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「かんぽの宿疑惑」竹中平蔵氏の稚拙な反論Ⅱ

2009-01-29 19:13:44 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

「かんぽの宿疑惑」竹中平蔵氏の稚拙な反論Ⅱ
「かんぽの宿疑惑」について、1月19日付産経新聞が掲載した竹中平蔵氏による稚拙な反論に対して、鳩山総務相が1月20日の閣議後記者会見で反論した。竹中平蔵氏は鳩山総務相の反論に対して1月27日に再反論した。しかし、その内容は1月19日の主張の繰り返しで、反論としての体をなしていない。


竹中氏は
①「かんぽの宿」は日本郵政の「不良資産」であり、資産処分等の経営判断については、民間の経営者に任せるべきだ、
②宮内氏は「2003年以降の」郵政民営化論議には関わっておらず、正式な売却の手順に従ってオリックスが「かんぽの宿」一括譲渡の決定を受けたのであり、「出来レース」の批判は妥当でない、
と主張する。


まず、竹中氏は「かんぽの宿」を「不良債権」と表現するが、「かんぽの宿」は「不良資産」ではない。全国70箇所の「かんぽの宿」は、全国の風光明媚な優良な観光地に立地する豪華な宿泊施設である。「かんぽ」はこの70箇所の施設を2400億円の資金を投入して入手した。


70施設に含まれる埼玉県の「ラフレさいたま」だけでも、用地費と建設費用は合計で278億円に達する。用度品を加えれば300億円の巨費が投入されている。


社民党の保坂展人議員がブログに「ラフレさいたま」の写真を掲載くださったが、豪華絢爛(けんらん)な施設は、いまも十分、利用に堪え得るものである。


週刊誌報道によれば、一括売却には70箇所の「かんぽの宿」に加えて、首都圏の9箇所の社宅施設が含まれているとのことだ。この9箇所の社宅施設だけでも、土地代のみの時価評価が47億円にも達するとのことだ。


これらの全施設がわずか109億円の安値で売却されることに対して、疑問を抱かぬことの方が、はるかに不自然である。竹中氏は「かんぽの宿」が年間50億円の赤字を計上していることをもって「不良債権」と表現しているが、赤字の大きな原因は、減価償却費が大きいことにもあると考えられる。


取得費用が2400億円にも達することが巨大な減価償却負担を生んでいるのではないか。減価償却費用を差し引いた収支でどの程度の赤字が生まれているのかを見なければ、適正な判断は不可能である。竹中氏は企業経営のこのような初歩的な知識さえ保持していないのではないかと推察される。


減価償却費を差し引いてもなお赤字であるのは、利用料金が低く設定されているか、業務にかかる経常費用が過大になっていることが原因と考えられる。もともと「かんぽの宿」は福祉向上を通じる利用者への利益還元を目的に創設されたものである。その目的を満たすことから利用料金が低く設定されている。収支を改善するための利用料金の見直しや経常費用見直しを実行すれば、「かんぽの宿」の赤字を日本郵政が保有している期間に圧縮することも可能であるはずだ。


「かんぽの宿」は断じて「不良債権」でない。きわめて貴重な、巨額の国民資金が投入された創設された資産である。したがってその売却に際しては、当該資産が適正な価格で売却され、国民に不利益を与えないように、最大の努力を注ぐことが強く求められる。


NTTやJRの民営化に際して株式を民間に売却する際、国民に対して十分な時間を確保し、情報を十分に提供して株式売却が実施されたはずだ。また、売却時期についても、市場環境を勘案して、株価が不当に低く設定される局面では株式売却が延期されたこともあった。


貴重な国民資産を売却するのであるから、国民の不利益が発生しないように、万全の対応が取られることは当然である。その当然の対応を日本郵政が取っていない可能性が存在することが問題とされているのだ。


巨大な資産価値を持つ「かんぽの宿」および「9箇所の社宅施設」が合計109億円で売却されるのは、常識的な判断基準に照らして、あまりにも不自然である。ここに問題が顕在化した原点がある。


竹中氏は「資産処分等の経営判断については民間の経営に委ねるべきだ」と主張するが、日本郵政は民間企業ではない。100%の株式を日本政府が保有する歴然たる国有企業なのである。この国有企業の資産売却について、所管大臣が疑義を差しはさむことは当然であるし、国会が問題として取り上げることも当然だ。


巨大な資産価値を保有する貴重な国民資産が不当に低い価格で、規制改革に関与した人物が代表を務める企業に払い下げられようとしているから、問題が顕在化している。


①問題となっている「オリックス」が株式の過半を外国人が保有する外国企業であること、
②「かんぽの宿」売却についてメリルリンチ日本証券がアドバイザーとして選定されていること、
③オリックス会長の宮内義彦氏が総合規制改革会議議長を務めた経歴を有し、「規制改革は最大のビジネスチャンス」を持論としていると伝えられ、『小泉改革を利権にした男』と題する著書が出版されてもいる。宮内氏が会長を務めるオリックスが一括譲渡の売却先に選定されたこと、
を踏まえて、所管大臣が譲渡方法の選択や入札の詳細を精査しようとすることは、順当である。


 1月22日付記事にも記述したが、形式上は「競争入札」の形態が取られたとしても、入札情報が十分に広く告知されず、実質的に「出来レース」であったとの疑惑を払拭できないのだ。


 メリルリンチ証券とオリックスとの関係、オリックスに対する支配権を有しているとされる米国の投資ファンド・サーベラスとメリルリンチ日本証券の関係など、チェックしなければならない事項は多い。


 重要なことは、国民の貴重な資産を売却するのであるから、情報が広く公開され、透明性の高い方法で売却が実施されることなのである。竹中氏は形式論だけを主張し、国民の利益を極大化するために不可欠な論点を素通りしている。


 向きになって稚拙な反論を繰り返すことが疑惑をさらに強めていることに竹中氏は気付いていないのだろうか。日本郵政の資産売却には、不自然で不透明な部分があまりにも多い。マンション用地の売却についても再調査が必要になった。竹中氏は自らパンドラの箱を開けて墓穴を掘りつつあるのではないかと推察される。


コメント
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