極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

福島原発汚染処理水とは ⑤

2023年06月05日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。
愛称「ひこにゃん」。


変貌する西梅田 ヒルトンホテル(東西)左奥と大阪駅前(右手前)

63日、5年前に学友のクラス会のフィナーレを西梅田は大阪マル
ビルの最上階で開催され別れたのが最後となる。2022年5月に他界し
た池田修治氏(享年七十四)の初回忌の法要に四天王寺は英霊堂に
て法要・参列させて頂いた(台風2号の影響はなかった)。ところ
で、JR大阪駅を降車すると駅前の風景(周辺の整備工事はまだ継
続中ではあるが)は画像のごとく様変わりしていた。巻頭の画像は
東梅田側で、右側曽根崎警察署後の住友不動産梅田マンションビル
がわたしたち兄弟(弟・龍作元インターアーク社長は昨年4月に他
界)が元曾根崎小学校・幼稚園、横側に吉本興業花月劇場が在った。
尚、2022年(令和4年)5月に老朽化のため建て替えを発表。2030年
までに完成予定。なお2025年 大阪・関西万博の際はバスターミナル
として活用予定だという。 また、右下画像の「大阪・神戸米国総領
事館ビル」(西天満)は弟が「スタジオ104」として参画してい
た。このようにわたしたちにとってここはバック・ヤードとしてい
まも存在する。

 
大阪マルビル            米国総領事館ビル

ところが、ことはそれだけでとどまらなかった。地下鉄の乗り継ぎ
が初心者同然なわたしには酷であった。目的駅は「四天王寺夕陽丘」
なのだが西梅田線に乗り込み途中二回路線変更することになる。乗
り込んだ地下鉄では男女のアジア系外人に英語、話しかけられ突先
に中国系だと判断し中国後で答えるという場面に遭遇するほどエス
ニックな世界に変わっているのだが、目的地が咲かせず待ち合わせ
ていた元同級生の青木秀雄氏に携帯電話するも和宗四天王の英霊堂
で列席しており、呼び出し近くまで迎えにきてもらうという始末。



四天王寺、英霊堂に描かれた竜の天井画
明治期に天井画を寄進したは森下仁丹の創業者。聖徳太子の1400年
御聖忌を機に、同社と四天王寺が共同企画。



その伽藍配置は「四天王寺式伽藍配置」といわれ、南から北へ向か
って中門、五重塔、金堂、講堂を一直線に並べ、それを回廊が囲む
形式で、日本では最も古い建築様式の一つ。その源流は中国や朝鮮
半島に見られ、6~7世紀の大陸の様式を今日に伝える貴重な建築様
式とされているが、幼年期に参拝した記憶が残っている。お墓もす
でに境内新調されており、その場で池田家の親族とお話しすること
になったが、彼の娘さんの嫁ぎさきの婿が、わたし住む彦根市で大
久保貴前市長と血縁があるという。その場ではそれ以上のことは知
ることはできず、後日奥様に確認することとしたが、故人が定年後
木彫り仏像づくりに勤しんでいたという小さな仏像を青木氏と一体
づつ遺品として頂き、途中梅田地下で客であふれる店で握り鮨戴き
を帰宅する。とことが、ことはそれで終わらなかった。その日に、
先日、訪問させて頂いた生駒は本家の由子婦人と娘さんが来るまで
訪問していたと迎えの彼女から告げられ、経緯を聴き、細やかなや
しさに触れる。翌朝(4日)、青木氏に電話を入れお礼とご家族の
ことを尋ねる。尚、四天王寺の本近くに元実家があり、帰りに跡地
周辺を見ているが、彼にとって四天王寺はバックヤードであったこ
とを再認識するが、午後には新型コロナ煮入り、音信が途絶えてい
た竹馬の友で命の恩人の片山博臣氏(同い年)に電話を入れると、
奥様から三年前交通事故で負傷し、入院中であると知らされ愕然と
する。彼の実家も滋賀県は木之元町出身でこの大阪・兵庫で鉄工所
を経営していた。5日、連日の出ずぱりもありすぐに駆けつけ見舞い
もできないと判断。「お見舞い」を届ける手配(彦根美濠の舎)を
済ます。このようにバタバタと「家仕舞・墓仕舞の季節」の弔事ご
とにて忙殺される次第。それにしても、百も承知とはいえ、「万事
お金」をあらため痛感する頃である。

     


 
【再エネ革命渦論 131: アフターコロナ時代 330】

技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中 ⑭




今夜はメタサーフェスの最新技術に触れよう。このブログに初め掲
載したのは、2016年6月16日の 『超表面工学の此岸』。それが十年
も経ず前実用(商用)段階に入っていることに驚く。5Gの商用導入
が世界的に開始され、現在は5Gのさらなる発展としての5G evolution
と次世代移動通信システムである6Gに向けた研究が加速。日本では、
2020年より第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスを開始さ
れ、VR(Virtual Reality)/AR(Augmented Reality)/MR(Mixed Reality
などの応用、IoT(Internet of Things)デバイスによる産業基盤の高度
化が進展。
『脚注』
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※メタマテリアル:電磁波に対して自然界の物質にはない振舞いを
 する人工物質。
※メタサーフェス:波長に対して小さい構造体を周期配置して任意
 の誘電率・透磁率を実現する人工媒質(メタマテリアル)の一種
 で、構造体の周期配置を2次元とした人工表面技術。
※プラズモニック・メタマテリアル:光の波長より小さな磁気共振
 器を3次元的なアレイとして集積化する.光には個々の共振器は
 見えない. 集団的な電子の振動(プラズモン)が,電場,磁場を
 作り出す.
※プラズモニクス:伝搬型表面プラズモンポラリトン(➲P-SP)
 と局在型表面プラズモンポラリトン(以後,L-SP)の特性を明ら
 かにして,その特性,一般的にはP-SP とLSPの電磁界の局在性と
 増強,を利活用したデバイス,装置などを研究開発する“表面プ
 ラズモン工学”のこと  ➲2002年にロチェスタで開かれた近接場
 光学国際会議頃から使われ始めた。
(1)プラズモニックデバイスの概略とその加工技術:センサ,光
 導波路,光デバイス,ナノ加工装置に分類される。


(2)プラズモニックセンサ:プラズモニクスの主得意分野。異な
 る密度のタンパク質(抗原)を同時にセンシングできるプロテオ
 ミクス用バイオアレイセンサ。ラマン散乱信号の高感度計測がで
 きるSERS センサ とTERSセンサ。
(3)プラズモニック光デバイス:
(4)メタマテリアルの進展:サブ波長人工構造を用いて,光の反
 射や伝搬を自由に制御することができることが明らかになってき
 た.これまで材料に大きく依存してきた光デバイスが,構造デザ
 インによる大きな自由度を獲得。現在は、比較的単純な分布型LC
  共振回路に他ならないが,電子回路が様々な機能を持つように,
 メタマテリアルのデザインも無限の可能性を持つ.
(5)高効率光デバイスへの応用:
1)電場増強とプラズモニックアンテナ:
2)ソーラーセル,光検出器,完全吸収体への応用:
①ソーラーセル設計で問題となるのは,「光を完全に吸収させるに
は,光起電層は光学的に厚い方がよい」という要請と,「生成され
たキャリアの拡散と再結合を防ぐためには物理的に薄い構造が適切
である」という互いに反する要請の存在➲光-電変換層の物理的な
厚みを薄くしながら,実効的な光との相互作用長維持に,プラズモ
ニック金属構造をソーラーセル構造内に導入する手法の提案。

ⅰ.金属ナノ微粒子をソーラーセル表面に分散,太陽光を散乱捕捉
 と同時に,ソーラーセル内で光を多重散乱
ⅱ.ソーラーセルの半導体接合面に金属ナノ粒子を配置,金属微粒
 子に励起される局在型表面プラズモンにより光電場を捕捉
ⅲ.セル背面に設け金属薄膜をナノスケール・レリーフ構造とし表
 面プラズモン-ポラリトンにより光捕捉

図1.表面プラズモンアシストソーラーセル


図2.完全吸収体を実現するメタマテリアル素子
3)プラズモニックレーザー,プラズモニックLEDへの応用

(6)光制御技術への展開と展望
1)プラズモニック導波路
2)スプーフプラズモ
3)偏光無依存ブリュースター光学素子
4)クローキング

※ via. 電子情報通信学会「知識ベース」 © 電子情報通信学会 2019
➲ http://www.ieice-hbkb.org/files/S2/S2gun_03hen_02.pdf

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特開2023-069445 エンドファイア指向性を有するアンテナ装置 株
式会社NTTドコモ 学校法人千葉工業大学 
【概要】

従来、屋内の天井などに設置される無線基地局向けのアンテナ装置
では、天地方向のサイズを抑えつつ、天井と平行な方向に電波を放
射する性能(エンドファイア指向性)が求められ、また、周期的な
構造を用い、電波の反射方向を任意に設定できるメタサーフェス反
射板が提案されもいる(特開2021-048465 メタサーフェス反射板お
よび該メタサーフェスを備えた信号機 電気興業株式会社)。上述し
たようなメタサーフェス構造によれば、電波の反射方向を任意に設
定できるが、天地方向のサイズを抑えつつ、エンドファイア指向性
を確保することは容易でなく、具体的には、一般的な屋内向けアン
テナ装置では、天井面側に金属反射板を設け、天井面からの放射の
影響を抑える。しかしながら、このような構造では、金属反射板か
らアンテナまでの距離を十分確保する必要があり、天地方向のサイ
ズが小さい、つまり、低姿勢なアンテナ装置を実現することが難し
いという側面課題がある。したがって、メタサーフェス構造を用い
つつ、低姿勢であり、エンドファイア指向性を有するアンテナ装置
の提供を目的とする。本開示の一態様は、誘電体基板(例えば、電
体基板20)の一方の平面に複数の導体素子(例えば、導体素子200)
が配置されるメタサーフェス構造(メタサーフェス構造15)と、前
記平面から離隔して所定距離内に設けられるアンテナ励振素子(ア
ンテナ励振素子100)とを備え、前記複数の導体素子は、前記誘電体
基板の平面視において、このアンテナ励振素子に対して対称に配置
されるアンテナ装置(例えば、アンテナ装置10)である。図1(a)
は、アンテナ装置10の平面図であり、図1(b)は、アンテナ装置1
0の側面図である。

[第1実施形態]
(1)アンテナ装置の構成
図1(a)は、アンテナ装置10の平面図であり、図1(b)は、ア
ンテナ装置10の側面図である。(a)及び(b)に示すように、ア
ンテナ装置10は、メタサーフェス構造15と、アンテナ励振素子100と
を備える。メタサーフェス構造15は、誘電体基板20、導体板30及び
複数の導体素子200によって構成される。なお 導体板30(地板、金
属反射板と呼ばれてもよい)は、必ずしも必須ではない。アンテナ
装置10の設置場所などによっては、導体板30は備えられなくてもよ
い。アンテナ装置10は、屋内の天井などに好適に設置できる。アン
テナ装置10は、天地方向(z 軸方向)のサイズが抑えられており、
低姿勢であることが特徴である。誘電体基板20側が天井面に配置さ
れてよい。 メタサーフェス構造15では、誘電体基板 20の一方の平
面に複数の導体素子200が配置される。具体的には、メタサーフェ
ス構造15では、両エンドファイア方向に放射するように2つの導体
素子200によって構成される1つのユニットが、アンテナ励振素子
100に対して対称、具体的には、アンテナ励振素子100を基準として
線対称となるように配置される。 本実施形態では、導体素子200は
、誘電体基板20の平面視(x-y面)において 長方形である。具体的
には、導体素子200は、xy平面において、y 軸方向がx軸方向よりも
長い長方形形状である。導体素子200の長手方向は アンテナ励振素
子100の長手方向と平行に配置される。本実施形態では アンテナ励
振素子100は、2つのエレメントを有するダイポールアンテナであり、
図中の矢印は 給電点を示す。複数の導体素子200は、誘電体基板20
の平面視において、ダイポールアンテナのエレメントに対してそれ
ぞれ対称に配置される。具体的には、2つの導体素子200によって構
成される1つのユニットが、当該エレメントに対して対称、具体的
には、このエレメントを基準として線対称となるように配置される。
誘電体基板20は、長さl = 0.53λ、幅w =0.53λ、高さh = 0.06λ、
比誘電率εr= 6.5である。導体板30は、誘電体基板20と同サイズで
よい。導体板30は、アンテナ励振素子100と反対側の誘電体基板20の
平面に配置される。導体素子200は、l1= 0.174λ、w1= 0.08λであ
る。また、導体素子200の配置間隔(x軸方向及びy軸方向、中心基準
)は、0.27λである(以下同)。本実施形態では、アンテナ装置10
の対応する周波数(設計周波数f0)は、28GHzとしている(以下同)。

図1.
(a)は、アンテナ装置10の平面図であり、図1(b)は ア
ンテナ装置10の側面図
【符号の説明】 10, 10A~10E アンテナ装置  15 メタサーフェス
構造 20, 20A~20E 誘電体基板  30 導体板  100 アンテナ励振
素子 200, 210, 220, 230, 240, 250, 260 導体素子

アンテナ励振素子100は、誘電体基板20の一方の平面から離隔して設
けられる。具体的には、アンテナ励振素子100は、誘電体基板20の一
方の平面から所定距離内に設けられる。所定距離は、アンテナ装置1
0が対応する波長λを基準として規定されてよい。なお アンテナ励
振素子100を誘電体基板20から離隔して設ける方法は、特に限定され
ない。例えば アンテナ励振素子100は、誘電体基板20から延びる支
柱(ブラケット)、或いは図示しないケースから延びる支柱(ブラ
ケット)などによって、誘電体基板20の一方の平面から所定距離内
に設けられてよい。 複数の導体素子200は、誘電体基板20の平面視
において アンテナ励振素子100に対して対称に配置される。具体的
には、アンテナ励振素子100は、x軸方向において、誘電体基板20の
ほぼ中央に配置されてよい。 但し、複数の導体素子200がアンテナ
励振素子100に対して対称に配置できれば、アンテナ励振素子100は
必ずしもx軸方向において、誘電体基板20のほぼ中央に 配置されて
いなくても構わない。アンテナ励振素子100は 長さla= 0.45λ、幅
wa= 0.1λである。アンテナ励振素子100は、メタサーフェス構造15
の表面から高さh1=λ/4 (= 0.25λ)の位置に設けられる。つまり、
誘電体基板20(の表面)からアンテナ励振素子100までの距離はアン
テナ装置10が対応する波長λの1/4の長さとしてよい。

(2)アンテナ装置の性能
図2(a)及び図2(b)は、アンテナ装置10の素子長l1に対する
放射方向と当該放射方向の利得、及びエンドファイア方向(θ= 90
度)の利得の関係を示す。 図2(a)及び図2(b)に示すように
、l1= 0.174λにおいて、エンドファイア方向(θ=90度付近)の利
得が最大化し、2.78dBiとなる。なお、誘電体基板20の幅方向(x軸
方向)が、90度及び270度と対応する(以下同)。

図3は、アンテナ装置10の設計周波数f0における放射指向性(z-x面)、
及び従来構造のアンテナの設計周波数f0における放射指向性(z-x面)
を示す。従来構造は、メタサーフェス構造15ではなく金属反射板を
用いた構造ある(以下同)。 従来構造のアンテナの場合、メインロ
ーブの放射方向はz軸方向であるが、アンテナ装置10では、x軸方向
であるエンドファイア(θ=90度)方向へ強く放射し、水平方向の利
得が従来構造のアンテナと比較して、約4dB改善されている。


図3.アンテナ装置10の設計周波数f0における放射指向性(z-x面)
及び従来構造のアンテナの設計周波数f0における放射指向性(z-x
面)を示す図



渡辺 悦司/遠藤 順子/山田 耕作【著】
汚染水海洋放出の争点―トリチウムの危険性
緑風出版(2021/12発売)

福島原発汚染処理水とはなにか ⑤
1.福島第一原子力発電所周辺海域における海水モニタリング
福島第一原発周辺海域の海水モニタリングについては、令和4年度か
ら、これまでの6測点(下記地図中(1)~(6)で毎月実施)に
3測点(下記地図中(7)~(9)で四半期毎(5月、8月、11
月、2月)に実施)を追加し、計9測点で実施。また、海水中のト
リチウムのモニタリングは、これまでの減圧蒸留法による測定では
検出下限値未満となることが多いため、電解濃縮法※1により検出
下限値を下げた測定を、四半期毎(5月、8月、11月、2月)に
実施。令和4年度に採取した海水について、測定を行った全ての放
射性物質(トリチウム(H-3)、セシウム(Cs-137)等)の濃度は、
告示濃度限度※2及びWHO飲料水水質ガイドライン※3を大幅に下回
っており、福島第一原発周辺におけるこれまでの測定結果と同程度
であった。また、トリチウムについては、日本国内における海水の
濃度範囲内(20Bq/L以下)であったと報告されている。
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※1.トリチウムの性質を利用しトリチウムを濃縮し測定する方法
※2.原子力発電所等から環境中に放射性物質を放出する際の基準
※3.世界保健機関(WHO)が定めた各国で飲料水の基準を定める際
 の参考資料
※4.生まれてから70歳になるまで、毎日この濃度の水を約2L飲み
 続けたと仮定した場合に、平均の年間線量が1mSvになる値。
※5.この濃度の水を、一年間毎日、約2L飲み続けたと仮定した場
 合に、年間線量が0.1mSvになる値。

2.日本国内における身の回りにあるトリチウムの濃度範囲





出典:環境省 ALPS処理水に係る海域モニタリング情報

上のグラフに使用したIAEA海洋放射能情報システム(MARIS)には、
日本を含む世界中の多くの機関により実施されたモニタリング結果
が収載。グラフ上特定の時期に大きなピークがあるのは、データの
内容に常時監視以外の目的で試験的に実施された内容も多く含むと
考えられ。収載している範囲についても、日本以外の東アジア地域
のデータが含まれないなど、地域的な網羅性は十分とは言えず、ま
た、日本周辺におけるモニタリング結果に比べて非常に高い範囲の
値となっていることもあり、参考情報として掲載。


海水のトリチウム濃度の参考指標については、日本全国のデータの
うち、過去の核実験等の影響が十 分減衰してきた2015年度以降のデ
ータ(赤枠部分)を対象とし、その期間における最大値を参考 指標
の最大値として用いた。各グラフにある高めの点は、主に全国の原
子力施設等から管理放出されたトリチウムが検出されているもの。

全データを表示したグラフ

蒸留法と電解濃縮法を区別して表示したグラフ
海水のトリチウム濃度のグラフの低い濃度部分を拡大し、蒸留法に
よる測定値(薄い青色)と電解濃縮法(濃い青色)による測定値を
区別したグラフです。電解濃縮法によるデータは限られた地域のも
のとなっている。※環境放射線データベース上で蒸留法及び電解濃
縮法の記載がないデータに関しては蒸留法に含めている。


雨水(降水)のトリチウム濃度の参考指標は、海水と同様に、過去
の核実験等の影響が十分に減衰し、比較的データが安定してきた2015
年度以降のデータ(赤枠部分)を対象とし、その期間における最大
値(7.3 Bq/L)を参考指標の最大値として用いた。


水道水(蛇口水)のトリチウム濃度の参考指標は、海水と同様に、
過去の核実験等の影響が十分に減衰し、比較的データが安定してき
た2015年度以降のデータ(赤枠部分)を対象とし、その期間におけ
る最大値(1.2 Bq/L)を参考指標の最大値として用いた。

参考とする指標値

福島第一原子力発電所周辺海域におけるこれまでの測定結果※6

3.調査測点
  東京電力(株)福島第一原子力発電所周辺海域(9測点)  
 
(1)福島第一原子力発電所 南放水口付近 
  (2)福島第一原子力発電所 北放水口付近 
  (3)福島第一原子力発電所 取水口付近(港湾の出入口付近)
  (4)福島第一原子力発電所 沖合2km
  (5)大熊町 夫沢・熊川沖2km
  (6)双葉町 前田川沖2km
  (7)ALPS処理水放出口予定場所から北2km西0.5km
  (8)ALPS処理水放出口予定場所から北1km
  (9)ALPS処理水放出口予定場所から南1km

4.調査内容.

各調査測点において、海水(表層水、約185リットル)を採取。採取
した試料は、環境創造センターで、次の5項目について分析。
 (1)ガンマ線放出核種(セシウム137等)
 (2)トリチウム
 (3)放射性ストロンチウム
 (4)プルトニウム
 (5)全ベータ放射能

5.調査結果;2023.5.25 福島県放射線監視室
県では、福島第一原子力発電所の廃炉作業に伴う海域への影響を継
続的に監視 するため、海水のモニタリングを毎月実施しております。
令和4年度から、これまでの6測点に3測点を追加し、計9測点で
海水のモニ タリングを実施するとともに、海水中のトリチウム濃度
については、電解濃縮法 により検出下限値を下げた測定を実施して
います(9測点による測定及び電解濃縮 法による測定は 5月、8月、
11月、2月の四半期毎に実施)
【調査結果】
今回は福島第一原子力発電所周辺海域9測点における、海水のモニタ
リング結果。うち、海水中の放射性セシウムは4測点で事故前最大
値を上回ったが、告示濃度限度※1及び WHO 飲料水水質ガイドライ
ンを大幅に下回わる。 なお、海水中のトリチウム、放射性ストロン
チウム、プルトニウムは、全ての測点で事故前最大値を下回った。
海水中の全ベータ放射能は、事故前の測定値とほぼ同程度。


※1 東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び
 特定核燃料物質の防護に関する規則(周辺監視区域外等の濃度限
 度)
※2( )内は本調査における事故後の放射能濃度の範囲
※3 事故前のトリチウムの測定は減圧蒸留法による
※4 トリチウムの検出下限値は、減圧蒸留法が約 0.3~0.5 Bq/L、
 電解濃縮法が約 0.1 Bq/Lを目標値とする。
※トリチウム電解濃縮法:環境分析のためのトリチウム電解濃縮,
 J. Plasma Fusion Res. Vol.92, No.1 (2016)26-30 参考。
1.序論
環境中のトリチウムには天然に生成するトリチウムと人工的に生成
したトリチウムが存在する.天然に生成するトリチウムは大気上層
において,宇宙線起源の陽子や中性子と大気中の窒素原子や酸素原
子との核反応により,常に生 成されている.そのうち99%は水と
して空気中の水蒸 気,雨水,海水中に存在して自然界を循環してい
る.このように環境中のトリチウム濃度は放射壊変による減衰と,
大気上層からの供給がつりあって定常状態となっていた.しかし1
950‐60年代に行われた大気圏核実験により降水中トリチウム
濃度が増加し,1963~1964年のピーク時には定常レベルの
100倍を越える値が観測された 1963年の核 実験禁止条約以
降,降水中トリチウム濃度は年々減少した.核実験由来のトリチウ
ムは,水循環に伴い多くは海に移行するが,海には大量の水が存在
するので,核実験由来のトリチウムが海に移行しても濃度の増加は
わずかである.またトリチウムの壊変による減衰と海の希釈効果の
 め現在の日本における降水中トリチウム濃度はほぼ定常状態となり
年平均で約 0.4 Bq L-1まで下がっている.一方,地下水に涵養さ
れたトリチウムはその滞留時間がトリチウムの半減期よりきわめて
長い場合,放射壊変によりトリチウムはなくなってしまう.大気中
核実験が開始される以前の天然レベルの降水のトリチウム濃度,例
えば日本における環境トリチウム濃度は,1953年に神戸の降水
試料において 0.77Bq L-1との報告値がある.この当時の降水が地
下水として涵養された場合,その濃度はトリチウムの半減期にした
がって減衰し,2015年には約 0.02Bq L-1と見積もられる.こ
の核実験開始以前の降水が涵養された地下水のトリチウム濃度を定
量するにはこの値程度まで測定できる必要がある。

2.トリチウム測定
トリチウムは低エネルギーの線を放出する核種であるため、液体シ
ンチレーションカウンターで測定を行う.液体シンチレーションカ
ウンターは,蛍光試薬と界面活性剤を溶かした有機溶媒(液体シン
チレータ)に試料水を混合し,放射線の作用で発生した蛍光を光電
子増倍管で計測するものである.トリチウム濃度を測定する対象と
して河川水,湖水,雨水、海水等があり、これらの水試料に溶存し
ている不純物を蒸留して除き,液体シンチレータと混合後測定を行
う.環境試料を測定するには低バックグラウンドタイプの液体シン
チレーションカウンターを用いるが,代表的な機種 に,Quantulus
1220(PerkinElmer
)や LSC-LB7(HitachiAloka)等が挙げられる.Qu-
antulus 12
20では容量として 20mLの測定容器まで使用でき,LSC-LB7
では最大145 mL 容量の容器(Polyvial 145 SLD,Zinsser Analytic)を
用いた 測定が可能である. Quantulus 1220 の検出下限値は水試料
10 mLを1:1の 割合で液体シンチレータと混合して,1000分
計測した場合 0.6 Bq L-1であり,同様に LSC-LB7では供試料 50mL
計測時間1000分に対し 0.3Bq L-1と報告がある.これらの濃度
レベルは原子力施設稼働に伴う環境影響を把握するに は十分な感度
であるが,地下水,沿岸海水,及び夏季の降 水試料等の低トリチウ
ム濃度を示す試料では検出下限を下 回る。そのような低トリチウム
濃度を定量には,トリチウムの濃縮操作が必要であり,そのため行
う電解濃縮について以下に紹介する.

3.原理:
図1に電極上での水素発生のメカニズムを示す。 電極表面に付いた
水素イオン(オキソニウムイオン:H3O) が電子を受けて吸着水素
原子 になる(Volmer反応)。
      H3O +e→Had+H2O         (1)
この が結合して水素分子になる.その経路は次の2つが考えられて
いる.ひとつは別の H3Oが一電子還元を受けると同時に先に吸着し
ていたと結合する経路(b)である(Heyrovsky反応).もうひとつ
は2個のが電極表面で結合する経路(b')である(Tafel 反応).そ
れぞれ Volmer-Heyrovsky 反応(V-H 反応),Volmer-Tafel 反応(V
-T
反応)と呼ばれる.Tafel反応は近接する二原子水素 化物間の反応
である同位体効果が小さく,経路(a)→(b')の V-T反応ではTafel
反応が支配的となる.これに対し Heyrovsky 反応では同位体効果が
あり,経路(a)→(b)の V-H反応ではそれぞれの効果が相乗され
ると考えられる.どちらの経路になるかは電極素材と水素の結合の
強さで変わると考えられている.
水を電気分解すると以上のような反応を通して水素ガス と酸素ガス
が生成されるが,水素ガスになる際の反応速度 は H(1H)>D(2H)
>T(3H)の順に,軽い水素ほど早く電気分解が進み,試料水に残存
する試料中に含まれるトリチウムの量は多くなっていく.すなわち
水を電気分解すると,トリチウム水は分解されにくいので水中に濃
縮される.この現象を利用したものが電気濃縮法である.水を電気
分解したときの軽水素 H の反応速度定数と重水素Dの反応速度定数 
の比 ,およびトリチウム Tの反応速度定数 との比をその同位体の
分離係数およびと呼び,この値を用いて電解前のトリチウム濃度を
求めることができる。




したがって,安定同位体比質量分析計で電解前後の
を測定し、こ
の関係から電解前の(3H)濃度を求めることができる。

4.アルカリ電解電極
アルカリ溶液の電気分解システムを図2に示す.環境試料は蒸留し
て不純物除去後,過酸化ナトリウム(Na2O2)を 加えて水酸化ナト
リウム溶液とする.この溶液をガラス製の電解セルに入れて電気分
解を行う.この時-極に高い分離係数を与える素材を使用すること
で,より効率的にトリチウム濃縮を行うことができる.この時電極に
は陰極(-極)に鉄やニッケル,陽極(+極)にはニッケルが使用
される.また電気分解の温度が低いほど高い分離係数を示すので,
恒温槽で0~3℃に冷却して電気分解が行 われる.またこの冷却に
より蒸発の防止も行われる。


電解セルの構造は研究者により様々であるが,初期試料投入量を通
常 200 mL から 1 L としているものが多い.アルカリ電解は,電解
セルを直列に接続し,10~20本のセルを同時に操作する.一般に収率
をモニターするため2本のセルに既知濃度のトリチウムをスパイク
し,別の2本はコントロールとしてトリチウムの含まれていない水
を電解する.この時得られる濃縮率で試料中トリチウム濃度の算出を
行う.電解が進むに連れて溶液体積が減少し,トリチウムとともに
水酸化ナトリウムの濃縮も進む.体積の減少に反比例して電解質で
ある水酸化ナトリウム濃度が増加するため,電解濃縮前後の試料体
積比で10~20倍が濃縮の限界となる.液体シンチレーションカ
ウンターで測定するには溶液を中和して蒸留精製する必要がある.
この中和蒸留には二酸化炭素を通気して行う方法と,塩化鉛を加え
て 蒸留する方法がある。 この電解濃縮により液体シンチレーション
カウンターを単独で用いた場合に対しての検出下限値10~30倍下げ
ることができる.アルカリ電解では電気分解によって水素ガスと酸
素ガスが同時に発生するため,爆発の危険性が伴う.そのためこの
システムを運用するには水素,酸素ガスの排気システムや水素ガス
探知機等の安全装置を備えなければならない.また電極に鉄やニッ
ケルを使用するため,電解操作後に洗浄の必要がある。電極の洗浄
にはリン酸溶液や希塩酸を使用して,電解中に生じた水酸化物や酸
化物を取り除き,洗浄後速やかに乾燥させる必要がある。
以下、「電解濃縮方式の特徴」の説明文は割愛。
関連技術情報➲ Electrolytic Enrichment Technique of Tritium
 in Water for Environmental Analysis, J. Plasma Fusion Res. Vol.92, No.1
  (2016) 26-30 (4.環境分析のためのトリチウム電解濃縮-プラズマ核融
合学会),
                                     この項つづく


風蕭々と碧いの時代


John Lennon Imagine

J-POPの系譜を探る:2002年代


● 今夜の寸評:(いまを一声に託す)
                                 こころを耕すなむあみだぶつ
 Each time you chant nembutsu, your faith in Amida Buddha deepens.
                                                                                                浄土宗  月訓





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