大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

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C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 4月16日 虎跳峡

2013-04-16 19:09:53 | B,日々の恐怖






    日々の恐怖 4月16日 虎跳峡






 旅先で会ったMさん(女性)の体験した話です。
十数年以上昔のことです。
Mさんは中国の雲南省にある虎跳峡(とらとびきょう)という処へ、数日かけてのトレッキングに出掛けました。

一日目
 美しい景色を楽しみつつ、難なく過ごしました。

二日目
 Mさんは早朝からトレッキング。
道は分かりやすかった様で、迷うことなく歩いていたそうです。
 Mさんは相変わらずの美しい眺めに見とれつつ、歩を進めていくと、

「 Hello! Where are you going ?」

と、声が降ってきました。
 上を見上げると、男性が手を振っています。
Mさんはいつの間にかトレッキングコースから外れ、自分が非常に不安定な場所を歩いていることに気付きました。

“ おかしいな???
確かにトレッキングコースを歩いていたはずなのに・・・。”

慌ててMさんはコースに戻り、その後声を掛けてくれた男性と共に一緒に歩くことにしました。
 男性(Sさん)はシンガポールの人で、

『 明日、虎跳峡に行く。』

という手紙を最後に行方不明になった妹さんを探しに来ている人でした。
赤いジャケットがよく似合う妹さんの写真を見せてもらいましたが、見覚えはありません。
 結局、妹さんは見つからないまま虎跳峡のトレイルは終わりました。
Mさんはお世話になったSさんに、妹さんが見つかりますように、と別れを告げました。


 それから数週間後、一通の手紙がMさんに届きました。
差出人は虎跳峡でお世話になったSさんです。
手紙の内容は以下の通りでした。

 Mさんと虎跳挟で別れたSさんは、その後もう一度同じ道をトレッキングしました。
そしてMさんが道を外した辺が気になったらしく、Mさんが行こうとしていた先に恐る恐る行ってみたそうです。
 その先は急に崖になっていました。
そして、もしやと思いSさんは崖の下を覗き込みました。
すると、崖の途中に見慣れた赤いジャケットが引っ掛かっていました。

“ あっ!”

と思った瞬間、谷底からブワッと風が吹き上がりました。
そして、その風で引っ掛かっていた赤いジャケットがフワリと宙に舞い、ゆっくりと谷底へと落ちて行ったと言うことです。
















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しづめばこ 4月15日 P255

2013-04-15 20:32:04 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月15日 P255 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 4月15日 訳あり

2013-04-15 18:56:04 | B,日々の恐怖







      日々の恐怖 4月15日 訳あり







 不動産調査会社に勤めるTさんの話です。
営業と調査担当のTさんは話好きで、人を怖がらせることが大好きです。
だから、かなりの脚色ありとも思えます。

 つい先日の話です。
うちは競売にかけられた不動産の調査を請け負ってる会社なんだけど、こないだ前任者が急に会社に来なくなったとかなんだかで、やりかけの物件が俺に廻ってきた。
 まぁ正直うちの会社は、とある筋の人から頼まれた”訳あり物件”を取り扱うようなダーティなとこなもんで、こういうことはしょっちゅうだからたいして気にもとめず、前任者が途中まで作った調査資料(きたねーメモ書き)持って、遠路はるばるクソ田舎までやって来たわけですよ。
 その物件はかなり古い建物らしく、壁とか床とかボロボロであちこちにヒビが入ってたり湿っぽい匂いがしたりで相当テンション下がってたんだけど、まぁとにかく仕事だからってことで気合入れ直してせっせと調査を始めたわけですわ。

 1時間くらい経った頃かな、ふと窓から外を見ると一人の子供が向こうを向いてしゃがみこんでなにやら遊んでるのに気づいた。
よそ様の庭で何勝手に遊んでんのって注意しようかと思ったんだけど、ぶっちゃけ気味が悪かったんだよね、その子。
 なんか覇気がないというか微動だにしないというか、一見すると人形っぽいんだけど、しゃがんでる人形なんてありえないし、でもとにかく人って感じがしなかった。
クソ田舎だけあって辺りはありえない位に静まり返ってるし、正直少し怖くなったってのもある。
 建物の老朽化具合からみて3年はほったらかしになってる感じだったので、そりゃ子供の遊び場にもなるわなと思い直し、「今日は遊んでも良し!」と勝手に判断してあげた。
ひとんちだけど。

 んで、しばらくは何事もなく仕事を続けてたんだけど、前任者のメモの隅の方に、

・台所がおかしい。

って書いてあった。
 調査資料はその書き込みのほとんどが数字(部屋の寸法等)なので、そういう文章が書いてあることにかなり違和感を感じた。
で、気になって台所の方へ行ってみると、床が湿ってる以外は特におかしそうなところはなかった。
 でも向こうの部屋の奥にある姿見っていうの、全身映る大きな鏡に子供の体が少しだけ映ってた。
暗くて良くわかんなかったけど間違いない、さっきの子供だ。

“ そうか、入ってきちゃったんだな。”

とぼんやり考えてたけど、ほんと気味悪いんだよね、そいつ。
 物音1つたてないし、辺りは静かすぎるし、おまけに古い家の独特の匂いとかにやられちゃってなんか気持ち悪くなってきた。
座敷童子とか思い出したりしちゃって。
もうその子を見に行く勇気とかもなくて、とりあえず隣にある風呂場の調査をしよう、というかそこへ逃げ込んだというか、まぁ逃げたんだけど。

 風呂場は風呂場でまたひどかった。
多分カビのせいだろうけどきな臭い匂いとむせ返るような息苦しさがあった。
こりゃ長居はできんなと思ってメモを見ると、風呂場は一通り計測されてて安心した。
ただその下に、

・風呂場やばい。

って書いてあった。
 普段なら「なにそれ(笑)」ってな感じだったんだろうけど、その時の俺は明らかに動揺していた。
メモの筆跡が書き始めの頃と比べてどんどんひどくなってきてたから。
震えるように波打っちゃってて、もうすでにほとんど読めない。

“ えーっと前任者はなんで会社に来なくなったんだっけ?
病欠だったっけ・・・?”

必死に思い出そうとしてふと周りを見ると、閉めた記憶もないのに風呂場の扉が閉まってるし、扉のすりガラスのところに人影が立ってるのが見えた。

“ さっきの子供だろうか?”

 色々考えてたら、そのうちすりガラスの人影がものすごい勢いで動き始めた。
なんていうか踊り狂ってる感じ。
頭を上下左右に振ったり手足をバタバタさせたり。
でも床を踏みしめる音は一切なし。
めちゃ静か。
人影だけがすごい勢いでうごめいてる。

 もう足がすくんでうまく歩けないんだよね。
手がぶるぶる震えるの。
だって尋常じゃないんだから、その動きが。
人間の動きじゃない。

 とは言えこのままここでじっとしてる訳にもいかない、かといって扉を開ける勇気もなかったので、そこにあった小さな窓から逃げようとじっと窓を見てた。
レバーを引くと手前に傾く感じで開く窓だったので、開放部分が狭く、はたして大人の体が通るかどうか。
 しばらく悩んでたんだけど、ひょっとしてと思ってメモを見てみた。
なんか対策が書いてあるかもと期待してたんだけど、やっぱりほとんど読めないし、かろうじて読めた1行が、

・顔がない。

だった。
 誰の?
そのときその窓にうっすらと子供の姿が映った、気がした。
多分真後ろに立ってるような・・・。
いつの間に入ったんだよ。
相変わらずなんの音も立てないんだな、この子は。
 でも、もう逃げられない。
意を決して俺は後ろを振り返る。
しかし、そこには、なぜか誰もいなかった。

 会社に帰った後に気づいたんだけど、そのメモの日付が3年前だった。
この物件を俺に振ってきた上司にそのことを言うと、

「 あれおかしいな、もう終わったヤツだよ、これ・・・?」

って言ってそのまま向こうへ行こうとしたんで、すぐに腕をつかんで詳細を聞いた。
 なんでも顔がぐしゃぐしゃに潰れた子供の霊が出るというヘビーな物件で、当時の担当者がそのことを提出資料に書いたもんだからクライアントが、「そんな資料はいらん」と言ってつき返してきたといういわくつきの物件だそうだ。
清書された書類を見ると確かに「顔がない」とか「風呂場やばい」とか書いてあった。
 まぁこういった幽霊物件は時々あるらしく、出ることがわかった場合は、備考欄にさりげなくそのことを書くのが通例になってるそうだ。
他の幽霊物件の書類も見せてもらったが、なるほどきちんと明記してあった。

「 なんで今頃こんなものが出てきたんでしょうかね?」

と上司に聞いたら、

「 ん~、まだ取り憑かれてるんじゃないかな、当時の担当者って俺だし・・・。」



















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日々の恐怖 4月14日 絵本

2013-04-14 19:10:07 | B,日々の恐怖










     日々の恐怖 4月14日 絵本







 Sさんは、学生時代に図書館でアルバイトをしていました。
図書館には利用者が自由に入れる開架書庫とは別に、表に入りきらない本を収納する閉架書庫という倉庫のようなスペースがあります。
 そこの図書館の閉架書庫は格別殺風景なところでした。
天井は高く、その高い天井まで人ひとりがようやく通れるくらいの通路を除いて、すべて書架になっています。
書架の色も壁の色もグレー一色で、省エネのために通路を除いて室内の照明は消してあります。
 利用者から要求されたとき図書館員はそこに本を取りに行くのですが、Sさんはその仕事が嫌で仕方ありませんでした。
薄暗い室内はだだっ広く、書架が高いために視野が遮られているので、人がいるのかいないのかわかりません。
誰もいないと思っていると奥の方から人の声がしてきたり、かたかたと物音がしたりして、びっくりさせられることも何度かありました。
 そのうち他の女性アルバイトも閉架書庫に入るのを嫌がり、男子学生や職員に頼んでいるというのに気づきました。
どうしても行かなければならない時は、みんなドアをストッパーで開け放しておき目指す本棚のところに走っていき、本をつかんで飛び出してきていたのでした。
気味の悪さが何に由来するものなのか、誰にも分かりません。
あえて言うなら生理的なもので説明できないのです。

 ある時、Sさんは利用者に頼まれて児童書を取りに行きました。
ちょうど、手が空いているのはSさんだけで人に頼めなかったのです。
メモを片手に目指す本を探していると、誰もいない書架の端でぎしぎしときしむような音がした後、スチール書庫を叩くような音がしました。
 Sさんは恐る恐るそちらの方を見ましたが誰もいません。
しかし通路に本が一冊落ちていました。
“うしろの正面だあれ”という題名の何の変哲もない絵本です。
なあんだ、と思って拾い上げた瞬間、何か気味が悪い感じを覚えました。
慌ててその絵本を立ててあった場所に戻し、Sさんはカウンターに戻りました。
 以来、Sさんは閉架書庫に入るたびに、そちらの方をうかがうようになりました。
怖いと思うのですが、確認しなくては気が済まないのです。
ときには通路を横切って、びくつきながら見に行きます。
 何故こんなことをしているのだろうと思いながら、見ないではいられません。
そして、たいていその絵本は床に落ちていました。
それを見ると許されたような気がして、脱兎のごとく入り口に駆け出すのです。
 Sさんは、担当の司書にそのことを話しましたが、その司書も通路に落ちる絵本があることを知っていました。
棚に問題があるのかと思い場所を移してみましたが、どこに置いても、一番下段に置いても、翌日には通路に転がっていると言っていました。


















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日々の恐怖 4月13日 ずぶ濡れ

2013-04-13 18:35:55 | B,日々の恐怖







     日々の恐怖 4月13日 ずぶ濡れ







 Hさんの25年くらい前の話です。

 友達の家で遊んでいたのですが、夜の12時頃お腹が減ったので二人で夜食を食べに行こうという話になりました。
そのころは、このあたりにコンビニもなく、仕方がないので峠を越えて1時間くらいの町のハンバーガーショップに行った帰り道のことです。
 行くときは何ともなかったのですが、人里離れた峠を下りてくる頃には霧が立ちこめていました。
時間は午前2時頃だったと思います。
 長い直線が続く下り坂、右はコンクリートの壁、左は並木になっていて風も流れないようで視界がとっても悪かったです。
峠と言っても国道5号線、幹線道路なのに時間のせいか車もすれ違うことがありませんでした。
 その時です。
霧の中、並木の方から人影が道路に。
 ヘッドライトに浮かぶ、上下真っ黒な服を着た人が、道路に出てきて止まれと車線を塞ぎます。
隣に乗っていた友人は「止まるな~、お願いだから止まらないで~。」と叫んでいましたが、俺は見捨てる気持ちにならず車を止めました。
 よく見ると片方の靴は脱げていて、しかも、足跡が道路にくっきり残っていることから、濡れていることがはっきり分かります。
雨が降ってる訳でもないのに、全身ずぶ濡れなんです。
怖いです。
とっても怖いです。
 窓を少しだけ開けて話しかけました。

俺:「 どうしました?」
その人:「 事故を起こしてしまって・・・・。」

どこをどう見ても、車の姿どころか残骸もありません。
もう泣きそうです。

俺:「 く、車なんてないじゃないですか。」
その人「 その並木の向こうにあります。」

仕方なく俺は車を降り、その人の言う並木の向こうを覗き込みました。
 川です。
コンクリートで護岸された川の下に(高さ2メートル)車が逆さまになっておりました。
その時ふっと思ったのです。

“ 車の中を覗いて、その人がいたらどうしよう、しかも血まみれで・・・。”

テレビのドラマのオチとしては、よくあるパターンです。
とても見れませんよ。
 とは言うものの、その人を放置する訳にも行かず、自分の車の後部座席に乗せて峠を下ることにしました。
もちろん、後ろの人からバックミラー越しに目を離せません。

“ 後部座席が濡れていて、乗せたはずの人がいない・・・。”

テレビのドラマのオチとして、これもよくあるパターンです。

 峠を下りたところにある駐在所に連れて行き、お巡りさんを起こして事情を説明しました。
結局、救急車を呼んで病院に行くことで話は付いて、救急隊員の人が着いて、その人に話しているのが聞こえます。

救急隊員:「 あなた、あの人たちにお世話になったんでしょ。
      お礼をするのに名前とか聞いたの?」
その人:「 あの~、失礼ですがお名前を教えてください。」
俺:「 名乗る程の者ではありません、失礼します。」

だって、ホントに怖かったんだもん。
後から化けて出られても困るし。
臨場感が伝わらないと思いますが、ホントに怖かったんですから。

















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日々の恐怖 4月12日 水

2013-04-12 19:21:08 | B,日々の恐怖






     日々の恐怖 4月12日 水






 Sさんが遅めの昼飯を買いに行ったときのことだ。
会社を出て十分ほどのチェーン弁当屋に向かう。
夏場のことで、夕方だというのに陽はまだ強く照らしていた。
地面に濃い影ができていた。
 近道として裏通りへ入ると、三叉路に背の低いお婆さんが首を左右に動かしていたという。
Sさんが近づくと、お婆さんはつつつ……と近づき、ペットボトルを差し出した。

「 これ、おにーさんこれあけてくんしゃい。」

入れ歯がないのか、枯れた花のような口から発される言葉はひどく聞きづらかったという。

「 いいですよ。」

Sさんはペットボトルを受け取り、蓋を回した。
 力をこめる必要はなかったそうだ。
ペットボトルは元から締まっていなかった。
 Sさんは押し付けるように返すと、お婆さんはペットボトルを逆さにした。
当然、ぼとぼとと乾いた路面に水は零れ落ちた。
途端、Sさんは影が一つしかないことに気づいたそうだ。

「 これで、らくになれんりゅ、おかげさんです。」

お婆さんは膝に手をついて礼をした。
曲がった首は溶けた飴のように垂れ、そのまま地面に落ちた。
Sさんの足元からお婆さんが、

「 おかげさんでしゅおかげさんでしゅおかげさんでじゃまができましゅ。」

と嬉しそうに笑ったという。
 弁当を買わず、Sさんは逃げた。
以来その裏通りは歩かないそうだ。
都内、四谷付近での出来事だったという。


















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日々の恐怖 4月11日 廃校

2013-04-11 18:29:43 | B,日々の恐怖







    日々の恐怖 4月11日 廃校






 Kさんの弟の話です。
当時弟は、静岡県内のZという地域密着型の地図制作会社でアルバイトをしていました。
その弟が、S県とK県の県境付近にバイクで調査に行ったときの話です。

 調査範囲は山中で、調査物件の一つに○○学園と表記があった。
実際訪ねてみると、そこは山深くに位置する廃校だった。
 廃校の入口には墓地があり、注意書きがされていた。

“ 勝手にお墓を作らないで下さい。”

このご時世に、異常な内容だと思った。
 弟は、廃校の玄関の手前7、8メートルまで進んで周囲を見回した。
建物自体はチョイ古で、特別問題は無かった。
 それで、建物の上の方はどうなっているのかと思い校舎を見上げた。
すると、最上階の一番端の教室に見えるカーテンの隙間から、男の子が頭だけを突き出していた。
カーテンレールと同じ位置から不自然な角度で首から上だけが校舎から突き出ている。
見上げていたので表情も確認できたが、口を開けまるで生気のないものだった。
これはヤバイと思い、急いでバイクに飛び乗り廃校から逃げ帰った。














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しづめばこ 4月10日 P254

2013-04-10 22:13:30 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月10日 P254 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 4月10日 悪戯

2013-04-10 19:05:16 | B,日々の恐怖






      日々の恐怖 4月10日 悪戯






 Wさんは就職を機に、それまで住んでいた栃木の実家から都内に引っ越した。
しかし就職した会社は半年で潰れ、当時付き合っていた彼女には手痛い振られ方をしたそうだ。
おまけに一年で大きい病気を二度し、計三週間の入院生活まで送るはめになった。
その一年で、小さい病気も含めると医療費はサラリーマン二ヶ月分の給料にものぼったという。
 バイトをしながら就職活動をしていたが、いよいよ先も見えなくなり実家に帰ることにしたそうだ。

「 ろくなことがなかったんすよ。」

日当たりの悪いアパートは黴が生えやすく、そのせいで体調も崩しやすいのではないかとWさんは考えたそうだ。

「 家賃は安くないくせに、環境も良くないとはどういうことだ、って思っちゃって。
だいたい水漏れの対応も遅いし、騒音のクレームつけても反応ないし。」

管理会社の怠慢は目に余った。
 憤ったWさんは悪戯をしてやろうと企んだそうだ。

「 神社で御札を用意してきました。
次の住人が見つけたら絶対ビビるだろう、って思って。
けど目立つ場所に貼ったら、退去時のクリーニングで剥がされちゃうだろうし。」

 引越しの準備をしながら、Wさんは部屋を点検した。
ピンと来たそうだ。

「 ユニットバスの天井蓋があるじゃないですか。
あれを開けて、裏に貼ればバレないな、って思って。」

今まで一度も開けたことはないので、埃まみれだろうと予測した。
 マスクをして手をかけた。
天井裏には、びっしり赤茶けた御札が貼られてあったそうだ。
Wさんは言葉を無くして見回した。
 一部、爪で引っ掻きながら剥がした跡が残っていた。
そしてとぐろを巻いた蛇のように、濡れた長い髪が盛られてあったという。
Wさんは残りを引越し屋に頼み、二度とそのアパートに戻らなかった。

















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日々の恐怖 4月9日 事故

2013-04-09 19:05:57 | B,日々の恐怖






    日々の恐怖 4月9日 事故







 10年ほど前、Kさんの弟が起こしたバイク事故にまつわる話です。
当時弟は、静岡県内のZという地域密着型の地図制作会社でアルバイトをしていた。
バイトの内容は、地図の更新のための情報を収集することだった。
 具体的には、一軒一軒家々を回り、今年度の地図に記載されている家主名と実際の表札とを照合する。
不一致だと、家主に確認をとる。
また、道に終点がある場合の確認も義務付けられていた。
 弟は新入りだったため、調査範囲の広い僻地が割り当てられた。
それが、富士宮近郊の土地だった。
弟はミニバイクを使用し、調査を行うことになった。
 調査は市街地から行い、終盤に残されたのは富士山麓に広がる国道沿いの家々と、国道から山にせり上がるように伸びている林道の終点の確認となった。
 その頃には、陽が陰りはじめていたという。
弟は、深い森を薄気味悪く思い、早く調査を終了させたいと焦っていた。
しかし、何故か地図に記載されてあるはずの林道が見つからない。
しばらくして、やっと見つけた林道の入口は、なかば木々が覆いかぶさり隠されていた。
 弟が、木々の隙間から中に進んでみると道は舗装されておらず、地面がむき出しになっていた。
作業用の林道ではないか、と思った。
 そのまま、林道を登って行く。
森の中は、さらに暗かった。
辺りの雰囲気に怖くなり、バイクのスピードを上げ一気に駆け上がる。
それで、4、5キロは登っただろうか。
まだ、道の終点にたどり着く気配すらない。
 そうこうしているとき、弟は自分の右手に何かが並走しているような気配を感じたという。
咄嗟に、右手に広がる森を見やった。
距離にして2、30メートル。
 最初は、白い布が自分と同じスピードで木々の間を飛んでいるかのように見えたという。
もうそれ以上見ない方がいいのではないかと思ったが、弟の好奇心の方が優ってしまった。
よくよく目を凝らす。
すると、それは白い着物のようなものを着た女であることが分かった。

 弟の話によると、女と確認した瞬間ものすごく厭な感じがしたそうである。
あまりの恐ろしさに弟はすぐさま、来た道を逆走した。
アクセルは全開、視線は女を捉えないように斜めに固定せざるをえなかった。
しかし、どうしても自分の視界の隅に、女が自分にへばり付くように飛んでいるのが、チラチラ映る。
 弟は半狂乱の状態で走り続け、なんとか国道へ逃れた。
林道からでても、しばらく猛スピードでバイクを走らせた。
どれくらい走っただろうか。
気づくと、女の気配も消えていた。

 念のため、さらに国道を走らせる。
そして、そろそろ大丈夫だろうと思った矢先だった。
突如ハンドルが取られて、弟は車道に投げ出された。
バイクは大破。
しかしながら幸いにも、弟は軽傷ですんだ。

事故後、弟がKさんに語ったのは、このような話だった。

















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日々の恐怖 4月8日 昼寝

2013-04-08 18:49:28 | B,日々の恐怖


 



   日々の恐怖 4月8日 昼寝






 私が入院していた病院で聞いた話です。
糖尿病で入院している別室のKさんとは談話室で仲良くなった。
互いの病気の話をひとしきりすると、私が振るわけでもなく先方から話し始めた。

「 兄ちゃん、夜眠れてるか?」
「 いえ・・。」

私は首を振った。
ただでさえ寝つきの悪い私は、枕が変わったうえに四六時中動かねばならない看護師さん達の物音で、目を閉じても二時間も三時間も眠れなかった。

「 そんな時でもな、しーっかり、目を閉じてなきゃなんねぇ。
おらぁ経験してんだ。」

話し方のトーンから、これが怖い話をしているのだとわかった。
私はちょっと興味を持ち、神妙な顔つきを保ったまま聞いてみた。

「 どんな経験ですか?」
「 看護婦が見にくるからだよ。」
「 はぁ・・?」

怪訝な私に、Kさんは再度言った。

「 いろんな看護婦が見にくるからだよ。」

“ なんだ、ただの入院生活でのアドバイスか・・・。
起きていたら怒られるのだろうか・・・?”

そう落胆した私にKさんは続けた。

「 違うんだ、看護婦だけど、いない看護婦な。」
「 えっ?」
「 おらぁ看護婦さんのネームプレート見て、全員の名前覚えてっから間違いないんだ。
あんな名前の看護婦なんていねぇんだよ。」
「 それは別の棟の看護師さんじゃないんですか?」

私が反論すると、Kさんはいかにも物を知らない年下を見るような目つきをした。
心の声が聞こえてきそうだった。

“ 若いヤツは判っちゃいねぇ、知っちゃいねぇ・・・。”

Kさんは説明する。

「 兄ちゃんな、看護婦さんが俺の顔までほんの数センチ、キスするみたいに近づくか?」

私が入院する四日前の晩のことだそうだ。

「 すうーっと鼻に吐息がかかるんだよ。
嗅いだことのねぇ匂いでな。
臭いってわけじゃなくて、そうだな、高い花の匂いみたいだったな。
ともかく離れたなって感じたから、うっすら目を開けたんだよぉ。」

ナースの格好をしたお婆さんがいたという。
背筋が九十度に曲がったお婆さんの両頬に、何本も管が突き刺さっていた。

「 管がな、なにか吸引するみてぇに、じゅぼぉーじゅぼぉーって鳴るんだ。」

その度にお婆さんの黄色く濁った瞳が痙攣する。
ナースコールを押そうか、そう迷ったが起きていることを悟られたくなかった。

“ 誰か気づいてくんねぇか、助けてくんねぇか・・・。”

目を閉じたままKさんは願った。
 五分は経っただろうか。
吸引音は次第に音量を下げ、止まった。
その途端、耳元に管が触れた。
なんとか悲鳴を押し殺すと、かすれた声で囁かれた。

「 また後で来ます。」

Kさんは失神するようにそのまま眠りに落ちたそうだ。

「 だからな、目を開けちゃいけねぇ。
兄ちゃんも俺みてぇに寝不足のまま退院したくねぇだろ?」

その晩以来、Kさんは一晩中起きては昼間寝ているという。

「 ようやく明日退院だよぉ~。」

Kさんは頬をほころばせた。
幸いにして、退院するまで私はそのお婆さんに会うことはなかった。











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日々の恐怖 4月7日 夕立

2013-04-07 18:28:17 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 4月7日 夕立





 昨日の夕立で思い出した話です。
小5くらいのとき、校庭で体育やってたときにすごい夕立が来たんで、みんなで体育館に避難したんです。
 で、もう自由に遊んでいいってことになったんで、私は友人2人と体育館の2階(観客席みたいになってた)に上がって、窓から外を見ていました。
 学校は高台にあったので、そこからは下の村が一望できたんですが、ふと見ると、大雨の中なのにやたら人が外に出てるんです。
夕立から逃げているようなわけでもなく、立っていたりノロノロ歩いていたり。
 そもそも田舎なので、普段からそんなに人はいません。
私の家もそこから見えたんですが、その周りにも5,6人は見えました。
なんか事件でもあったのかな~、と見ていたんですが、一箇所に集まるわけでもなく、一人ずつウロウロしているだけなので、なんだか言いようも無く気持悪くなって、友達と1階に下りてしまいました。
 雨のせいで一人一人の服装や性別もはっきりせず、なんか虫がわいてきたみたいだな~、と思ったのを覚えています。
とりあえず、あの辺の住民全員が出てきたくらいの人数はいました。
当時うちにいた祖母に聞いても、「夕立は来たけど、何それ・・?」って言われるし。
まあそれだけなんですが、夕立が来てコレを思い出すたび、なんか気持悪くなるわけです。













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日々の恐怖 4月6日 歌声

2013-04-06 18:41:08 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 4月6日 歌声




 夏だった。
Mさんは窓を全開にして高校野球を見ていたという。
応援のトランペットに混じって、その歌声は徐々に大きくなっていった。
 Mさんは角部屋に住んでいたので、隣か、その隣の住人の歌声に違いなかった。
怒鳴り込んでやろう、とMさんは意気込んでいた。
 隣の開けていたキッチン窓から半裸の老婆が見えたという。

「 愛してぇいる、愛してるよねぇだ~りん、病めるときも一緒だってぇ、誓ったよねぇ~。」

Mさんは、音をたてないようにゆっくり部屋に戻った。
話が通じる気はしなかった。
 しばらくした後に部屋のドアノブは何度か上下したが、Mさんは決して開けなかったという。

「 不動産屋にクレームいれたら、その部屋に住んでいる人はいないって言ってました。
幽霊・・?
そんなことありえませんよ、だって・・・・。」

その日、夕方になり歌が止んでからMさんは外に出たという。

「 ドアの前に落ちてました、いまどきカセットテープが・・・。」

テープは様子を見にきた不動産屋に渡した。
二日後、Mさんのアパートの鍵は厳重なものに変更されたという。














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日々の恐怖 4月5日 チキン南蛮

2013-04-05 19:46:19 | B,日々の恐怖





   日々の恐怖 4月5日 チキン南蛮





 その日のSさんは疲れていたそうだ。
昼から続いた打ち合わせ、会社に戻ってからの事務処理。
飯の時間もないほどの忙しさで、会社を出る頃にはすでに十時を回っていた。
駅前のガストでチキン南蛮を食べよう、満員電車の吊り革に掴まりながらSさんの腹は決まっていた。
 最寄りの駅に着いた。
急ぎ足で目当ての店に向かう。
入り口を塞ぐように、自転車を片手で抑えながら電話している女がいたという。
 女が耳に当てているのは紙コップだった。
コップの底には糸が出ており、先はガストの看板に繋がっていたという。

「 でさぁ、彼がいなくなってさぁ。
笑っちゃうんだけど、骨がさぁ、骨が見えるのよぉ。」

窓から、怯えた目をする店員が見えた。
 Sさんは逡巡した末、声をかけた。

「 ちょっと、どいてもらえませんか?」

女はゴミに群がるカラスを見るような目つきでSさんを見たという。
あの、害獣に向けるような、一切の容赦のない“消えればいいのに”というあの目つきだった。

「 笑うついででさぁ。
また笑っちゃうんだけど、私のとこにくんだよね。
みんな、ころしてやるよ。」

女の声は掠れた低い声だったという。
Sさんは回れ右をして、立ち食い蕎麦で夕飯を終えた。
東京ってやっぱ怖いわ、長野出身のSさんは深い溜息をついた。

















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日々の恐怖 4月4日 白衣

2013-04-04 18:38:57 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 4月4日 白衣





 昔、働いていた工場には検査室という6畳ほどの小さな部屋があり、そこに入室する時は白衣に着替えなければいけなかった。
白衣は廊下にあるロッカーに2、3着掛けてあった。
 新入社員の時、検査室で一人作業をしているAさんに用事があり、白衣に着替えて中に入った。
Aさんへの用事が終わり、「では、失礼します。」と頭を下げて帰ろうとした時、Aさんが「白衣、ちゃんと掛けといてね。」と言った。
自分は「はい、わかりました。」と返事をして、ドアの方に体を向けた瞬間、とても驚いた。
 床に白衣が大の字に広げて置いてあった。
小さい部屋の中、二人きり。
誰かが入って来て気付かないはずのない距離。

“ 何だこれ・・、いつの間に・・・?”

と絶句しているとAさんが、“あら?聞いてないの?”と驚いている。

「 これ、たまにあるから・・・・。」

 この現象、Aさんが入社した10年前からすでに発生しており、初めは原因を究明しようと休日出勤し1日中見張ったこともあったが、ほんの少し目を離した隙に、白衣が置かれており、白衣が置かれる事以外に特に被害もなく、他の社員も慣れているのか「またかよ、面倒くせえなあ。」なんて人もいるくらいだったので、もう、そんなもんなんだって事になったらしい。


 そんなある日、東日本大震災が起こった。
会社が海のすぐ側だったが、すぐに避難したため、うちの会社に犠牲者はいなかった。
 震災後、数日経った頃だった。
同僚が家に尋ねてきて工場を見に行かないかと誘ってきた。
はっきり言って、仕事もなく電気もなくやることもなかった自分は、同僚と工場を見に行くことにした。
 工場だった場所はもう瓦礫の山で、自然の力で積み上げられた車や、どこかの家のアルバムや卒業証書やおもちゃやらエロ本やら、色々なものを見つけては二人で嘆きあった。
買ったばっかだった新車は、屋根の上にきれいに乗っていた。
 同僚と、

「 ここは第1工場があったあたりだ。」
「 ここは会議室だ。」

なんて言いながら瓦礫の山を歩いていると、遠くのほうで白くキラキラ光るものが見えた。

「 あれはなんだろう?」
「 車の屋根とか?」
「 鏡じゃない?」

などと話しながら近づくと、それは大の字に広げられた白衣だった。
 津波で流されたはずにも関わらず、白衣には全く汚れがなく、たった今誰かが置いたかのように瓦礫の上に不自然に置いてあった。
同僚と無言で見詰め合ったあと、

「 ああ、ここ検査室か・・・。」

と震災後初めて爆笑した。
現在、工場は更地になっており、あの白衣がどうなっているのかは知らない。



















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