「オリックス-かんぽの宿」疑惑の徹底検証が不可欠(植草一秀の『知られざる真実』)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 1 月 10 日 09:43:01: twUjz/PjYItws
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2009年1月10日 (土)
「オリックス-かんぽの宿」疑惑の徹底検証が不可欠
鳩山邦夫総務相が日本郵政によるオリックスに対する「かんぽの宿」一括譲渡に待ったをかけた。
問題は「かんぽの宿」だけの問題ではない。「郵政民営化」の本質に関わる重大さを帯びている。すでに「晴天とら日和」様も詳しく紹介してくだっさっている。
オリックスの宮内義彦会長は小泉内閣の総合規制改革会議議長を務めた人物で、郵政民営化推進論者の一人でもあった。
総合規制改革会議では労働市場、医療など重点6分野の規制緩和提言が示された。現在問題になっている派遣労働の自由化を推進した主力機関でもあった。
オリックスの宮内氏が会議議長を務めたほか、株式会社ザ・アール代表取締役社長の奥谷禮子氏、八代尚宏氏、株式会社リクルート代表取締役兼CEOの河野栄子氏も委員に名を連ねた。
「わんわんらっぱー」様によると、オリックスは株式会社ザ・アールの第2位の株主であり、株式会社リクルートはザ・アールの取引先であることが、衆議院厚生労働委員会で問題にされたこともあったとのことである。
医療における混合診療の解禁は、公的医療保険でカバーできない医療行為を解禁する規制緩和である。病気になったときに十分な医療を受けるためには巨額の費用がかかる。国民は疾病への備えとして、民間の医療保険商品を購入せざるを得なくなる。
米国が日本に対して突きつける内政干渉の公文書である悪名高い「規制改革年次要望書」の存在を世に知らしめた関岡英之氏は、米国資本が郵政民営化の次の大きなターゲットにしているのが民間の医療保険商品であるとの警告を発している。オリックスは系列企業でいわゆる第三分野の保険商品を販売しており、混合診療の解禁を含む医療分野の規制緩和を論議する総合規制改革会議の議長をオリックスの代表が務めることに対する懸念が、これまでも関係者から表明されてきた。
派遣労働の自由化については、「資本の論理」だけが優先されて、労働者の処遇および雇用の安定性が著しく損なわれたことが問題であるが、規制緩和を論議する内閣府の政令に基づいて設置された会議のメンバーに、多くの利害関係を持つ営利企業経営者が組み込まれたことがそもそも重大な問題である。
派遣労働においては、派遣元である人材あっせん業者が、不当に大きな利益を獲得し、労働者の権利が侵害されることが、大きな懸念要因である。派遣労働を急激に拡大させた背景に人材あっせん企業業界の利権拡大動機が潜んでいたことも確かであると思われる。
日本郵政が「かんぽの宿」をオリックスに一括譲渡することのどこに問題があるのか。この問題にも「郵政民営化」の本質が投影されている。日本国民の貴重な資産、財産が、十分な正当性に支えられた手続きを経ずに、私的な利益に転換されることが問題なのだ。
そもそも「郵政民営化」が、特定の資本、なかんずく外国資本が、不当に日本国民固有の財産を収奪することを目的に仕組まれた可能性が高いことが問題なのである。
小泉竹中政治は「郵政民営化」を「正義の政策」として国民にアピールした。「民間にできることは民間に」、「公務員を20万人以上削減する真の改革を実現しなければならない」と小泉首相は絶叫した。
2005年8月には、「郵政民営化の是非を問う」ことを目的に衆議院を解散までした。総選挙の投開票日が、同時多発テロが発生した9月11日に設定されたのも偶然ではないと考えられる。
日本郵政は、雇用の確保を重視してオリックスに一括譲渡することを決めたと説明しているが、雇用の確保について、具体的にどのような契約を交わすことになっているのかを公開する必要がある。
特定郵便局ネットワークの維持についても同様だが、「いつまで」、「何箇所の特定郵便局」を「どのような形態で」維持するのかが「契約」で確約されているのかが問題なのだ。とりわけ、「契約が守られない場合のペナルティー」が明記されていなければ有効性を持たない。
「かんぽの宿」の現在の雇用が維持され、「かんぽの宿」利用者の利用条件が維持されると伝えられているが、現在の雇用者の終身雇用が確約されているのか、「かんぽの宿」の利用形態が例えば今後50年は現状維持とすることが確約されているのか、などの契約内容の詳細が問題である。
一括譲渡された直後だけ、雇用と利用形態が維持されて、短期間に状況が転換されるのと、その契約が長期間有効であるのとでは、天と地の開きがある。
一括譲渡先を決定するために一般競争入札を実施したとされるが、入札は告知の方式により、実質的に「公開入札」の意味を持たない場合がある。形式のみ「一般競争入札」の体裁を整えて、実体上は「出来レース」で、特定の業者に「破格の条件」で譲渡されることなど、民間では日常茶飯事だからだ。
日本政府は破綻した長銀を入札方式で「リップルウッド」に10億円で譲渡した。譲渡後に発生する損失を日本政府が補填する「瑕疵(かし)担保特約」までついていた。日本政府はゴールドマンサックスとアドバイザリー契約を結び、多額のアドバイザー・フィーまで支払った。「旧長銀不正譲渡疑惑」も「りそな銀疑惑」とともに、全貌(ぜんぼう)がまだ明らかにされていない。
郵政事業が国営であれば、例えば「かんぽの宿」を払い下げるにしても、より厳格で透明性の高い方式が選択されなければならない。譲渡の時期にしても、日本政府にとって最も有利な時期が選択されなければならないことになる。
ところが、株式の売却はされていないものの、日本郵政という株式会社形態になっただけで、その意思決定は決定的に不透明になるのだ。日本郵政の事業決定は、基本的に民間の商取引と分類されて、さまざまなことがらが、「守秘義務」のベールに覆われてしまうのだ。
間違いのないようにはっきりさせておかねばならないことがある。それは、郵貯資金、簡保資金、日本郵政保有資産、なかんずく不動産の資産は、まぎれもない国民資産であることだ。
郵政三事業が株式会社形態に移行して以降、さまざまな利権獲得行動が広がっている。文字通り「政商活動」だ。「政商ブローカー」が私的利益を積み上げている可能性を排除できない。
「郵政民営化」については、郵政三事業を抜本的に縮小して、そののちに「民営化」すべきだとの「正論」が厳然と存在していた。私も大筋ではこの立場で意見を主張した。
しかし、小泉竹中政権は、巨大資産を抱えたままでの郵政民営化即時実行を強硬に主張した。その理由の一端が、「かんぽの宿」一括譲渡方針決定から透けて見えてくる。小泉竹中政権は、「巨大な資産を保有する郵政」を「民営化」しなければならなかったのだ。事業を縮小した「郵政」には「巨大利権」はもはや付属しないからだ。
2008年9月末時点でオリックスの発行済み株式のうち、57.6%が外国人投資家の所有である。つまりオリックスは「日本企業」でないのだ。宮内義彦氏、八代尚宏氏、奥谷禮子氏などは小泉竹中政治時代を代表する「市場原理主義者」の代表でもある。
2009年という時代の転換点にあたって、「市場原理主義者」と「市場原理主義」、そして「小泉竹中政治」を総括することが絶対に必要である。
「かんぽの宿」の譲渡先選定に際しての、応札状況および落札決定の実情を、国会でまず明らかにしなければならない。株式会社形態に移行した日本郵政における、重要な意思決定過程の実情を明らかにしなければならない。
日本郵政は「かんぽの宿」だけでなく、保有不動産の譲渡および再開発も進展させている。これらの資産売却にかかる商取引が、国民資産の取り扱いの見地から、十分に公正さと透明性を確保して進められているのかについて、徹底的な検証が求められる。国会は国政調査権を全面的に活用しなければならない。