極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ラストワンマイル24

2019年02月25日 | 環境工学システム論



                                                                          

 学  而  がくじ
ことば-------------------------------------------------------------------------
「学びて時にこれを習う、また説ばしからずや。朋あり遠方より来たる……」(1)

「巧言令色、鮮なし仁」(3)
「過ちては、すなわち改むるに憚るなかれ」(8)
「三年父の道を改むることなきは、孝と謂うべし」(11)
「人のおのれを知らざるを患えず。人を知らざるを患う」(16)
--------------------------------------------------------------------------------
9 上に立つ者が、親の葬礼に心をこめ、また先祖の祭りをゆるがせにしない気風を示す
ならば、一般社会の慣習もおのずと醇化されよう。(曽子)

10 
子禽が兄弟子の子貢にたずねた。わたしたちの先生は、どこの国へ行っても政治の
相談にあずかりますが、先生のほうから働きかけてそうなるのですか、それとも相手から
招かれるのですか」
「先生の場合は、あの温良でつつしみ深いお人柄が、自然にそうさせるのだ。つまり、働
きかけるやり方がほかの人だちとはちがうというわけだ」
        
子禽〉 孔子の弟子。姓は陳、字は子亢几、または子禽。陣の人。孔子より四十歳の年
少。子貢の弟子だともいわれる。
子貢〉 孔子の弟子。姓は瑞木、名は賜。衛の人で、孔子より三十一歳年少であった。
才子肌で弁舌にすぐれ、魯の外交交渉に活躍したことが『左伝』『史記』などに記されて
いる。

11 父の在世中は、何事につけ父の意志を尊重し、父が亡くなってからも、喪中の三年
くらいは生前のしきたりに従う。これでこそ子として孝養をつくしたといえよう。(孔子)

12 礼は厳格なものだ。しかしそれを行なうには和の心が根本になければならない。古
代の聖王の道がすぐれているのも、この和の心あればこそだ。とはいえ、どんな場合でも
和の心さえあれば十分だというのではない。いかにも和は大切だが、一方で礼による折り
目がないと、せっかくの和もうまくゆかぬことがある。(有子)

12 礼は厳格なものだ。しかしそれを行なうには和の心が根本になければならない。古
代の聖王の道がすぐれているのも、この和の心あればこそだ。とはいえ、どんな場合でも
和の心さえあれば十分だというのではない。いかにも和は大切だが、一方で礼による折り
目がないと、せっかくの和もうまくゆかぬことがある。(有子)

13 約束は、道義にかな゜ていてこそ最後まで履行できる・恭敬はヽ礼に正しく従って
こそ卑屈から救われる。交際は、相手をよく見定めてこそ永続きする。(有子)

14 君子は飲食や住居など、安楽を求める肉体の欲望に負けてはならない。やるべき仕
事はてきぱき片づけ、発言には責任をもつこと。さらにその道の先達に師事して、独善性
から脱却すること。こうあってこそ学問を愛するものといえるだろう。(孔子)

15 子貢が孔子にたずねた。
「貧乏でも卑屈にならない、富んでいても傲慢でない、こういう人間はえらいと思います
が」
「まず立派だろうね。だが、貧乏でも人生を楽しみ、富んでいてもすすんで礼を守る、こ
ういう人物には一歩譲るね」
「つまり、詩経のなかの。いやがうえにもみがきをかけよ〃という一句、あの心ですね」
「そのとおりだ、それでこそ詩がわかるというものだ。ほかのことで話しあっているうち
に、連想がすぐ詩の再発見の方向へゆくのだから

子貢〉 かれの鋭敏さはしばしば語られる。
いやがうえにも……〉『詩経』衛風、洪漢篇にみえる。以後、『詩経』についてたびた
び語られるが、これはその最初。詩は、音楽などとともに、支配階級に属する者(君子)
の文化的教養として必須であった。

16 他人が一向に自分を認めてくれない、と不平をかこつのは筋違いだ。自分こそ他人
の真価を理解できずにいないか、それを気にすべきである。(孔子)

 

   

 【エネルギー通貨制時代 64】 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”



【燃料電池編:蓄電池に直流給電できる新型「エネファーム」】

●最大8日間の給電が可能
2月22日、パナソニックは、家庭用燃料電池「エネファーム」の新製品を発表した。戸
建住宅向けのモデルで、床暖房システムへの熱利用や蓄電池との連携など、省エネやレジ
リエンス(防災性能)に役立つ機能を強化した他、小型・軽量化も図った。価格はオープ
ンで、4月1日から販売する。新モデルは発電効率40%、熱回収効率57%とそれぞれ
1ポイントずつ向上させ、総合効率を97%に高めた。都市ガス/LPガス向けの2モデル
を展開。
機能面での特徴は大きく3つ。1つめは、排熱を床暖房に利用できる機能を追加。
従来モデルはエネファームのバックアップ給湯器の熱を床暖房に供給する仕組みで、この
熱はガス燃焼によるもの。新モデルは起動時にガス燃焼を利用するものの、温度が安定す
ると、床暖房の保温に貯湯タンクのお湯の熱を利用できる。これにより全体の投入ガス量
が減るため、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現や光熱費の削減に有効(
蓄電池に直流給電できる新型「エネファーム」、最大8日間の給電が可能 - スマートジャ
パン、2019.02.22
)。



2つめは、レジリエンス機能の強化だ。従来モデルではオプション機能として提供してい
た、「停電時発電継続機能」を標準搭載する。全てのモデルで、稼働中に停電が発生した
でも場合最大500ワット、最長192時間連続の電力供給が行えるようになる。さらに
レジリエンス向けのもう1つの新機能として、同社のハイブリッド蓄電池との連携機能を
オプションとして追加した。停電時を想定した場合、容量5~7キロワット時蓄電で家庭
の電力を賄えるのは1日程度。太陽光発電と連携していた場合でも、天候が悪ければ電力
を確保できない可能性がある。
そこで新モデルでは、停電時にエネファームから蓄電池に
最大650ワットで直流給電オプションを追加。最長で連続192時間にわたって蓄電池
に給電を行いつつ、熱も活用できることから、より住宅のレジリエンス機能の向上に貢献
できる。



3つめは設置しやすさの向上を目指した小型・軽量化だ。従来モデルと比較して高さを百
ミリ低い1650mmに、奥行きを50ミリ小さい500mmに、燃料電池ユニットの重量を9%減と
なる59kg。高さを低くしたのは、水回り設備が近い住宅北側の窓付近に設置した場合で
も、窓の一部をふさがないようにする配慮
だという。さらに奥行き500mmを達成したことに
よって、民法上の隣地境界線の問題もクリアしやすくなる。エネファームなどの家庭用燃
料電池について、政府は2030年530万台の普及目標を掲げているが、現状国内市場
全体での累計数は28万台(18年12月時点)にとどまっている。パナソニックは累計
生産15万台(同)を達成しているが、17年に発表した「2019年度に累計生産20
万台」という目標に対しギャップがあり、国内市場については「踊り場にきている」。こ
うした状況の打開策として、パナソニックはアプライアンス社だけでなく、エコソリュー
ションズ社の販路も活用して拡販を図る。特に販路として開拓の余地があるLPガス事業者
向けのルート開拓、さらにハウスメーカーなどへの提案を強化していく方針。



【燃料電池篇:最新プロトン交換膜技術】 
パナソニックのエネファームにおいて発電を担う燃料電池スタックは、セパレーターに挟
み込まれた膜/電極接合体(MEA)の集合体で構成されている。MEAの燃料極に水素、空
気極に酸素が供給され、電気化学反応により発電が行われる。ゴアセレクトメンブレンは
MEAの電気化学反応において発生する水素イオン(プロトン)を燃料極から空気極に移送
する役割を果たす。パナソニックのエネファームは2009年に第1世代が発売されて以来、
高効率のコージェネレーションシステムとして二酸化炭素排出量の削減や家庭の光熱費の
削減に貢献してきた。第6世代製品では、総合効率がこれまでの95%からさらに97%へと引
き上げられたほか、発電と給湯に限定されていたエネルギー利用の対象を暖房にまで広げ
ており、熱を床暖房に活用することが可能になった。ゴアはパナソニックと第1世代の開
発段階から協力関係を続けており、各世代の開発において厳しい要求に応え、パナソニッ
クのエネファームの技術革新、性能向上の一役を担う。



ゴアセレクトメンブレンは、ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)を用いた独自の
補強膜技術により、十分な強度を保ちながら薄膜化することが可能だ。これにより、高プ
ロトン伝導性による高い発電性能の実現に貢献するとともに、システムの長期使用におい
てイオン交換膜に対して求められる物理的耐久性能を満たしている。また、高い化学耐久
性能を備え、家庭用燃料電池システムのプロトン交換膜として高く評価された。
ゴアはプ
ロトン交換膜(PEM)[p1]燃料電池技術で世界をリードしている。ゴアセレクトメンブレ
ンは要求の厳しい燃料電池自動車アプリケーションの業界標準であり、トヨタ自動車の「
MIRAI」や本田技研工業株式会社の「クラリティFUELCELL」、現代自動車の「NEXO
などの市販されている燃料電池自動車に採用されている。

【関連特許】

❑ WO2010044436A1 燃料電池用補強型電解質膜、燃料電池用膜-電極接合体
、及びそれを備えた固体高分子形燃料電池 トヨタ自動車 日本ゴア

耐久性に優れ、特に過酸化物やラジカルによる電解質膜成分の劣化によるクロスリーク量
が低減された、多孔質基材で補強された燃料電池用電解質膜を提供することを目的とする。
本発明は、高分子電解質からなる燃料電池用電解質膜であって、多孔質基材と、前記高分
子電解質中に分散したラジカル捕捉剤とを含む、前記燃料電池用電解質膜に関する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材に高分子電解質分散液を複合化した燃料電池用補強型電解質膜であって、該電解質膜
はラジカル捕捉剤を含有しており、シート状に加工する際の流れ方向(MD)及びMDの垂直方
向(TD)の最大引張強度のいずれか一方が、80℃、相対湿度90%の時に35N/mm
上であることを特徴とする燃料電池用補強型電解質膜。

【請求項2】
前記電解質膜の、シート状に加工する際の流れ方向(MD)及びMDの垂直方向(TD)の最
大引張強度時の、流れ方向(MD)及びMDの垂直方向(TD)伸度のいずれか大きい方を分母
とした時の伸度比が、80℃、相対湿度90%の時に0.4~1.0であることを特徴とする請求
項1に記載の燃料電池用補強型電解質膜。

【請求項3】
前記多孔質基材が、延伸法によって多孔質化されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜
であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用補強型電解質膜。

【請求項4】
  前記ラジカル捕捉剤が、CeO、Ru、Ag、RuO、WO、Fe、CePO
CrPO、AlPO、FePO、CeF、FeF、Ce(CO・8HO、Ce(
CHCOO)・HO、CeCl・6HO、Ce(NO・6HO、Ce(NH
NO、Ce(NH(SO・4HO、Ce(CHCOCHCOCH
3HO、Fe-ポルフィリン、及びCo-ポルフィリンから選択される1種以上であることを
特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池用補強型電解質膜。

【請求項5】
燃料ガスが供給される燃料極と酸化剤ガスが供給される酸素極とからなる一対の電極と、前記
一対の電極の間に挟装された電解質膜とを含む燃料電池用膜-電極接合体であって、前記電解質
膜は、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池用補強型電解質膜であることを特徴とする
燃料電池用膜-電極接合体。

【請求項6】
 請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池用補強型電解質膜を有する膜-電極接合体を備え
た固体高分子形燃料電池

❑ 特開2005-276847 高分子固体電解質・電極接合体 日本ゴア

下図1のごとく、電極の表面に、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンとその多孔質空
隙部に含有された高分子固体電解質樹脂とからなる高分子固体電解質を高分子固体電解質
の溶媒又は溶液を用いて一体に形成した高分子固体電解質・電極接合体。特に高分子固体
電解質型燃料電池用の高分子固体電解質・電極接合体。上記の高分子固体電解質の両面に
電極を一体に形成してもよい構造/構成で、極の物性を損なうことなく、電極との接触抵
抗を低く確保しながら、高分子固体電解質膜の厚さを薄くして電気化学装置のエネルギー
効率及び電流密度を向上させる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の表面に、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンとその多孔質空隙部に含有された
高分子固体電解質樹脂とからなる高分子固体電解質を一体に形成したことを特徴とする高
分子固体電解質・電極接合体。
【請求項2】
前記高分子固体電解質の両面に電極を一体に形成したことを特徴とする請求項1記載の高分
子固体電解質・電極接合体。




【オールバイオマス事業辺:最新メタンドライリフォーミング技術】

2月15日、高知工科大学らの研究グループは、温室効果ガスを有用な化学原料に転換す
る───金属・セラミックス複合材料のナノ相分離構造のトポロジーを操ることにより、
メタンと二酸化炭素から有用な合成ガスを製造するメタンドライリフォーミング(DRM
に対し優れた低温触媒活性と長寿命特性を発揮する触媒材料───の創成に成功したこと
を公表。尚、メタンは、天然ガスの主成分であると同時に主要な温室効果ガスでもあり、
DRMは、メタンと二酸化炭素を化学原料に転換することができるため、天然ガスの有効利
用と地球温暖化抑止の観点から注目されています。しかし、低温 (600度未満) で特に顕
著なコーキング (副生成物としてすすが出ること) による触媒反応装置の栓塞を避けるた
め、現状のDRMは800度超の高温過程を必要とします。そのため、主に燃料消費や装置寿
命の問題から、工業規模での実用化には至らない。

そこで、研究グループは、金属相のニッケル (Ni) と酸化物相のイットリア (酸化イット
リウム、Y2O3) がナノ繊維状で組みひものように互いに絡み合う特殊なトポロジーを備え
た「根留触媒 (Rooted Catalysts) 」を創成し、Ni#Y2O3 (ニッケル・ハッシュタグ・イッ
トリア) と名付けました。Ni#Y2O3の触媒活性中心であるNiは、Y2O3内部に広く根を張り
巡らしているため、粒子マイグレーションに伴う失活を受けにくいという特性がある。こ
の根留触媒により、従来の触媒材料では困難とされていた低温領域 (500度未満) におい
て、コーキングを効果的に抑止し、長時間 (1,000時間以上) 安定的にDRMを駆動させた。

この成果は、天然ガスの有効利用と温室効果ガス低減への突破口になり。シェールガスな
どの非在来型化石燃料の市場拡大や新興国の経済成長に伴って、今後も温室効果ガスの排
出が続き、地球規模の気候変動は苛烈化が進むと予測される。これに対し、開発した触媒
は大きな抑止力を発揮する。

 Feb. 12, 2019 
【最新蓄電池篇:二次電池の自己放電電流を、簡単に測定】

2月21日、 東陽テクニカは2019年2月、電池の残容量(充電状態)を示すSOC(State Of
Charge
)調整と温度制御を行いながら、二次電池の自己放電電流を全自動で測定できる
SOC調整機能付き自己放電評価システム」を開発、販売を始めたと発表。

二次電池は、自己放電によって使用していない状態でも電池容量が減少する。この自己放
電量を測定することで、電池の良/不良判定や劣化診断を行うことができるという。ただ、
自己放電量を求めるには、電池の開回路電圧を長期間測定する必要があり、これまでは評
価結果が得られるまで数カ月を要することもあった。近年は、数日間で自己放電電流を評価
できる装置も登場しているが、SOCと温度の調整など事前準備に手間や時間を要する。

そこで同社は、自己放電電流の測定を行う「自己放電評価装置」と充電状態を調整する「
充放電装置」および、温度調整を行う「恒温槽」といった既存の装置を組み合わせ、これ
らを一括して制御できるソフトウェアを新たに開発した。このシステムにより、全自動で
SOC調整と温度制御をしながら、さまざまな充電状態における二次電池の自己放電電流を短
期間で容易に測定することを可能にした。
 

読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

     

第2部 第8章
 

エドウィンは、機会を狙っていた泥棒のようにさっと前に出て、草にしやがみ込むと、結
び目を引っ張りはじめた。紐は細く粗く、少女の手首に
容赦なく食い込んでいた。対照的
に、広げられ、重ねられた手のひらは、
小さくて、柔らかかった。最初、結び目はびくと
もしなかった。だが、エ
ドウィンは気持ちを落ち着かせ、紐の通っている道筋を注意深く
調べた。

もう.度やってみると、結び目に緩みができた。エドウィンは自信をもってほどきはじめ
た,ときおり柔らかい手のひらに目をやると、それはおと
なしい二匹の生き物のようにじ
っと待っていた。

ようやく紐を引き抜くと、少女は起き直り、エドウィンと向かい合うようにすわった。突
然、二人の距離が近すぎるように感じられ、エドウィン
はどぎまぎした。少女のにおいは
ほかの人と違う、と思った。古びたうん
こじやなくて、湿った薪を燃やしたときのにおい
だ………


「あいつらが帰ったら、葦の茂みを引きずり回されて、半殺しにされるわ
よ」と少女はそ
っと言た。一行きなよ。付に戻ったほうがいい」少女はお
ずおずと───自分の命令どお
り動くか不破かのように
手を伸ばしし、エドウィンの胸を押した。「行って,早く」
「ぼく、怖くないよ」
「うん、あんたは怖くない。でもね、怖くなくてもやられるの。あんたは助けてくれた。
でも、もう行って。早く、早く」

エドウィンは夕暮れ前にその池に来てみた。少女が寝ていた場所は草が倒れたままだった
が、それ以外に少女がいたことを示すものはなかった。
ただ、不気味なほど静かな場所に思えた。エドウィンはしばらく草の上にすわり、風に揺
れる蒲を見ていた。
エドウィンは少女のことを誰にも話さなかった。すぐに悪魔だと騒ぎ立てる叔母はもちろ
ん、少年たちの誰にも話していない。だが、その後の数週間というもの、思いがけないと
きに少女の面影が鮮明によみがえってくることが何度もあった。ときには夜、夢の中で。
だが、多くは昼目中、たとえば地面を掘っていたり、屋根修理の手伝いをしていたりする
とき。そんなとき、決まって股座に悪魔の角が生えてくる。最後に角は消えるが、あとに
恥の感覚が残る。少女の言葉がよみがえってくる。「なんでここに来たの,お母さんを助
けにいけばいいのに」

でも、母さんのところへどうやって………少女自身も、エドウィンのことを「まだ子供じ
ゃない」と言っていた。その一方で、「もうほとんど大人でしょ」とも言っていた。その
言葉を思い出すたび、恥ずかしさが戻る。先へどう進めばいいのか、道はなかなか見えず
にいた。だが、ウィスタンが納屋のドアを開け放ち、そこから目もくらむような光が押し
入ってきたとき、すべてが変わった。使命を果たすべく選ばれた男ウィスタンはエドウィ
ンをそう呼び、そしていま、二人はここにいる。これから国中を旅してまわる。きっと母
さんとも連からず出会えるだろう。そのとき、母さんと一緒に旅をしている連中は震え上
がる。

だが、ぼくはほんとうに母さんの声でトンネルに導かれたのだろうか。
ただ兵隊が怖かっただけではないのか……。衿い僧の後ろについて、流れ下る小川沿いに
まだ人の足で踏まれたことなどないような小道を歩きながら、エドウィンはそんな疑問を
もった,目が覚めて、古い塔の周りを兵隊が走りまわっているのを窓から見た。あれで怖
くなっただけではないのか。違うとはっきり言えるのか………だが、いますべてを注意深
く思い出してみて、自分に恐れはなかったとエドウィンは確信した。それに、もっとまえ、
日のあるうちに戦士とあの塔に入り、二人でいろいろと話したときも、感じたのは待ちき
れないという思いだけだった。ぼくは早く戦士と並び立ち、やってくる敵を迎え撃ちたい
………
修道院に到着した直後から、ウィスタンはあの古い塔をずっと気にしていた。一人で薪小
屋に屁もり、丸太を割っていたときも、しきりに塔を見土げていたのをエドウィンは覚え
ている。そしてf押し巾を押しながら敷地内をめぐり、薪を届けて歩いたときも、わざわ
ざ塔の近くを通るために順路をはずれたことが二回あった。だから、修道憎が会議のため
に姿を消し、中庭が空っぽになったとき、戦士が薪の山に斧を立てかけて「出るぞ一と言
っても、エドウィンは少しも驚かなかった。「君も来い、若き同志。あそこでわたしたち
を見下ろしているのっぼでお年寄りの友に、ご機嫌伺いといこうではないか。どこへ行っ
ても、わたしたちを見ているようだ,、一度くらい挨拶しておかないと、怒られるかもし
れない」

低いアーチをくぐり、塔のひんやりとした薄暗さの中に入った。

「気をつけろ」と戦士が言った。
「中に入ったと思うだろう? だが、足元を見てみろ」

下を見ると、足元前方に掘割りのようなものがあった。それは円形の壁沿いに伸び、全体
として円環状の濠をつくっていた。人人でも飛び越えられないほどの幅があり、中央部分
の土の床へは、一枚の板でできた簡単な橋で渡るようになっていた。エドウィンはその橋
のLから真っ黒な濠の中を見ドろした。後ろから戦士が話しかけるのが聞こえた。

「この濠には水がないぞ、若き同志。それに、もし落ちても、ここはきっと君の背丈ほど
の深さしかないだろうな。不思議だと思わないか。なぜ塔の内部に濠があるのか。そもそ
も、こんな小さな塔になぜ濠が必要なのか。いったいなんの役に立つ濠だろう」ウィスタ
ン橋を通って中央部分に渡り、試すように践でこつこつとそこの地面を打った。

「あるいは、昔の人は動物をほふるためにこの塔を注てたのかもしれないな」とつづけた。
「たぶん家畜の処分場だったのだろう。いらない部位は、そこの濠にぽいと落とせばよい。
君はどう思う」
「ありえますね、戦Lさん」とエドウィンが言った。「でも、動物ですよ。あんな細い板
の上を引っ張ってくるのはたいへんだったと思います」
「昔はちゃんとした橋があったのかもしれない」とウィスタンが言った。 
「どんな太った牛を渡らせても大丈夫なやつがな。ここに来た動物はきっと 自分の運命
を悟ったろう。最初の一撃で膝を屈しないやつもいたかもしれ ない。だが、そんな動物
も、この構造からはやすやすと逃げられない。体をよじり、必死で逃げ出そうとする。だ
が、体をどうねじり、どちらをどう向いても、目の前には常に濠がある。橋は小さなのが.
本だけで、半狂 乱の動物にはなかなか見つけられない。ここはそういう処分場だった。
そう考えても、さほど的外れではあるまいよ。さて、上はどうだ。君は上に 何を見る」
エビドウィンは頭上高くに円形の空を見て、「てっぺんが開いてます」と言った。
「煙突みたいです、戦士さん」
「ほう、おもしろいことを言う。もう一度、言ってみてくれ]
「ここは煙突に似ています、戦士さん」
「そこからどういうことが言える」
「昔の大がここを動物の処分場に使っていたなら、ぼくたちがいま立っているこのあたり
で火をおこしたかもしれません。関節ごとに切り離して、肉をあぶったんじやないでしょ
うか。煙は上って、あそこから出ていきます」
「うん、ありうるな。君の言うとおりかもしれない。ここにいるキリスト教のお坊さんた
ちは、そういうことをちらとでも考えたことがあるのだろうか。あの方々は、静けさと外
界からの隔絶がほしくてこの塔の中に入ってくるんだろう。ここを取り巻く県の分厚さは
どうだ。ここへ入るとき、外では烏がやかましかったのに、あの騒ぎもこの壁は通れない、
それにてっぺんから光が入るのも、お坊さんたちに神の恩寵を思わせるのだろう。君はど
う思う」
「確かにここへ来て祈るのでしょうけど、でも、ひざまずくにはこの地面は汚れすぎてい
ると思います」
「立ったまま祈るのかな。まあ、ここが動物を殺して焼くための場所だったとは想像もし
ないだろうが。ほかに、上を見て思うことはあるかな」
「何もありません、戦士さん」
「何もない?」
「階段しかありません」
「ああ、階段な。その階段をどう思うI

                      カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                  この項つづく
 

  ● 今夜の一曲

 Ariana Grande Problem ft. Iggy Azalea
Music Writers : Max Martin · Savan Kotecha · Ilya Salmanzadeh · Amethyst Kelly ·
Ariana Grande

「プロブレム」(Problem)は、アメリカ合衆国の歌手アリアナ・グランデとラッパーのイギー・アゼリ
アが発表した楽曲である。2014年4月28日にリリース。
シングルのジャケットはツイッター上で実施し
た投票によって決定された。クレジットにないビッグ・ショーンも、カメオでヴォーカルに参加してい
る。
全米シングルチャートBillboard Hot 100での最高位は2位である[3]。日本のビルボードチャートJ
apan Hot 100では16位。iTunesにおいては開始37分で1位となり、テイラー・スウィフトの「私たち
は絶対に絶対にヨリを戻したりしない」の記録(開始50分[5])を塗り替えて歴代最速となった。また、
初週のダウンロード数40万回達成(43万5千回)は史上最年少記録。

 

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