎにならずに、整ったアンサンブルで演奏された。総じてN響は、ドゥネーヴの指揮の下で、演奏しやすそうだった。不必要に煽らず、安定したテンポで要所を決めるタイプだからだろうか。
4曲目はレスピーギの「ローマの松」。この曲でもびっくり仰天の仕掛けがあった。例の第3部「ジャニコロの松」の後半部で登場するナイチンゲールの鳴き声が、なんと蓄音機で再生された。アンチークな蓄音機が打楽器パートの脇にあり、そこにSPレコードをかけて、専任の奏者(?)が慎重に針を下ろした。そこから出てくる音は思いがけず明瞭で、客席までよく通った。
第4部「アッピア街道の松」でのバンダは、オルガン席にトランペット2本とトロンボーン2本、その向かいのバルコニー席にトランペット2本が配置された。頭の部分でオルガン席のトランペットの呼びかけに答えるバルコニー席のトランペットは、カーテンの陰で吹くという芸の細かさだった。
(2019.1.12.NHKホール)
2曲目はサン・サーンスのチェロ協奏曲第1番。チェロ独奏はゴーティエ・カプソン。わたしは初めてではないが、あらためてその姿を見ると、典型的な美男子だ。1981年生まれというので、今では渋さも加わり、惚れ惚れするような紳士の雰囲気を漂わせている。そんな渋さと甘さを兼ね備えたフランス紳士がサン・サーンスのこの名曲を演奏する姿は、まことに様になっている。
その演奏は、甘くしようと思えばいくらでも甘くできるこの曲を、むしろ渋めに演奏した。弱音中心でとくに中間部の出だしは、オーケストラともども、ほとんど聴こえないくらいの弱音だった。わたしはこの曲の真の姿を見る(聴く)思いがした。通常の演奏はポピュラー名曲的な甘い演奏かもしれない。
アンコールではびっくりした。なんと指揮者のドゥネーヴのピアノ伴奏で、サン・サーンスの「白鳥」が演奏された。思いがけない新年のご祝儀のような趣向だった。ドゥネーヴのピアノは繊細でチェロとよく合っていた。
3曲目はベルリオーズの「ローマの謝肉祭」。これもポピュラー名曲といえばポピュラー名曲だが、演奏はお祭り騒ぎにならずに、整ったアンサンブルで演奏された。総じてN響は、ドゥネーヴの指揮の下で、演奏しやすそうだった。不必要に煽らず、安定したテンポで要所を決めるタイプだからだろうか。
4曲目はレスピーギの「ローマの松」。この曲でもびっくり仰天の仕掛けがあった。例の第3部「ジャニコロの松」の後半部で登場するナイチンゲールの鳴き声が、なんと蓄音機で再生された。アンチークな蓄音機が打楽器パートの脇にあり、そこにSPレコードをかけて、専任の奏者(?)が慎重に針を下ろした。そこから出てくる音は思いがけず明瞭で、客席までよく通った。
第4部「アッピア街道の松」でのバンダは、オルガン席にトランペット2本とトロンボーン2本、その向かいのバルコニー席にトランペット2本が配置された。頭の部分でオルガン席のトランペットの呼びかけに答えるバルコニー席のトランペットは、カーテンの陰で吹くという芸の細かさだった。
(2019.1.12.NHKホール)