Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

マックス・リヒター「インフラ」「ブルー・ノートブック」

2019年03月10日 | 音楽
 1945年3月10日の未明に東京大空襲があった。一夜にして約10万人が亡くなったというその犠牲者を悼んで、毎年墨田区では「すみだ平和祈念音楽祭」が開かれている。今年はドイツ生まれ、イギリス育ちの作曲家マックス・リヒター(1966‐)の特集が組まれた。

 リヒターはヴィヴァルディの「四季」のリコンポーズで知られるが、わたしはそのリヒター版「四季」を知ったとき(あれは何年前だったろう)、リコンポーズという概念・手法にびっくり仰天したものだ(そのリヒター版「四季」はとても面白かった)。

 マックス・リヒター・プロジェクトと名付けられた今回の特集では、リヒター版「四季」も演奏されたが、わたしが足を運んだのは、リヒターの室内楽作品「インフラ」と「ブルー・ノートブック」の演奏会だった。

 会場のすみだトリフォニーホールに入ると、ステージはブルーとピンクの照明で彩られていた。多くの聴衆が写真を撮っていた。普通のクラシック演奏会とは異なるそのステージを見て、写真を撮りたくなる気持ちはよくわかった。だが、女性係員が「写真撮影、録音はお断りします」と言って歩いた。演奏中ならともかく、演奏前なら写真撮影くらいは認めてもよさそうなものなのに‥と思った。

 1曲目は「インフラ」だった。リヒター自身が弾くピアノとエレクトロニクスにアメリカン・コンテンポラリー・ミュージック・アンサンブルの弦楽五重奏が加わる。弦楽五重奏はシューベルトの弦楽五重奏曲と同様、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ2の編成。ただしその弦楽五重奏はリヒターのピアノと同様に電気的に増幅される。

 全体の演奏時間は50分弱だったろうか。その間に短い曲がオムニバスのようにつながっていく。一曲一曲は昔の懐かしい映画音楽のように胸に沁みる。元々は英国ロイヤル・バレエのために書かれた曲。バレエのための曲と聞くと、なるほどと納得する部分がある。作曲のきっかけは2005年に起きたロンドンの地下鉄の爆弾テロだった由。

 2曲目は「ブルー・ノートブック」。楽器編成は「インフラ」と同じだが、サラ・サトクリフの朗読が加わる。朗読テキストはカフカのノートとミウォシュ(ポーランドの詩人・作家)の詩から採られている(ただし英訳)。音楽は「インフラ」よりも発展性があって聴き応えがあった。作曲のきっかけは2003年のイラク侵攻への想いだった由。

 わたし自身は、クラシック音楽を聴くときの習い性で、緊張して音を追ったが、これらの音楽はもっとリラックスして聴くべきだったと反省している。
(2019.3.9.すみだトリフォニーホール)

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