2025年2月に見たい展覧会【DIC川村記念美術館 1990–2025/サルバドール・ダリ/おかえり、ヨコハマ】

2月は春に向けて多くの展覧会がはじまる時期です。今月に見たい展覧会をリストアップしました。



展覧会

・『恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージです―』 東京都写真美術館(1/31〜2/16)
・『川崎祐 わたしの知らない場所の名前』 横浜市民ギャラリーあざみ野(1/25~2/23)
・『HAPPYな日本美術―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ』 山種美術館(12/14~2025/2/24)
・『小西真奈 Wherever』 府中市美術館(12/14~2025/2/24)
・『LIFE SCAPER in SAITAMA ARTS THEATER』 彩の国さいたま芸術劇場(1/21~2/24)
・『読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー』 すみだ北斎美術館(12/18~2025/3/2)
・『瑞祥(ずいしょう)のかたち』 皇居三の丸尚蔵館(1/4~3/2)
・『開館記念展 Ⅱ 琳派から近代洋画へ―数寄者と芸術パトロン 即翁、酒井億尋』 荏原 畠山美術館(1/18~3/16)
・『生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った』 東京ステーションギャラリー(1/25~3/16)
・『企画展 花器のある風景』 泉屋博古館東京(1/26~3/16)
・『仏教美学 柳宗悦が見届けたもの』 日本民藝館(1/12~3/20)
・『ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965』 パナソニック汐留美術館(1/11~3/23)
・『武士の姿・武士の魂』 大倉集古館(1/28~3/23)
・『生誕190年記念 豊原国周』 太田記念美術館(2/1~3/26)
・『MOTアニュアル2024 こうふくのしま』 東京都現代美術館(12/14~2025/3/30)
・『坂本龍一 | 音を視る 時を聴く』 東京都現代美術館(12/21~2025/3/30)
・『円空仏』 三井記念美術館(2/1~3/30)
・『片桐石州の茶』 根津美術館(2/22~3/30)
・『DIC川村記念美術館 1990–2025 作品、建築、自然』 DIC川村記念美術館(2/8~3/31)
・『堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE』 PLAY! MUSEUM(1/22~4/6)
・『生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―』 横須賀美術館(2/8~4/6)
・『没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ』 サントリー美術館(2/15~4/13)
・『新版画—風景画の変遷』 川崎浮世絵ギャラリー(2/15~4/20)
・『近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は』 水戸芸術館現代美術ギャラリー(2/15~5/6)
・『メキシコへのまなざし』 埼玉県立近代美術館(2/1~5/11)
・『異端の奇才 ビアズリー展』 三菱一号館美術館(2/15~5/11)
・『1975 甦る 新橋 松岡美術館』 松岡美術館(2/25~6/1)
・『横浜美術館リニューアルオープン記念  おかえり、ヨコハマ』 横浜美術館(2/8~6/2)
・『マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート』 森美術館(2/13~6/8)
・『鷹野隆大 カスババ―この日常を生きのびるために―』 東京都写真美術館(2/27~6/8)

ギャラリー

・『Made in 青森 −自然と歴史の交差点』 OMOTESANDO CROSSING PARK(1/24〜2/24)
・『原田裕規個展 夢と影』 ANOMALY(2/1〜3/1)
・『坪本知恵、林樹里  うつろの疏水を眺めたとき』 YUKIKOMIZUTANI(2/8〜3/1)
・『トレヴァー・ヤン、毛利悠子 帰ってきたやまびこ』 Yutaka Kikutake Gallery Kyobashi(1/24~3/8)
・『ポーラ ミュージアム アネックス展 2025―軌跡ルーツを辿る―』 ポーラ ミュージアム アネックス(2/7〜3/9)
・『来たる世界2075 テクノロジーと崇高』 GYRE GALLERY(2/11〜3/16)
・『シュテファン・バルケンホール「good day」』 小山登美夫ギャラリー京橋(2/14〜3/22)
・『第1回 BUG Art Award グランプリ受賞者個展 向井ひかり「ザ・ネイムズ・オン・ザ・ビーチ」』 BUG(2/19〜3/23)
・『有楽町ウィンドウギャラリー2025』 丸の内仲通り付近の商業店舗8軒(2/28~3/23)
・『書藝問道 ブックデザイナー 呂敬人の軌跡』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(2/12~3/27)
・『嵯峨篤「Synchronicity」』 SCAI THE BATHHOUSE(1/25~4/5)

まずは佐倉での34年の活動に一定の区切りとなる展覧会です。DIC川村記念美術館にて『DIC川村記念美術館 1990–2025 作品、建築、自然』が行われます。



『DIC川村記念美術館 1990–2025 作品、建築、自然』@DIC川村記念美術館(2/8~3/31)

これは規模を大幅に縮小し、都内への移転が決まったDIC川村記念美術館による過去最多のコレクション展で、屋外の庭園と館内の全ての展示室を用いて、約180点の作品が展示されます。


「ロスコ・ルーム」をはじめとした世界的とも言える同館のコレクションを、作品に合わせて設計された展示室にてまとめて鑑賞できる最後の機会となります。

続いては生誕120周年を迎えた芸術家、サルバドール・ダリの回顧展です。横須賀美術館にて『生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―』が開催されます。



『生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―』@横須賀美術館(2/8~4/6)

ここでは世界屈指のダリ・コレクションを形成する諸橋近代美術館の所蔵品を中心に、ダリの生涯を追いつつ、特に渡米以降の活動も紹介するもので、油彩や素描、彫刻のほか、他のシュルレアリスムなど約120点の作品が展示されます。


昨年に諸橋近代美術館にてスタートし、大分県立美術館などでも行われた全国巡回展で、関東での開催は横須賀美術館のみとなります。

大規模改修工事を終え、昨年11月に一部開館していた横浜美術館が、この2月に全館オープンします。横浜美術館にて『横浜美術館リニューアルオープン記念  おかえり、ヨコハマ』が開かれます。



『横浜美術館リニューアルオープン記念  おかえり、ヨコハマ』@横浜美術館(2/8~6/2)


ここでは「横浜」をキーワードに、開港以前から2010年以降の作品までを展示するもので、同時開催のコレクション展では、休館中に収蔵された新たな作品も公開されます。

今月は先月見逃した展覧会を優先にしながら、無理のない範囲にて見ていきたいと思います。

しばらくブログは不定期での更新となります。それでは今月もどうぞよろしくお願いします。
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2025年1月に見たい展覧会【パウル・クレー展/大覚寺/古代エジプト】

年明け早々から注目したい展覧会が少なくありません。今月に気になる展覧会をリストアップしてみました。



展覧会

・『眠れよい子よ よい子の眠る/ところ』 神奈川県民ホールギャラリー(12/15〜2025/1/25)
・『博物館に初もうで』 東京国立博物館(1/2~1/26)
・「江戸メシ』 太田記念美術館(1/5~1/26)
・『へびの憩う空き地』 慶應義塾ミュージアム・コモンズ (1/9~2/7)
・『ひとを描く / ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて』 アーティゾン美術館(11/2~2025/2/9)
・『古筆切』 根津美術館(12/21~2025/2/9)
・『豊原国周展』 川崎浮世絵ギャラリー(1/5~2/9)
・『絵画のゆくえ2025』 SOMPO美術館(1/18~2/11)
・『川崎祐 わたしの知らない場所の名前』 横浜市民ギャラリーあざみ野(1/25~2/23)
・『特別展「鳥 ~ゲノム解析で解き明かす新しい鳥類の系統~」』 国立科学博物館(11/2~2025/2/24)
・『HAPPYな日本美術―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ』 山種美術館(12/14~2025/2/24)
・『小西真奈 Wherever』 府中市美術館(12/14~2025/2/24)
・『LIFE SCAPER in SAITAMA ARTS THEATER』 彩の国さいたま芸術劇場(1/21〜2/24)
・『読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー』 すみだ北斎美術館(12/18~2025/3/2)
・『瑞祥(ずいしょう)のかたち』 皇居三の丸尚蔵館(1/4~3/2)
・『パウル・クレー展』 愛知県美術館(1/18~3/16)
・『開館記念展 Ⅱ 琳派から近代洋画へ―数寄者と芸術パトロン 即翁、酒井億尋』 荏原 畠山美術館(1/18~3/16)
・『開創1150年記念 特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」 東京国立博物館(1/21~3/16)
・『生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った』 東京ステーションギャラリー(1/25~3/16)
・『企画展 花器のある風景』 泉屋博古館東京(1/26~3/16)
・『仏教美学 柳宗悦が見届けたもの』 日本民藝館(1/12~3/20)
・『ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965』 パナソニック汐留美術館(1/11~3/23)
・『今津景 タナ・アイル』 東京オペラシティ アートギャラリー(1/11~3/23)
・『はじまりの感覚』 アーツ前橋(1/25~3/23)
・『武士の姿・武士の魂』 大倉集古館(1/28~3/23)
・『MOTアニュアル2024 こうふくのしま』 東京都現代美術館(12/14~2025/3/30)
・『坂本龍一 | 音を視る 時を聴く』 東京都現代美術館(12/21~2025/3/30)
・『雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館』 ワタリウム美術館(12/21~2025/3/30)
・『堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE』 PLAY! MUSEUM(1/22~4/6)
・『ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト』 森アーツセンターギャラリー(1/25~4/6)
・『玉山拓郎』 豊田市美術館(1/18~5/18)

ギャラリー

・『美を疑え-資生堂クリエイティブ展-』 資生堂ギャラリー(1/11~1/26)
・『髙山陽介 個展「かえり」』 ANOMALY(12/14~2025/1/18)
・『ミスマルノタマ - 神聖幾何学 Flower of Life -』 GYRE GALLERY(12/7~2025/1/26)
・『倉田悟「あさをまつよる」』 小山登美夫ギャラリー京橋(12/20~2/1)
・『菊地敦己 グラフィックデザインのある空間』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(12/10~2025/2/1)
・『曽根裕|石器時代最後の夜「今日の3つの話」』 ミヅマアートギャラリー(1/15~2/15)
・『嵯峨篤「Synchronicity」』 SCAI THE BATHHOUSE(1/25~4/5)

まずは西洋美術です。『パウル・クレー展』が愛知県美術館にて開かれます。



『パウル・クレー展』@愛知県美術館(1/18~3/16)

これはスイスのパウル・クレー・センターとの学術協力のもと、各内外の美術館より50点以上の作品にてクレーの画業をたどるもので、あわせてカンディンスキーやマルクといったクレーと関わりのあった画家の作品も紹介されます。


クレーの大規模展といえば2011年に東京国立近代美術館でも開かれましたが、今回の全国3巡回(*)のクレー展においても画家の魅力に触れる良い機会となりそうです。*兵庫県立美術館(3月29日〜5月25日)、静岡市美術館(6月7日〜8月3日)にて開催予定。

続いては日本美術です。東京国立博物館にて特別展『旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-』が開催されます。



『開創1150年記念 特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」』@東京国立博物館(1/21~3/16)

ここでは大覚寺の開創1150年を迎えるに先立ち、同寺に伝わるさまざまな寺宝を公開するもので、狩野山楽の代表作として重要な障壁画のほか、歴代天皇の書や平安時代後期の明円作「五大明王像」などの密教美術の名品も紹介されます。


通常非公開の重要文化財「正寝殿(客殿)」のうち、歴代門跡の執務室であった「御冠の間」の再現展示や、清和源氏に継承された「兄弟刀」(大覚寺蔵:薄緑〈膝丸〉、北野天満宮蔵:鬼切丸〈髭切〉)が京都以外で初めて揃う展示などにも注目が集まりそうです。

ラストは古代エジプトに関する展覧会です。森アーツセンターギャラリーにて『ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト』が行われます。



『ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト』@森アーツセンターギャラリー(1/25~4/6)

これはアメリカ最大規模の古代エジプト美術コレクションを有するブルックリン博物館より、彫刻、棺、宝飾品、土器、パピルス、そして人間やネコのミイラなど約150点の考古遺物を紹介するもので、気鋭のエジプト考古学者で本展の監修を務める河江肖剰による最新のピラミッドの調査研究の成果も公開されます。


*静岡県立美術館(予定):2025年4月19日〜6月15日、豊田市博物館:2025年6月28日〜9月7日ほか各地へと巡回予定

Penオンラインに今年上半期に見ておきたい展覧会の情報について寄稿しました。


Penが選んだ、2025年上半期「必見の展覧会」5選|Pen Online

それでは今月もどうぞよろしくお願いいたします。
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謹賀新年 2025

新年あけましておめでとうございます。
今年も皆さまにとって素晴らしい一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。


『胆松に白蛇』 渓斎英泉筆 江戸時代・19世紀 東京国立博物館
出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-6310?locale=ja

年明けから東京と近郊で新たに開幕する展覧会は以下の通りです。(25日まで)

『博物館に初もうで』 東京国立博物館(1/2~1/26)
『瑞祥のかたち』 皇居三の丸尚蔵館(1/4〜3/2)
『江戸メシ』 太田記念美術館(1/5〜1/26)
『豊原国周展』 川崎浮世絵ギャラリー(1/5〜2/9)
『へびの憩う空き地』 慶應義塾ミュージアム・コモンズ(1/9〜2/7)
『ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965』 パナソニック汐留美術館(1/11〜3/23)
『今津景 タナ・アイル』 東京オペラシティ アートギャラリー (1/11〜3/23)
『仏教美学 柳宗悦が見届けたもの』 日本民藝館(1/12〜3/20)
『絵画のゆくえ2025』 SOMPO美術館(1/18〜2/11)
『開館記念展 Ⅱ 琳派から近代洋画へ―数寄者と芸術パトロン 即翁、酒井億尋』 荏原 畠山美術館(1/18〜3/16)
『開創1150年記念 特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」 東京国立博物館(1/21〜3/16)
『堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE』 PLAY! MUSEUM(1/22〜4/6)
『川崎祐 わたしの知らない場所の名前』 横浜市民ギャラリーあざみ野(1/25〜2/23)
『ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト』 森アーツセンターギャラリー(1/25〜4/6)

お正月はいかがお過ごしでしょうか。私は昨年末に体調を崩してしまいました。よってお休みの間はなるべく外出を控えて、来週以降から本格的に展覧会巡りをスタートできればと思っています。

今年もSNSやブログをはじめ、いくつかのメディアにて展覧会の情報などを発信していくつもりです。引き続きお付き合いくだされば幸いです。

それでは「はろるど」をどうぞよろしくお願いいたします。
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2024年 私が観た展覧会 ベスト10

年末恒例の私的ベスト企画です。2024年に観た展覧会のベスト10をあげてみました。

1.『空海 KŪKAI —密教のルーツとマンダラ世界』 奈良国立博物館(4/13~6/9)



密教の「立体曼荼羅」を多くの仏像や仏画で体感できるだけでなく、インドネシアなどに至る密教のルーツを検証しつつ、空海の足跡を丹念に辿っていた展覧会でした。空海自らが制作を指導した『両界曼荼羅』が修理後、初めてのお披露目となりましたが、見上げると繊細かつ流麗な線によって描かれた諸像が降り注ぐような感覚を受け、えも言えない感動を味わうことができました。また展示室を進むごとに密教のルーツに深く没入していくような、ストーリー性のある内容も面白く感じました。

2.『村上隆 もののけ 京都』 京都市京セラ美術館(2/3~9/1)



ふるさと納税のプランを活用したことでも話題を集めた、村上隆の国内では約8年ぶりの個展でした。岩佐又兵衛の『洛中洛外図(舟木本)』を引用し、新たに描きおろした現代版の「洛中洛外図」をはじめ、度々、大火事や旱魃などに見舞われた京都の歴史を現代に示したかのような『四神と六角螺旋堂』など、京都だけの「新・村上ワールド」とも呼べる世界を展開していて、必ずしも村上ファンとはいえない私でありながら、展示室に渦巻いた凄まじい熱量に身も心も飲み込まれました。

3.『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』 東京都現代美術館(8/3~11/10)



精神科医、高橋龍太郎の築いた日本の現代美術コレクションを紹介する展覧会で、3500点を超えるコレクションより選ばれた115組のアーティストの作品が公開されていました。過去、高橋コレクションは何度か公開されたこともあり、その都度見てきたつもりでしたが、特に東日本大震災以降にアップデートされた作品が想像以上に充実していて、東京都現代美術館を埋め尽くさんとばかりに展開するコレクションに圧倒されました。

4.『円空 —旅して、彫って、祈って—』 あべのハルカス美術館(2/2~4/7)



木端仏のような小さな彫刻から通常非公開の秘仏、2メートルを超える大作など約160点あまりの仏像が揃った、関西では約20年ぶりとなる大規模な円空展でした。また単に円空仏の魅力を紹介するだけでなく、絵画、文書、書籍、さらに円空自身が詠んだ和歌までを紹介していて、「円空さん」と親しまれた人となりについても明らかにしていました。荒々しいのノミの跡にたくましさをのぞかせながら、微笑みを浮かべた表情に優しさを見せる円空仏に改めて魅せられました。

5.『没後50年 福田平八郎』 大阪中之島美術館(3/9~5/6)



初期から晩年までの福田平八郎の画業を、代表作や所蔵館以外では初公開となる『雲』など120点の作品を通して明らかにする展覧会でした。「写実に基づく装飾画」を切り開きながらも、思いの外に変化する画風も興味深く、豊富なスケッチ類からは平八郎の対象へのユニークな眼差しを感じ取ることができました。元々、大好きな画家の一人だったこともあり、質量ともに不足のない回顧展が見られて大満足でした。

6.『山武市百年後芸術祭』 千葉県山武市 (4/27~5/19) 



今年千葉県にて実施された「百年後芸術祭」のうち、九⼗九⾥平野に位置する山武市にて行われた芸術祭で、JR成東駅を起点に九十九里浜へと至る地域にアート作品が展開されていました。広い空の下に点在する岩塊がユニークな景観を生み出す柴原エリアなど、いわば観光地化されていない、地元の人々だけが知りうるような野趣味のある土地に作品をぶつけていく、保良雄によるディレクションがとても魅力的に感じました。

7.『舟越桂 森へ行く日』 彫刻の森美術館(7/26~11/4)



今年3月、72歳にて亡くなった彫刻家の舟越桂の個展で、立体22点、平面35点などの作品を通し、人間の存在をテーマにしながら多様に変容を遂げていく舟越の制作を紹介していました。このほか、子どもの秘密基地を思わせるアトリエの再現や、『おもちゃのいいわけ』のためのおもちゃなども展示されていて、入院中にティッシュペーパー箱の裏に描いていたというイメージデッサンや、亡くなる数日前に自ら語った映像には胸を強く打たれました。

8.『生誕140年記念 石崎光瑤』 京都文化博物館(9/14~11/10)



富山に生まれ、京都へ移って創作を続けた日本画家、石崎光瑤の国内初の大規模巡回展でした。とりわけ色彩鮮やかで華麗ながらも、まるで熱帯の空気を帯びたようなエキゾチックともいえる花鳥画に強い個性を感じました。またより装飾性を帯びた金剛峯寺奥殿の襖絵や、晩年の静謐でかつはかない花の絵など、変遷する画風も追うことができて、豊富な写生帖などを含めて、画業を実に丹念に検証していたのも好印象でした。

9.『宮永愛子 詩を包む』 富山市ガラス美術館(2023/11/3~2024/1/28)



ナフタリンやガラスの彫刻などの作品で知られる宮永愛子の個展で、ナフタリンや樹脂を用いた代表作はもちろん、富山の水や空気などに着想を得たガラスの新作などを公開していました。富山の薬売りの歴史を連想させるトランクの作品や富山で採取した石や貝殻を用いた作品、また美術館のバックヤードにあった台座を引用したインスタレーションなど、2つのフロアに展開する宮永の作品の表情は意外なほど多面的でした。

10.『アレック・ソス 部屋についての部屋』 東京都写真美術館(10/10~2025/1/19)



アメリカの写真家、アレック・ソスの30年にわたる活動の軌跡を、ソスが初期から一貫して重要だと考えていた内部空間、つまり「部屋」をテーマに紹介する展覧会でした。各地を旅しては出会った人々を捉えるソスの写真は、静謐さと親密さを特徴として、必ずしも明確なメッセージはないものの、写り込んでいるさまざまなものから被写体の人となりが垣間見えるのも魅力に思えました。それぞれの写真の部屋が紡ぎ出す、詩的ともいえるような物語を連想するのも楽しく感じました。

次点.『淺井裕介展 星屑の子どもたち』 金津創作の森美術館(4/27~8/25)



ベスト10以外で特に印象に残った展覧会は以下の通りです。(順不同)

・『HAIBARA Art & Design 和紙がおりなす日本の美』 三鷹市美術ギャラリー(12/16~2024/2/25)
・『サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展』 千葉市美術館(1/6~3/3)
・『本阿弥光悦の大宇宙』 東京国立博物館(1/16~3/10)
・『マティス 自由なフォルム』 国立新美術館(2/14~5/27)
・『アブソリュート・チェアーズ』 埼玉県立近代美術館(2/17~5/12)
・『マツモト建築芸術祭 2024 ANNEX』 旧松本市立博物館ほか(2/23~3/24)
・『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?—国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ』 国立西洋美術館(3/12~5/12)
・『没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる』 東京都写真美術館(3/16~5/12)
・『第8回横浜トリエンナーレ 野草:いま、ここで⽣きてる』 ヨコハマトリエンナーレ(3/15~6/9)
・『北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画』 SOMPO美術館(3/23~6/9)
・『ホー・ツーニェン エージェントのA』 東京都現代美術館(4/6~7/7)
・『ブランクーシ 本質を象る』 アーティゾン美術館(3/30~7/7)
・『宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO』 東京オペラシティ アートギャラリー(4/11~6/16)
・『青山悟 刺繍少年フォーエバー』 目黒区美術館 (4/20~6/9)
・『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』 森美術館(4/24~9/1)
・『デ・キリコ展』 東京都美術館(4/27~8/29)
・『カルダー:そよぐ、感じる、日本』 麻布台ヒルズギャラリー(5/30~9/6)
・『石川九楊大全』 上野の森美術館(6/8~7/28)
・『内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙』 国立西洋美術館(6/11~8/25)
・『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』 SOMPO美術館(6/22~9/23)
・『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』 ポーラ美術館(6/8~12/1)
・『PROJECT UMINOUE「五十嵐靖晃 海風」』 千葉県立美術館(7/13~9/8)
・『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』 東京ステーションギャラリー(7/13~9/23)
・『須田国太郎の芸術―三つのまなざし』 世田谷美術館(7/13~9/8)
・『石田尚志 絵と窓の間』 神奈川県立近代美術館 葉山(7/13~9/28)
・『田名網敬一 記憶の冒険』 国立新美術館(8/7~11/11)
・『SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット』 ワタリウム美術館(8/12~12/8)
・『Nerhol 水平線を捲る』 千葉市美術館(9/6~11/4)
・『北アルプス国際芸術祭2024』 長野県大町市(9/13~11/4)
・『GO FOR KOGEI 2024』 富山県富山市、石川県金沢市(9/14~10/20)
・『没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―』 サントリー美術館(9/18~11/10)
・『田中一村展 奄美の光 魂の絵画』 東京都美術館(9/19~12/1)
・『挂甲の武人 国宝指定50周年記念  特別展「はにわ」』 東京国立博物館(10/16~12/8)
・『ハニワと土偶の近代』 東京国立近代美術館(10/1~12/22)
・『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』 市原湖畔美術館(10/19~2025/1/13)
・『モネ 睡蓮のとき』 国立西洋美術館(10/5~2025/2/11)
・『ベル・エポック ― 美しき時代展』 パナソニック汐留美術館(10/5~12/15)
・『ONE PIECE ONLY展』 PLAY! MUSEUM(10/9~2025/1/31)
・『オタケ・インパクト』 泉屋博古館東京(10/19~12/15)
・『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』 市原湖畔美術館(10/19~2025/1/13)
・『没後100年 中村彝展―アトリエから世界へ』 茨城県立近代美術館(11/10~2025/1/13)
・『浅井忠、あちこちに行く-むすばれる人、つながる時代―』 千葉県立美術館(10/30~2015/1/19)
・『須田悦弘展』 渋谷区立松濤美術館(11/30~2025/2/2)
・『ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉』 千葉市美術館(11/16~2025/1/13)
・『ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ』 森美術館(9/25~2025/1/19)

たくさんの展覧会をあげてしまいましたが、今年はライターとしてお声がけいただき、東京以外の地域の芸術祭や美術館へ取材できたのも良い思い出となりました。



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この一年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。このエントリをもちまして年内のブログの更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうぞ良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
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『アレック・ソス 部屋についての部屋』 東京都写真美術館

東京都写真美術館
『アレック・ソス 部屋についての部屋』
2024/10/19~2025/1/19



アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスに生まれ、現在も同地で活動を続ける写真家、アレック・ソス(1969年〜)の展覧会が、東京都写真美術館にて開かれています。

今回の個展ではソスが初期より一貫して捉えてきた室内空間、つまり部屋をテーマに約30年にわたる活動を振り返っていて、室内でのポートレイトを中心とした作品が6つの部屋に分けて展示されていました。



アメリカ国内を旅しながら撮影を行ってきたソスは、初期の「Sleeping by the Mississippi」のシリーズにおいてミシシッピ川流域のに住む人々に取材していて、いずれも部屋の中で真っ直ぐレンズに向き合う人が写し出されていました。



1990年代後半に撮影されたモノクロの「Looking for Love」とは、まだ20代半ばだったソスが、地域のバーで出会った人やダンスパーティーなどを撮影したシリーズで、中には結婚式の後に自らの姿を写したセルフポートレイトも見ることができました。



アメリカの詩人ウォレス・スティーヴンスの詩「灰色の部屋」の一節からタイトルをつけた「I Know How Furiously Your Heart is Beating」は、ソスのキャリアにとって一つの転換点ともなった作品で、静謐な室内空間における被写体から醸し出される親密さを魅力としていました。



2015年に東京・新宿のパークハイアットに滞在した際に手がけた作品は、同ホテルを舞台にした映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)に着想を得ていて、いずれもソスがネットで検索して招いた呼んだ茶道家やアイドルグループらをホテルの室内にて撮影していました。



「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」 アレック・ソス

一つとして同じ室内空間のない作品を見ていると、ソスが旅して出会った人々が持つ無数の物語が浮かび上がってくるような気持ちにさせられるかもしれません。


アレック・ソスの写真がつむぐ、さまざまな部屋に息づく物語。東京都写真美術館にて展覧会が開催中!|Pen Online

「TOPのお正月2025」の開催に伴い、2025年1月2日と3日は無料で観覧することができます。



2025年1月19日まで開催されています。*写真はすべて『アレック・ソス 部屋についての部屋』展示作品

『アレック・ソス 部屋についての部屋』 東京都写真美術館@topmuseum
会期:2024年10月19日(木)~2025年1月19日(日)
休館:月曜日。
 *月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館
 *年末年始(12/29〜1/1)
時間:10:00~18:00
 *木・金曜日は20時まで。ただし7/20〜8/31の木・金は21時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般800(640)円、学生640(510)円、中高生・65歳以上400(320)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *1月2日(木)、3日(金)は無料
場所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
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