「アイヌの美しき手仕事」 日本民藝館

日本民藝館
「アイヌの美しき手仕事」 
2020/9/15~11/23



日本民藝館で行われている「アイヌの美しき手仕事」を見てきました。

アイヌの文化に敬意を払い、工芸に魅せられた日本民藝館の創設者の柳宗悦は、1941年に美術館として初めてアイヌ工芸展となる「アイヌ工藝文化展」を開催しました。

これは当時、商業図案家として成功を収めていた杉山寿栄男のアイヌ工芸コレクションを紹介したもので、染織から木工品、首飾りや楽器など約600点もの作品が公開され、会期が延長されるほど人気を博しました。

残念ながら杉山のコレクションは第二次世界大戦の空襲により焼失してしまいましたが、柳は自らもアイヌの工芸品を収集し、日本民藝館へ約200点の作品を納めました。

その柳の収集品、及び「アイヌ工藝文化展」で選品を担当した芹沢けい介のアイヌコレクションを紹介するのが「アイヌの美しき手仕事」で、玄関回廊から本館大展示室へと至るスペースに約200点の作品が展示されていました。



最大の見どころは、1941年の「アイヌ工藝文化展」の一部再現展示と言えるかもしれません。本館大展示室の最奥部では、壁面に様々な紋様の施されたアイヌの衣装が刀掛け帯と並んで掲げられ、下のケースにはガラス玉を連ねた色とりどりの首飾りやマキリと呼ばれる小刀、それに神(カムイ)に祈る際に用いられる儀礼具イクパスイなどが並んでいました。



それぞれの作品は互いに響き合っていて、特に衣装や刀掛け帯の展示は、全体が一つの造形美を見せているように思えました。このように1941年の展示では、かつて民俗的資料と受け止められていたアイヌの工芸を、「美の対象」(解説より)として評価したことに重要な意味を持つとされています。(再現展示の壁面のみ撮影可)



私が今回の展覧会で特に魅せられたのは木工品、とりわけイクパスイでした。ヘラ状の上部の表面には線刻とも言えるような装飾が力強く彫り込まれていて、作り手の魂を感じるかのようでした。なおアイヌの制作した後、いわゆる和人が漆を塗った作品もあるそうです。

また端的に衣装と言えども、樹皮や草皮、木綿、はたまた魚皮を縫い合わせたものと様々で、模様のパターンも多岐にわたっていました。

少なくとも都内でこれほどアイヌの工芸品を見られる機会はあまりないかもしれません。改めて強く魅せられるものを感じました。


新型コロナウイルス感染症対策に関する情報です。マスクの着用、手指の消毒が行われる他、西館の公開と団体見学を中止しています。また接触防止の観点から、スリッパではなく使い捨てのシューズカバーが用意されていました。さらに混雑時は状況に応じて入場制限を行う場合があるそうです。お出かけの際はご注意下さい。



なお日本民藝館は改修工事のため、本展を終えると2021年3月末まで休館します。

11月23日まで開催されています。おすすめします。

「アイヌの美しき手仕事」 日本民藝館
会期: 2020年9月15日(火)~11月23日(月・祝)
休館:月曜日。但し祝日の場合は開館し翌日休館。
時間:10:00~17:00。 *入館は16時半まで
料金:一般1100円、大学・高校生600円、中学・小学生200円。
 *団体見学は当面中止。
住所:目黒区駒場4-3-33
交通:京王井の頭線駒場東大前駅西口から徒歩7分。駐車場(3台分)あり。
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