バッターボックスに立たなければ試合は始まらない
バッターボックスに入らなければ試合は終わらない
【羽根のない風力発電登場】
「羽根のない風力発電機」に風が当たると、空気の流れによる渦(ヴォーテックス)の力で上の
ほうが大きく揺れる。内部の下に組み込まれた反発する2枚の磁石により、揺れにより生じる上
下の動きで電力を発生させる。通常の発電機と同様に、電磁誘導の作用で機械エネルギーを電気
エネルギーへ変換する――そんな風力発電機が2016年に登場するというということで話題と
なっている。これはスペインのベンチャー企業「Vortex Bladeless(ヴォーテックス・ブレードレ
ス)」社が開発中の風力発電機で羽根(ブレード)のない風力発電機で、見た目は野球のバット
に似ている)。外側の素材はカーボンファイバーとグラスファイバーを合成したもの。
この原理については、「スマートキャンティに振動発電を組み込む」(『ドライマウスからスマ
ートキャンティ』2015.02.06)で紹介しているので(下図をクリック)それを参考願いたい。
現在は高さが6メートルのプロトタイプをフィールドテスト中で、2016年に発売予定の最初の製
品は2倍の12メートルになる。発電能力は4キロワットと小さく、家庭や小規模の会社で利用
することを想定。さらに発電事業用の1メガワット(=千キロワット)クラスの製品を2018年に
投入する計画。高さは百メートルを超える見込み。(1)同社試算では、従来の風力発電機と比
べて電力1キロワット時あたりの発電コストが40%も低くなる。(2)機械的な部品を使わな
いため、メンテナンスのコストも小さく、(3)風車の回転による騒音の発生や鳥の衝突も生じ
ない。(4)細長い円筒形の構造物を立てるだけで済み、狭い場所に設置することも可能になる。
Vortex社は製品化に先がけて6月1日から、インターネットを使って多数の出資者を募るクラウ
ドファンディングを開始。これまに投資家から百万ドル(1億2000万円)を超える資金を集めたが、
クラウドファンディングを実施して米国を中心に市場に狙っている。
【日本の政治史論 14:政体と中枢】
「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で、触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。
福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)
古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』
目 次
序 章 福島原発事故の裏で
第1章 暗転した官僚人生
第2章 公務員制度改革の大逆流
第3章 霞が関の過ちを知った出張
第4章 役人たちが暴走する仕組み
第5章 民主党政権が躓いた場所
第6章 政治主導を実現する三つの組織
第7章 役人―その困った生態
第8章 官僚の政策が壊す日本
終 章 起死回生の策
第8章 官僚の政策が壊す日本
官僚は公正中立でも優秀でもない
政治家やビジネスマンの場合、秀才の思い上かりがあると、やがてわか身に返ってくる。
ビジネスマンが、いくら俺は凄いんだ、頭がいいんだといったところで、仕事の成績が悪け
れば、笑われるだけである。政治家も世論の批判にさらされるし、なによりも選挙という国
民の審判がある。
対してキャリア官僚は、成果で評価されることはないので、自分か稿り高ぶっていること
さえ分からない。
多くのキャリア官僚は政治を軽んじている。
「大臣なんてすぐに代わる。永続して政策を考えているのはわれわれだけだ。われわれかい
なければ、政策一つ満足にできない。日本の官僚は公正中ふで優秀だ。政治家は専門知識が
なく利権に走る。従って、われわれ官僚が行政の主たる担い手になるべきだ」
と、本気で思っている人か少なくない。
私は、この自信が良く理解できない。第一自分だちか優秀だという根拠かない。東大を出
て官僚になったことが根拠だとしたら、あまりにも思慮が浅い。
確かに官僚になった時点では、人材の質は高い。省庁の選考は、ディベートなどもあって
民間に比べると比較的厳しい。それを潜り抜けてきたのだから、優秀だったのだろう。
しかし、これはI.0代前半の時点での話だ。その後のスキルのレベルアップやキャリア
で、いくらでも能力は伸び縮みする。
遂に官僚が優秀でなかった証拠ならいくらでもある。もし、日本のテクノクラートが本当
に優秀なら、現在のように財政が火の庫になるまで放置していただろうか。経済かこれほど
急速に萎んでいただろうか。
官僚は優秀でも公正中茫でもないのでは、と疑わせる事例は、枚挙にいとまがない。社会
保険庁の消えた年金問題、空港の需要予測、1400兆円の国民金融資産を抱えながら世界
で競争できない銀行を作った護送船団方式、住宅行政への信頼を地に落とした耐震偽装問題、
摘発しても摘発しても続く官製・談合……これが本当に優秀な官僚のやることかといわれれ
ば、俄かに反論できない。
おそらく福島原発事故を検証すれば、日本の官僚かアメリカやフランスなどの官僚と比べ
て、10年以上遅れた世界にいることが分かるのではないか。ニューヨーク・タイムズ紙な
どには、早くもそうした論評が載り始めている。
にもかかわらず、霞が関の官僚組織は日本最高の頭脳集団で、彼らに任せておけばなんと
かしてくれるという幻想を抱いている国民が、まだいる。もはや、こんな幻想は.自害あっ
て‘利なしである。公務員制度改革や経済再生を進めるにiたっては、公務員は公正中立で
優秀だという前提を捨ててかかるべきである。
インフラビジネスはなぜ危ないのか
霞か関と民主党政権か一体となって熱心に取り組んだ『パッケージ型インフラ海外展開」
も、適切な政策かどうか、怪しい限りである。
日本にはインフラ関連の優れた製造業がある。原了力発電、新幹線、水関連技術など、こ
れから新興国を中心に大きな財要のある分野だ。
しかし、単品として、あるいは個々の技術としては世界最高レベルでも、それを長期間に
わたりシステムとして管理・運営して利益を出していくという取り組みでは、欧米の企業に
後れを取ることが多かった。最近では韓国やロシアなどの追い上げにも遭っている。だから、
この分野で、官民挙げてオールジャパンで取り組もうというのである。
この分野に目をつけるのは正しい、政府と民間が協力して収り組むこともいい。だが、目
的が正しいから何をやってもいいとはならない。手段の適切性を慎重に咀恥しなければなら
ないのだ。
「パッケージ型インフラ海外展開」の発想の原点は、これをやれば、日本は儲かるだろう、
である。では、本当に儲かるのか。総理が首脳会議で「日本の企業にもいい製品があります
よ」と売り込むのはコストゼロなので、いくらやっても損はない。福島原発事故の際、フラ
ンスのサルコジ大統領がいち早く訪日し、自国企業の宣伝を大々的に、しかも巧妙に行つた
のは一つの手本だ。
しかし、問題はその先だ。こうした国家的なお祭り騒ぎは、後で国民につけが回ってきて
終わりということが多い。
まず第一に、インフラ事業の海外進出は10年から20年という息の長い取り組みが必要
だ。国家戦略としてこうした取り釦みを継続的に進めていけるような体制が政府にあるのか
どうか。つまり、組織力の勝負で勝てるのか。これまでの経験では、答えはNOだ。
日本人は、「組織力か強みだ]と自画自賛することが多い。政府にはとりわけその傾向が
強い。個人で戦うことに自信がないのでチームワークをことさら強調する。
しかし、日本の強みはチームワークの「和」ないし「協調性」の部分であり、たとえば、
組織としての決断力、俊敏烈、行動力などにおいては、欧米の政府や企業に比べて明らかに
劣っているということをあまり自覚していない。とりわけ、大企業や政府においてその傾向
が強い。私の経験では、俊敏果敢な行動や意思決定においては、大企業よりオーナー経営の
中小企業などのほうがはるかに優れていると思う。
たとえばイランで日の丸油田開発を目指したIJPC(イラン・ジャパン石油化学)事業。
三井物産を核とした三井グループが、イランの原油確保を目指して1971年からスタート
させ、円借款や貿易保険も用いた国家的プロジェクトとして進められたが、18年の歳月を
費やしても油田はできず、イラン革命、イランーイラク戦争で撤退を余儀なくされ、膨大な
損害をこうむった、政府も重大な損害を出した。
IJPCに取り組んでいたとき、企業も国も最大級のブロジェクトだとみな気分が高揚し
ていたが、見事に失敗に終わってしまった。このとき、イラン・イラク戦争に関する情報入
手やその後の意思決定でも、口本はもたついて被害を拡大させた。つまりこれは、日本は組
織力という点で決して秀でていないという一例である。
そしてこの組織力の弱さは、福島原発令故の対応でもはっきりと証明されてしまった。政
権中枢や担当省庁、主体となる企業はただ右往左.往するばかりで、組織としてまったく機
能できなかった、難しい決断や迅速な判断は、いずれも組織の命運がかかる重大事項だ。日
本の政官すべてかそうした面で、比較劣位にあることを十分認識すべきであろう。
競争力のない分野に無理やり突っ込んで行くことかいいのかどうか。むしろメインコント
ラクターのもとで、部分的にその機器を売り込んで、利益を短期で暖定すべしという考え方
も十分ある。やみくもにパッケージを賛美し、何十年分ものリスクを取ったほうが勝ちだと
いう偏った考え方は取るべきではない。
第二に、組織力の話とも関連するが、日本政府が前に出ることで、相手との交渉で有利に
立ってるかということがある。途上国といっても、独立や国家統一のために何回も戦争や内
戦を経験し、生きるか死ぬかの困難な外交交渉を乗り越えてきた国々が相手である。この海
千山千の国々を相子に、日本政府が強かな交渉をできるかどうか。
過去の例を振り返れば答えは簡単だ。「否」である、現在の日本政府の浮かれたお祭り騒
ぎを見ていると、相手からすれば、カモがネギを背負ってやってきたという状況になってい
るのではないかと、不安でならない。
事実、新幹線や原発の受注交渉で、各国から次々と灸件を突きつけられている。たとえば、
新幹線の車両を現地生産しろ、あるいは超長期の運転保証をしろ、また技術移転をしろと。
機器を現地生産するとなると、技術の流出は避けられない。
中国では新幹線を売り込んで技術か・取られ、いまや「中国製新幹線」は日本の強力なラ
イバルとなりつつある。
これは日本だけが直面している問題ではない。中国は、2002年に上海りニアモーター
カーを開通させ、上海万博が聞かれた2010年、杭州にまで延長した。上海リニアの入札
はフランス、ドイツ、日本で争われ、最終的にはドイツに決まり、工事が行われ、延長区間
も引き続き、ドイツの企業が請け負うことになっていた。
ところが、ドイツのリニア工場に中国人技術者が忍び込む事件か起き、その後、中国政府
は延長りニアの「10パーセントはドイツに発注するが、後はすべて自国でやるから技術移
転をしろ。その条件を呑まなければ発注しない」と要求してきた。そして実際、独自で開発
したリニアの実験を開始、国産リニアを完成ざせてしまった。
この項つづく