Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2019年09月08日 | 音楽
 高関健指揮の東京シティ・フィルも意欲的なプログラムを組んでいる。1曲目はバッハの「フーガの技法」を野平一郎が室内オーケストラ用に編曲したもの。全部で7曲あるそうだが、今回はその内の3曲が演奏された。第1曲(コントラプンクトゥス1)、第4曲(コントラプンクトゥス6)そして第6曲(3つの主題によるフーガ)。第6曲はバッハの絶筆とされる未完の作品だ。

 演奏は「おとなしい演奏」としか感じなかったが、一つ気になる点は、柴田克彦氏のプログラム・ノートに「なお今回は、野平氏了承のもと、弦の編成を一部拡大して演奏される」とあったこと。弦は6型くらいだったか(よく覚えていないので残念だが)、ともかく各パートが複数いた。では、オリジナルはどういう編成なのだろう。たとえばシェーンベルクの「室内交響曲第1番」のように、弦の各パートが1名だったら、響きも相当変わるだろうが‥。

 余談だが、野平一郎には「ゴールドベルク変奏曲」をフル編成のオーケストラ用に編曲したものがある。わたしは2012年3月に齋藤一郎指揮セントラル愛知響の演奏で聴いたが、大変おもしろかった。今回の「フーガの技法」を縁に(?)東京シティ・フィルも演奏してみたらどうだろう。

 2曲目はシェーンベルクの「管弦楽のための変奏曲」。去年の秋、新シーズンのプログラムが発表され、その中にこの曲を見つけたときには、「これは大変な挑戦だ」と思った。正直にいって、聴く前は多少の危惧があったが、実際には、緊張感のある、正確で、流暢な、堂々たる演奏だった。それは嬉しい驚きだった。

 3曲目はマーラーの交響曲第1番「巨人」。今まで何度聴いたかわからない曲だが、これほど新鮮に聴こえたことはめったにない。熱演は何度も聴いているし、その中のいくつかには感動もした。だが、今回は、初心に帰ったような、新鮮な気持ちで聴くことができた。

 細かいニュアンスが豊かで、音楽に流れがあり、アンサンブルがきっちりしているからだろうか。音楽を勢いで演奏するのではなく、一音一音を正確にとり、バランスに細心の注意を払い、粗い音を出さない。その姿勢がわたしの耳の垢を洗い落としたのか。

 シェーンベルクの「管弦楽のための変奏曲」とマーラーの「巨人」と、その2曲の演奏は、高関健と東京シティ・フィルが積み重ねてきた努力の、今現在の成果を表すものだ。着実に成果を挙げている。東京シティ・フィルの歴史の中でも、地味だが、画期的な演奏ではなかったか。
(2019.9.7.東京オペラシティ)
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