Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

DIC川村記念美術館

2024年09月13日 | 美術
 千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館(写真↑はWikipediaより)が今後のあり方を検討中だ。選択肢は二つある。(1)規模を縮小して東京に移転する、または(2)閉館する。年内に結論を出す。その後の対応のため、来年1月に休館する。

 そのニュースの衝撃は大きかった。千葉県知事と佐倉市長が存続を求める発言をした。ネット署名も立ち上がった。わたしもショックだった。理由のひとつは、8月末の発表から来年1月の休館までに5か月しかなく、あまりにも短兵急だったからだが、より本質的には、同美術館が類例のない個性派美術館だからだ。

 同美術館はレンブラント、モネ、ピカソなどの作品を所蔵するが、その他に第二次世界大戦後のアメリカに起きた抽象表現主義の作品を多く所蔵する。とくにマーク・ロスコの大作「シーグラム壁画」7点が目玉だ。「シーグラム壁画」7点を展示する部屋はロスコ・ルームと呼ばれ、ロスコ・ファンの聖地となっている。

 規模の縮小または閉館となると、それらの作品がどうなるかが気がかりだ。同美術館を経営するDIC株式会社の声明文によると、同美術館は754点の作品を所蔵し、そのうちの384点はDICの所有だそうだ。声明文にはDICが所有する作品の一部が載っている。そこには「シーグラム壁画」7点はふくまれていないが‥。

 作品の一部または全部は売却されるのだろうか。それが美術品の宿命だといってしまえばそれまでだが、それとは別に、企業経営とメセナの問題は残る。企業経営が好調のうちは良いが、不調になったらメセナどころではないと。それはそうだが、そこで思考停止せずに、やれることを必死にやったのが先人たちの歴史だ。もちろんDICの担当者もいま懸命な努力を続けているだろう。

 私事になるが、友人の親族が長野県の清里に個人美術館を設立した。ドイツの現代美術家ヨーゼフ・ボイスの作品を収集・展示する美術館だった。だが、経営が行き詰まった。結果的に同美術館は閉館して、作品は売却された。友人は多くを語らないが、閉館にいたる過程での苦労は並大抵ではなかったようだ。

 友人の親族の美術館は個人経営の美術館だったが、個人経営であろうと企業経営であろうと、美術館の維持は大変だ。メセナの問題を広げれば、問題は美術にかぎらず、音楽でも同じだ。かつては東京交響楽団も日本フィルハーモニー交響楽団もスポンサー企業からの援助を打ち切られ、解散の憂き目にあった。両楽団は楽員が自主運営に乗り出して、見事に再建を果たした。だがそれは歴史に一頁を残すほどの成功例だ。消えていった音楽フェスティバルは多い。今後も何が起きるか。
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