平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ザ・ロック

2009年02月24日 | 洋画
★アクション映画の作劇は次から次へと襲い来る困難。

 この作品「ザ・ロック」の場合は
・難攻不落の要塞(刑務所)アルカトラズ
・敵はアメリカ海兵隊
・81人の人質
・10個のVXガス
 すごい困難・障害だ。
 この障害の壁は高ければ高いほどいい。
 例えば敵が訓練を受けた精鋭・歴戦のアメリカ海兵隊でなくて普通の悪党(ダイハードの様な悪)だったら観客のテンションもあまりあがらない。

★さて本題。
 この困難や障害は強大な敵・行く手を阻む要塞など外的なものばかりではない。
 登場人物にもある。
 たとえば主人公のスタンリー・グッドスピード(ニコラス・ケイジ)はFBIとはいえ現場の捜査官でなくて学者。
 銃の安全装置を外すことも知らない。
 これでひとつの障害となる。

 グッドスピードを助ける囚人ジョン・パトリック・メイソン(ショーン・コネリー)もまた障害。
 彼には国家に対する忠誠心などない。
 むしろ裏切られて憎んでいる。
 そんな彼だからアルカトラズ潜入の協力を求められて拒み、逃げてしまう。
 前半はメイソンを追うカーチェイスのアクションが展開されるが、これも障害。
 登場人物の性格や設定がそのまま障害になるのだ。

 そして作品は人物が抱えるそうした障害を克服する時ドラマになる。
 グッドスピードの場合は自分の弱さ・臆病さを克服した時。
 メイソンの場合は捜査に協力する時。

 メイソンが協力するまで過程は実に上手い。
・逃げるメイソン。サンフランシスコを大混乱に陥れるカーチェイス。
・彼の目的は娘に会うこと。
・再会した娘はメイソンに対して不信感。(母を捨てた無責任な男。囚人)
・信じてくれと言うメイソン。
 メイソンには自分が刑務所に入れられたのは国家の罠にはまったせいで悪をなしたからではないという想いがある。
・そこへ彼を捕らえるためにやって来る10台以上のパトカー。
・娘は「脱走してきたの?」と怒りの表情。
 メイソンのことを信じようとしていたのに裏切られたと思う。
・そこへグッドスピードがフォロー。
 「お父さんは国家の緊急任務で呼ばれたのです」
 これで娘の信頼はつなぎ止められる。

 メイソンはフォローしてくれたグッドスピードに感謝する。
 同時に娘の信頼を得るためにも正しいこと(VXガスから人々を守ること)をしようと思う。

 上手いですね。
 この一連のやりとりでメイソンの行動の動機が明確になる。
 同時にグッドスピードとの友情も生まれる。
 障害が単なる障害でなく、動機や友情などを同時に描いている。
 こういう作劇を見せられると「プロの仕事だなぁ」と思います。


コメント
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