まったく関連しない3人の女性の事件が結びつく。
死んだのは加藤文恵、三田敦子、菅野洋子。
探偵役はひとりの男子高校生・日下守。
育てられている叔父の運転するタクシーが女性をひいてしまった。
女性は菅野洋子。
洋子は信号を無視して自分から叔父のタクシーに飛び込んできた様だ。
そして謎の電話。
「菅野洋子を殺してくれてありがとう」
守は叔父の無実を晴らすために調べを始めた。
そして洋子のことを調べていくうちに洋子が死んだことと加藤文恵、三田敦子の死に関係があることに気づく。
3人は「恋人商法」と呼ばれる詐欺まがいの行為を行っていた。
その詐欺のことを乗せた雑誌「情報チャンネル」に彼女たちのことが掲載されていた。
犯人はこの詐欺にあった被害者ではないか?
しかし加藤文恵、三田敦子の死はいずれも自殺。洋子は交通事故だ。
宮部みゆき作「魔術はささやく」は次のふたつの謎から成り立っている。
1.3人の女性の死を繋ぐ第三者(犯人)の存在。
2.女性の死が自殺や事故であること。
この謎を解くために守は動く。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、
犯人はやはり恋人商法の詐欺に引っかかった被害者の関係者、
3人を死に追いやったのは「魔術」だ。
犯人は他人を意のままに操ることのできる魔術を使う。
その魔術とはいかなるものか?
犯行の動機や探偵役の男の子の動きは従来の推理小説に類似したものであるが、この「魔術」のトリックがこの作品を斬新なものにしている。
また、この作品のテーマは「人の心」だ。
人の心の弱さを描いている。
人との繋がりを求めて「恋人商法」に引っかかってしまう人間。
日常の単調な仕事が嫌で「恋人商法」に手を染めてしまう人間。
被害者も加害者も弱さを抱えた人間だ。
そんな人間を登場人物たちはこんなふうに非難するが。
まずは詐欺の被害者に対して。
「客になった男たちは、腹立たしいほど無邪気だった」
「あんなふうに心が通い合い、あんな幸せなことが本当にあると、彼らは思っている」
「和子は、きれいになれる、やせられる、毎日が楽しくなる、と無心に思い込んでいるあの娘たちのような女性を、突然現れて腕にすがってくる女性がなんの下心も抱いていないと信じてしまえるほど、日常の生活と仕事に追われているマジメな男たちを、心底憎んでいるのだった。彼女には、もうどんな種類の幻想もなくなっているから」
次に加害者に対して。
「いつの世にも真の悪人というものが確かに存在するということだ。しかし、彼らは絶対数が少ない。本当の問題は。その彼らについていく者たちなのだよ」
犯人は、洋子ら「恋人商法」に手を染めた人間を真の悪人の追随者だと言う。
「悪質な金融犯罪も、それを成り立たせ、実行し、蔓延させてさせているのは、もっと大勢の追随者たちなのだ。そこで何が行われ、自分がどういう役割を果たしているのか十分に承知しながら、いざというときには逃げ道を探せる者たちだ。悪意はなかった、知らなかった、自分も騙されていた、事情があってどうしても金が欲しかった、私も被害者だ。言い訳、言い訳、果てしない言い訳だ」
そしてその弱さを抱えている人間は詐欺の被害者・加害者だけではない。
守の父親は勤めている役所の金を横領した。
守に様々な助けの手を差し伸べる大手企業の副社長は、実は守に対して後ろめたいことがある。その後ろめたさから逃げるために、自己満足のために守を助けている。
守の同級生は脅迫されていじめに加担した。
盗癖のある少女、麻薬常習者は守のアルバイトする店の中で事件を起こす。
みんな弱い。
そして守。
ラスト、守は犯人に心を試される。
自分の弱さに負けてしまえば、守は犯人の意図した犯罪を犯してしまうことになる。
人の弱さを描くことに作品のほとんどを使い、ラスト、主人公の心の強さを試す。
この辺りが小説として巧みだ。
単なる推理小説にしていない。
テーマがしっかりしている。
犯人の使う「魔術」のトリック自体も「人の心の弱さ」に起因しているというのも面白い。
死んだのは加藤文恵、三田敦子、菅野洋子。
探偵役はひとりの男子高校生・日下守。
育てられている叔父の運転するタクシーが女性をひいてしまった。
女性は菅野洋子。
洋子は信号を無視して自分から叔父のタクシーに飛び込んできた様だ。
そして謎の電話。
「菅野洋子を殺してくれてありがとう」
守は叔父の無実を晴らすために調べを始めた。
そして洋子のことを調べていくうちに洋子が死んだことと加藤文恵、三田敦子の死に関係があることに気づく。
3人は「恋人商法」と呼ばれる詐欺まがいの行為を行っていた。
その詐欺のことを乗せた雑誌「情報チャンネル」に彼女たちのことが掲載されていた。
犯人はこの詐欺にあった被害者ではないか?
しかし加藤文恵、三田敦子の死はいずれも自殺。洋子は交通事故だ。
宮部みゆき作「魔術はささやく」は次のふたつの謎から成り立っている。
1.3人の女性の死を繋ぐ第三者(犯人)の存在。
2.女性の死が自殺や事故であること。
この謎を解くために守は動く。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、
犯人はやはり恋人商法の詐欺に引っかかった被害者の関係者、
3人を死に追いやったのは「魔術」だ。
犯人は他人を意のままに操ることのできる魔術を使う。
その魔術とはいかなるものか?
犯行の動機や探偵役の男の子の動きは従来の推理小説に類似したものであるが、この「魔術」のトリックがこの作品を斬新なものにしている。
また、この作品のテーマは「人の心」だ。
人の心の弱さを描いている。
人との繋がりを求めて「恋人商法」に引っかかってしまう人間。
日常の単調な仕事が嫌で「恋人商法」に手を染めてしまう人間。
被害者も加害者も弱さを抱えた人間だ。
そんな人間を登場人物たちはこんなふうに非難するが。
まずは詐欺の被害者に対して。
「客になった男たちは、腹立たしいほど無邪気だった」
「あんなふうに心が通い合い、あんな幸せなことが本当にあると、彼らは思っている」
「和子は、きれいになれる、やせられる、毎日が楽しくなる、と無心に思い込んでいるあの娘たちのような女性を、突然現れて腕にすがってくる女性がなんの下心も抱いていないと信じてしまえるほど、日常の生活と仕事に追われているマジメな男たちを、心底憎んでいるのだった。彼女には、もうどんな種類の幻想もなくなっているから」
次に加害者に対して。
「いつの世にも真の悪人というものが確かに存在するということだ。しかし、彼らは絶対数が少ない。本当の問題は。その彼らについていく者たちなのだよ」
犯人は、洋子ら「恋人商法」に手を染めた人間を真の悪人の追随者だと言う。
「悪質な金融犯罪も、それを成り立たせ、実行し、蔓延させてさせているのは、もっと大勢の追随者たちなのだ。そこで何が行われ、自分がどういう役割を果たしているのか十分に承知しながら、いざというときには逃げ道を探せる者たちだ。悪意はなかった、知らなかった、自分も騙されていた、事情があってどうしても金が欲しかった、私も被害者だ。言い訳、言い訳、果てしない言い訳だ」
そしてその弱さを抱えている人間は詐欺の被害者・加害者だけではない。
守の父親は勤めている役所の金を横領した。
守に様々な助けの手を差し伸べる大手企業の副社長は、実は守に対して後ろめたいことがある。その後ろめたさから逃げるために、自己満足のために守を助けている。
守の同級生は脅迫されていじめに加担した。
盗癖のある少女、麻薬常習者は守のアルバイトする店の中で事件を起こす。
みんな弱い。
そして守。
ラスト、守は犯人に心を試される。
自分の弱さに負けてしまえば、守は犯人の意図した犯罪を犯してしまうことになる。
人の弱さを描くことに作品のほとんどを使い、ラスト、主人公の心の強さを試す。
この辺りが小説として巧みだ。
単なる推理小説にしていない。
テーマがしっかりしている。
犯人の使う「魔術」のトリック自体も「人の心の弱さ」に起因しているというのも面白い。