細川俊夫が監修するサントリーホール国際作曲委嘱シリーズの今年のテーマ作曲家はミカエル・ジャレル(1958‐)。ジャレルと細川俊夫はドイツのフライブルク音楽大学でクラウス・フーバーの作曲クラスの同級生だった。ともに20歳代後半の頃。今では60歳を過ぎて、二人とも確固たる地位を築いている。
今回、ジャレルの室内楽の演奏会には行けなかったが、管弦楽の演奏会には行くことができた。場所はサントリーホールだが、ある事情で1階2列目の席で聴いた。わたしはいつも2階席で聴くので、1階席の、しかもこんなに前で聴くのは初めてだ。リサイタルや室内楽ならともかく、オーケストラがどんなふうに聴こえるか、興味津々というよりも、不安が先に立った。
いつもの通り、ジャレル自身の作品と併せて、ジャレルが影響を受けた作曲家の作品と、ジャレルが将来を嘱望する若手作曲家の作品が演奏された。
1曲目は若手作曲家の横井佑未子(1980‐)の「メモリウムⅢ」。横井佑未子はジュネーヴ音楽院でジャレルに師事した。横井自身のプログラム・ノートによると、「これは聴いたことがある。あの曲に似ている。知っている曲だったけれど、アレンジが違って気づかなかった……など、そのとき耳に入ってきているものと、記憶とを常に照合しているのではないか」として、「『記憶に関する実験・経験ができる場』として本作品の構想を得た」そうだ。残念ながら、わたしには構想と作品とが結びつかなかったが。
2曲目はジャレルの新作で「4つの印象」。4楽章からなるヴァイオリン協奏曲で、ヴァイオリン独奏はルノー・カプソン(言い遅れたが、オーケストラはパスカル・ロフェ指揮の東京交響楽団)。第1楽章は「緩やかな導入をもった急速な楽章」(ジャレル自身のプログラム・ノート)。多彩な音が聴こえる。こういってはなんだが、1曲目との力量の差を感じた。第2楽章は独奏ヴァイオリンがピチカートに終始する「カプリッチョ」楽章。第3楽章は深遠な夜の音楽、第4楽章は第1楽章のさらなる展開だろうか。
前述の通り2列目で聴いたので、目の前のルノー・カプソンの超絶技巧に息をのんだ。スリル満点のその演奏とともに、新たな名曲の誕生を感じた。
3曲目はジャレルの旧作だったが、なにも感じなかった。4曲目はベルクの「管弦楽のための3つの小品」。第3曲「行進曲」がマーラーの交響曲第6番の第4楽章をモデルにしていることは周知の通りだが、それを聴きながら、1曲目の横井佑未子のプログラム・ノートを思い出した。
(2019.8.30.サントリーホール)
今回、ジャレルの室内楽の演奏会には行けなかったが、管弦楽の演奏会には行くことができた。場所はサントリーホールだが、ある事情で1階2列目の席で聴いた。わたしはいつも2階席で聴くので、1階席の、しかもこんなに前で聴くのは初めてだ。リサイタルや室内楽ならともかく、オーケストラがどんなふうに聴こえるか、興味津々というよりも、不安が先に立った。
いつもの通り、ジャレル自身の作品と併せて、ジャレルが影響を受けた作曲家の作品と、ジャレルが将来を嘱望する若手作曲家の作品が演奏された。
1曲目は若手作曲家の横井佑未子(1980‐)の「メモリウムⅢ」。横井佑未子はジュネーヴ音楽院でジャレルに師事した。横井自身のプログラム・ノートによると、「これは聴いたことがある。あの曲に似ている。知っている曲だったけれど、アレンジが違って気づかなかった……など、そのとき耳に入ってきているものと、記憶とを常に照合しているのではないか」として、「『記憶に関する実験・経験ができる場』として本作品の構想を得た」そうだ。残念ながら、わたしには構想と作品とが結びつかなかったが。
2曲目はジャレルの新作で「4つの印象」。4楽章からなるヴァイオリン協奏曲で、ヴァイオリン独奏はルノー・カプソン(言い遅れたが、オーケストラはパスカル・ロフェ指揮の東京交響楽団)。第1楽章は「緩やかな導入をもった急速な楽章」(ジャレル自身のプログラム・ノート)。多彩な音が聴こえる。こういってはなんだが、1曲目との力量の差を感じた。第2楽章は独奏ヴァイオリンがピチカートに終始する「カプリッチョ」楽章。第3楽章は深遠な夜の音楽、第4楽章は第1楽章のさらなる展開だろうか。
前述の通り2列目で聴いたので、目の前のルノー・カプソンの超絶技巧に息をのんだ。スリル満点のその演奏とともに、新たな名曲の誕生を感じた。
3曲目はジャレルの旧作だったが、なにも感じなかった。4曲目はベルクの「管弦楽のための3つの小品」。第3曲「行進曲」がマーラーの交響曲第6番の第4楽章をモデルにしていることは周知の通りだが、それを聴きながら、1曲目の横井佑未子のプログラム・ノートを思い出した。
(2019.8.30.サントリーホール)