平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

容疑者Xの献身

2009年02月05日 | 邦画
★この作品は天才数学者の石神哲哉(堤 真一)に尽きる。
 才能を持ちながら恵まれない生活。
 そんな彼に一筋の光明を見せてくれたのは娘と二人で暮らす隣人・花岡靖子(松雪泰子)。
 そんな靖子のために……。

 泣かせるのは上に書いた石神の動機だ。
 絶望の淵にいる人にとっては他人の何気ない言葉や笑顔が救いになるんですね。
 その救ってくれた人のために犯罪を行う。

 途中、石神の動機にはミスリードがなされる。(以下ネタバレ)

 靖子に男の陰。男と食事をし車で送られてくる靖子。
 石神は嫉妬……?
 石神は靖子に異常な執着を見せるストーカー?
 靖子を助けたのは見返りを求めてのもの?

 だが違っていた。
 男と会う靖子を追いかけていたのは男が信ずるに足る人物かどうかを確かめるため。
 石神の行為は純粋に靖子の幸せを願う無償の愛だった。

 真実を知って駆けつけた靖子が「自分も償いをします」と叫び、石神が「そんなことをしてはいけない。やったのは自分だ」と叫ぶシーンはすごいですね。
 響き渡る慟哭。
 どんなラブシーンよりも愛が伝わってくる。

 日本映画史に残る名シーン・名演技。

★そして湯川先生(福山雅治)。
 物理と数学、学問の分野は違うが、同じ理論と数字の世界に魅せられていた湯川と石神。
 ふたりには理論と数字の世界の美しさだけがすべてであり、人間の心=愛が介在する余地がなかった。
 ところが石神は<愛>という感情を抱いてしまって。
 この石神を見て湯川は何を考えたのだろう?

 <愛という不合理なものに囚われるからこうなる>。

 そう思ったかもしれない。これが今までの湯川の主張だからだ。
 だが今回の石神を見て湯川は思う。
・数学の世界は石神を救えなかった。
・生きていくために石神には愛が必要だった。
・どんなに不合理であっても愛を求めずにはいられないのが人間。
 
 理論と数字だけだった湯川の心に人間が入ってくる。
 単なる数字・理論おたくなのか、つらい過去があって人間を否定したのか、湯川の人物像はいまだに明らかにされていないが、今回のことで彼が愛や人間について考えさせられたのは確か。

 本編のドラマは冒頭の電磁波を使った派手な事件と違って地味。
 トリックも湯川と石神が歩くシーンでベンチに座ったホームレスがいないことである程度予想がつく。
 しかしドラマがしっかり作られているから胸を打つ。


コメント (6)
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