Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フェスタサマーミューザ:高関健/東京シティ・フィル

2023年07月27日 | 音楽
 フェスタサマーミューザ。高関健指揮東京シティ・フィルの演奏会。曲目はガーシュウィン2曲とバーンスタイン2曲というアメリカ音楽プログラム。いかにもサマーコンサートらしいプログラムだが、それにとどまらずに、以下述べるように、音楽ファンにさまざまな話題を提供する点が高関健らしい。

 1曲目はガーシュウィンの「パリのアメリカ人」。もう何度聴いたかわからない曲だが、今まで聴いてきたこの曲は、じつは短縮版だったらしい。原典版は(とくに後半を中心に)約100小節も多いとのこと。短縮版ではそれがごっそりカットされていた。高関健がプレトークで「なんかあっという間に終わるなと感じていた」と語っていたが、そういわれると、わたしもうなずけるところがある。

 実際に聴いてみると、原典版はたいへんおもしろかった。たしかに後半に耳慣れない箇所が続出する。それがあるために、後半が引き延ばされて、曲全体のバランスが良くなると思える。たとえていえば、ブルックナーの交響曲第3番では、最終稿(第3稿)は無駄がなく雄弁だが、第4楽章があっけなく終わる。その点、第2稿は第4楽章をふくめたバランスが良い。その関係に似ているか。

 ついでながら、「パリのアメリカ人」にはタクシーホーンが使われるが、スコアには4種類の音程が指定されているそうだ。今回の演奏では、指定通りの音程が出るタクシーホーン4つをドイツから購入したという。そこまでするのかと、タクシーホーンに注目したが、今まで聴いてきた頼りない音とは異なり、堂々とした大きな音だった。

 2曲目はガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」。ピアノ独奏は横山幸雄。音楽を崩さずに、引き締まった演奏をする。ショパンでもそうだが、それが横山幸雄の演奏スタイルだろう。カデンツァ風のソロの部分はさすがに立派だ。アンコールにドビュッシーの前奏曲集第2巻から第6番が演奏された。弾けるようなリズムに目を見張った。ドビュッシーのようではなかった。

 3曲目はバーンスタインの「ウェストサイド物語」から「シンフォニック・ダンス」。高関健のツイッターを見ると、楽譜の細かい誤りを訂正する過程がうかがえる。その効果は曲全体に及ぶはずだ。オーケストラが譜面を正確に読むようになるだろう。そう思うからか、演奏全体が新鮮だったように感じる。

 4曲目はバーンスタインの「ディヴェルティメント」。これも好演だった。アンコールに第8曲を全員立奏するのは2018年3月の定期演奏会と同趣向。今回も客席は沸いた。
(2023.7.26.ミューザ川崎)

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