Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

SOMPO美術館「北欧の神秘」展

2024年05月05日 | 美術
 SOMPO美術館で「北欧の神秘」展が開かれている(6月9日まで。その後、松本市、守山市、静岡市に巡回)。北欧絵画の展覧会は珍しいので、新鮮だ。手つかずの自然や素朴な人々を描いた作品が多い。

 北欧とはいっても、本展はノルウェー、スウェーデン、フィンランドの3か国の画家の作品で構成される。デンマークとアイスランドの画家は含まれない。実質的にはスカンジナビア半島の文化圏の展覧会だ。

 北欧絵画はあまり馴染みがないが、近年、国立西洋美術館がデンマークのハンマースホイ(1864‐1916)の作品を収蔵し、その記念に2008年にハンマースホイ展が開かれた(2020年にも開かれた)。最近はフィンランドのガッレン=カッレラ(1865‐1931)の作品を収蔵し、またスウェーデンの劇作家で小説家のストリンドベリ(1849‐1912)の絵画を収蔵した。興味深い点は、それらの画家(劇作家・小説家)がフィンランドの作曲家のシベリウス(1865‐1957)やデンマークの作曲家のニールセン(1865‐1931)と同世代なことだ。かれらの背景には北欧の民族意識の高まりがある。

 本展には上記のガッレン=カッレラの「画家の母」とストリンドベリの「街」が展示されている。「画家の母」は、国立西洋美術館の「ケイテレ湖」がフィンランドの民族的叙事詩のカレワラに題材をとった風景画であるのとちがって、リアルな肖像画だ(本展のHP↓に画像が載っている)。一方、「街」は国立西洋美術館の「インフェルノ(地獄)」と同様に荒々しい筆触の風景画だ。わたしは「街」に強い印象を受けたが、残念ながら本展のHPには画像が載っていない。

 北欧の画家で一番有名な人はムンク(1863‐1944)だろう。本展には「ベランダにて」が展示されている(本展のHP↓)。雨が多くて憂鬱な北欧の秋。姉妹の立つベランダの床が濡れている。姉妹は雨に煙るフィヨルドを眺める。ベランダの床のピンクと紅葉した樹木の赤がムンクの色だ。

 本展には未知の画家の作品が多い。それらの作品の中でもっとも惹かれた作品は、ニルス・クレーゲル(1858‐1930)というスウェーデンの画家の「春の夜」だ(本展のHP↓)。北欧の春。すでに日が長くなっている。夕日が地平線に沈む。澄みきった藍色の空に渡り鳥が飛ぶ。その鳴き声がきこえるようだ。手前の藪が不気味な形をしている。北欧の人々はこのような藪から超自然的な存在のトロールを想像したのかもしれない。

 トロールはキッテルセン(1857‐1914)というノルウェーの画家のドローイングをデジタル処理した動画が楽しい。トロールは北欧の人々には親しい存在だとよくわかる。

(※)本展のHP

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