都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「佐藤可士和展」 国立新美術館
国立新美術館
「佐藤可士和展」
2021/2/3~5/10
1965年に生まれたクリエイティブデザイナーの佐藤可士和は、ユニクロやセブンイレブンなどのブランドクリエイティブディレクションを手掛けたほか、近年は日清食品関西工場といった大規模な建築プロジェクトに参加して幅広く活動してきました。
その佐藤自らがキュレーションを行い、約50件にも及ぶ各種プロジェクトを紹介する展覧会が、国立新美術館にて開催されています。
「ADVERTISING AND BEYOND」展示風景
まず「ADVERTISING AND BEYOND」では、Mr.ChildrenやMy Little LoverといったCDジャケットからPARCOのポスター、それにユニクロのショッピングバックやビールの「極生/生黒」のパッケージデザインなどが紹介されていて、とりわけ屋外ポスターに至っては発表時の巨大なスケールで展示されていました。
いずれも佐藤が広告代理店にてアートディレクターとして活動し、後にクリエイティヴスタジオ「SAMURAI」として独立した1990年代から2000年代にかけてのプロジェクトで、誰もが一度は目にしたことのあるようなデザインばかりでした。
当時、テレビやラジオ、そして新聞に雑誌が広告の主軸とされる中、佐藤は人が見るもの全てが有効なメディアになりうると考えていて、広告デザインのあり方そのものを刷新させました。
「THE LOGO」展示風景
それに続くのが佐藤が制作したロゴを紹介する「THE LOGO」でした。ここで面白いのは佐藤の趣向により、ロゴを巨大なオブジェとして見せていることで、もはやロゴによる一大インスタレーションというべき空間が広がっていました。
それらのロゴは楽天やユニクロ、セブンプレミアムなどの見慣れたものばかりで、「ADVERTISING AND BEYOND」での作品しかり、いかに日常の生活が佐藤のデザインに囲まれているのかがひしひしと感じられました。多かれ少なかれ佐藤のデザインは、日本に住む大勢の人々の暮らしに根差しつつあると言えるかもしれません。
「ロゴの設計図」
またこうした一連の巨大ロゴと合わせて10種類の詳細な設計図も展示されていて、どのようにロゴが作られているかの一端を伺うこともできました。オブジェとしてのロゴとはまた異なった印象を見せていて、あたかも緻密な集積回路を目の当たりにしているかのようでした。
企業や教育機関、さらに文化施設や地域産業など、多様なジャンルのブランディングのプロジェクトを紹介する「ICONIC BRANDING PROJECTS」も圧巻の内容だったのではないでしょうか。
「ICONIC BRANDING PROJECTS」(セブンイレブン)展示風景
そのうちセブンイレブンでは、オリジナル商品のパッケージデザインが床から天井付近までを埋め尽くすように展示されていて、膨大な商品の中へと飲み込まれるような感覚に陥りました。佐藤は棚一面に商品が並んだ状況を想定しながらデザインを考案していて、1つ1つのパッケージこそシンプルながらも、全体で揃うとセブンイレブンのデザインとして強く主張しているようにも感じられました。
それらは食品、酒、日用品、はたまたカウンターコーヒーのマシンなど多岐にわたっていて、実際にコンビニの店頭で手にとったものも1つや2つではありませんでした。
「ICONIC BRANDING PROJECTS」(カップヌードルミュージアム)展示風景
2011年に開館した「カップヌードルミュージアム」の総合プロデュースも佐藤が手掛けていて、会場では日清食品のブランディングをテーマとするインスタレーションを公開していました。
そこでは創業者の安藤百福を主人公とするアニメーションから商品企画、さらに工場の見学施設のプロデュースまでを行っていて、カップヌードルなどの商品の形をした名刺なども並んでいました。
「今治タオル ブランディングプロジェクト」
この他ではくら寿司や今治タオルのブランディングも目立っていたかもしれません。さらにスペースブランディングとしてユニクロの店舗やヤンマーミュージアムなどに関するパネル展示もありました。
「LINES / FLOW」展示風景
ラストは佐藤の2つのアートワーク、「LINES」と「FLOW」を対比したインスタレーションが公開していて、岩絵具を使ったドローイングや有田焼の陶板作品が並んでいました。
いずれも依頼者の存在するデザインの仕事とは別に制作した作品で、いわばアーティストとしての佐藤の一側面を知ることができました。
「佐藤可士和」 1975年(小学校5年生の時に制作)
こうした一連のデザインとともに、私が強く印象に残ったのは一枚の小さな色紙である「佐藤可士和」と題したコラージュでした。これは1975年、当時小学校5年生だった佐藤が手掛けた作品で、早くも現在のロゴタイプの片鱗を伺わせる面がありました。佐藤は子どもの頃から漫画の表紙やロゴ、それに標識が好きだったそうですが、ここにデザイナーとして持ち得えていた天賦の才すら表れているかもしれません。
ユニクロのTシャツブランド「UT」の販売コーナーも壮観だったのではないでしょうか。なお佐藤は個展の開催に際し、巨大な倉庫を借り上げ、展示空間と同寸の壁を立ててプランを練るほどに力を入れていて、デザイナーとして表現を生み出すことに対する執念すら感じられました。
新型コロナウイルス感染予防の観点より、オンラインでの事前予約制が導入されました。但し会期中はチケットブースにて当日有効のチケットも販売されています。
「ICONIC BRANDING PROJECTS」展示風景
私は平日の夕方に出向いたために混雑していませんでしたが、既に土曜、日曜、祝日の午後の時間帯において、当日券の予約枚数が終了している場合があるそうです。
「楽天 UNLIMITED SPACE」
今後、会期中盤以降は混み合い、事前予約分でチケットが売り切れになる可能性も考えられます。最新の情報は同展の公式アカウント(@kashiwasato2020)をご覧ください。
一部を除き、撮影も可能でした。5月10日まで開催されています。
「佐藤可士和展」(@kashiwasato2020) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2021年2月3日(水)~5月10日(月)
休館:火曜日。但し2月23日(火・祝)、5月4日(火・祝)は開館。2月24日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
*当面の間は夜間開館を休止。
料金:一般1700円、大学生1200円。高校生800円。中学生以下無料。
*団体券の発売は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
「佐藤可士和展」
2021/2/3~5/10
1965年に生まれたクリエイティブデザイナーの佐藤可士和は、ユニクロやセブンイレブンなどのブランドクリエイティブディレクションを手掛けたほか、近年は日清食品関西工場といった大規模な建築プロジェクトに参加して幅広く活動してきました。
その佐藤自らがキュレーションを行い、約50件にも及ぶ各種プロジェクトを紹介する展覧会が、国立新美術館にて開催されています。
「ADVERTISING AND BEYOND」展示風景
まず「ADVERTISING AND BEYOND」では、Mr.ChildrenやMy Little LoverといったCDジャケットからPARCOのポスター、それにユニクロのショッピングバックやビールの「極生/生黒」のパッケージデザインなどが紹介されていて、とりわけ屋外ポスターに至っては発表時の巨大なスケールで展示されていました。
いずれも佐藤が広告代理店にてアートディレクターとして活動し、後にクリエイティヴスタジオ「SAMURAI」として独立した1990年代から2000年代にかけてのプロジェクトで、誰もが一度は目にしたことのあるようなデザインばかりでした。
当時、テレビやラジオ、そして新聞に雑誌が広告の主軸とされる中、佐藤は人が見るもの全てが有効なメディアになりうると考えていて、広告デザインのあり方そのものを刷新させました。
「THE LOGO」展示風景
それに続くのが佐藤が制作したロゴを紹介する「THE LOGO」でした。ここで面白いのは佐藤の趣向により、ロゴを巨大なオブジェとして見せていることで、もはやロゴによる一大インスタレーションというべき空間が広がっていました。
それらのロゴは楽天やユニクロ、セブンプレミアムなどの見慣れたものばかりで、「ADVERTISING AND BEYOND」での作品しかり、いかに日常の生活が佐藤のデザインに囲まれているのかがひしひしと感じられました。多かれ少なかれ佐藤のデザインは、日本に住む大勢の人々の暮らしに根差しつつあると言えるかもしれません。
「ロゴの設計図」
またこうした一連の巨大ロゴと合わせて10種類の詳細な設計図も展示されていて、どのようにロゴが作られているかの一端を伺うこともできました。オブジェとしてのロゴとはまた異なった印象を見せていて、あたかも緻密な集積回路を目の当たりにしているかのようでした。
企業や教育機関、さらに文化施設や地域産業など、多様なジャンルのブランディングのプロジェクトを紹介する「ICONIC BRANDING PROJECTS」も圧巻の内容だったのではないでしょうか。
「ICONIC BRANDING PROJECTS」(セブンイレブン)展示風景
そのうちセブンイレブンでは、オリジナル商品のパッケージデザインが床から天井付近までを埋め尽くすように展示されていて、膨大な商品の中へと飲み込まれるような感覚に陥りました。佐藤は棚一面に商品が並んだ状況を想定しながらデザインを考案していて、1つ1つのパッケージこそシンプルながらも、全体で揃うとセブンイレブンのデザインとして強く主張しているようにも感じられました。
それらは食品、酒、日用品、はたまたカウンターコーヒーのマシンなど多岐にわたっていて、実際にコンビニの店頭で手にとったものも1つや2つではありませんでした。
「ICONIC BRANDING PROJECTS」(カップヌードルミュージアム)展示風景
2011年に開館した「カップヌードルミュージアム」の総合プロデュースも佐藤が手掛けていて、会場では日清食品のブランディングをテーマとするインスタレーションを公開していました。
そこでは創業者の安藤百福を主人公とするアニメーションから商品企画、さらに工場の見学施設のプロデュースまでを行っていて、カップヌードルなどの商品の形をした名刺なども並んでいました。
「今治タオル ブランディングプロジェクト」
この他ではくら寿司や今治タオルのブランディングも目立っていたかもしれません。さらにスペースブランディングとしてユニクロの店舗やヤンマーミュージアムなどに関するパネル展示もありました。
「LINES / FLOW」展示風景
ラストは佐藤の2つのアートワーク、「LINES」と「FLOW」を対比したインスタレーションが公開していて、岩絵具を使ったドローイングや有田焼の陶板作品が並んでいました。
いずれも依頼者の存在するデザインの仕事とは別に制作した作品で、いわばアーティストとしての佐藤の一側面を知ることができました。
「佐藤可士和」 1975年(小学校5年生の時に制作)
こうした一連のデザインとともに、私が強く印象に残ったのは一枚の小さな色紙である「佐藤可士和」と題したコラージュでした。これは1975年、当時小学校5年生だった佐藤が手掛けた作品で、早くも現在のロゴタイプの片鱗を伺わせる面がありました。佐藤は子どもの頃から漫画の表紙やロゴ、それに標識が好きだったそうですが、ここにデザイナーとして持ち得えていた天賦の才すら表れているかもしれません。
ユニクロのTシャツブランド「UT」の販売コーナーも壮観だったのではないでしょうか。なお佐藤は個展の開催に際し、巨大な倉庫を借り上げ、展示空間と同寸の壁を立ててプランを練るほどに力を入れていて、デザイナーとして表現を生み出すことに対する執念すら感じられました。
新型コロナウイルス感染予防の観点より、オンラインでの事前予約制が導入されました。但し会期中はチケットブースにて当日有効のチケットも販売されています。
「ICONIC BRANDING PROJECTS」展示風景
私は平日の夕方に出向いたために混雑していませんでしたが、既に土曜、日曜、祝日の午後の時間帯において、当日券の予約枚数が終了している場合があるそうです。
「楽天 UNLIMITED SPACE」
今後、会期中盤以降は混み合い、事前予約分でチケットが売り切れになる可能性も考えられます。最新の情報は同展の公式アカウント(@kashiwasato2020)をご覧ください。
土曜日、日曜日、祝日の14時~16時の時間帯は、ご来館時に当日券の予定枚数が終了している可能性があります。土日祝日のご来館は日時指定券の事前購入をお勧めいたします。日時指定券は現在3月31日分まで販売しております。https://t.co/K2eIL0qwBd#佐藤可士和展チケット情報
— 佐藤可士和展 (@kashiwasato2020) February 22, 2021
一部を除き、撮影も可能でした。5月10日まで開催されています。
「佐藤可士和展」(@kashiwasato2020) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2021年2月3日(水)~5月10日(月)
休館:火曜日。但し2月23日(火・祝)、5月4日(火・祝)は開館。2月24日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
*当面の間は夜間開館を休止。
料金:一般1700円、大学生1200円。高校生800円。中学生以下無料。
*団体券の発売は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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