南山城の古刹をめぐる~岩船寺と浄瑠璃寺

お茶の産地として知られる京都府南部の南山城地域には、古くより数々のお寺が営まれる仏教の聖地でもありました。



奈良国立博物館にて開かれている『聖地 南山城―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝』を鑑賞したのち、近鉄奈良駅へと向かったのはお昼過ぎの12時半頃のことでした。

現在、奈良交通では『聖地 南山城』の開催に合わせて、10月1日までの土日祝日に限り、奈良市中心部と南山城の古寺を結ぶ観光ループバス「お茶の京都 木津川古寺巡礼バス」を運行しています。

近鉄奈良駅を13時過ぎに出発したバスは、途中の停留所をすべて通過し、浄瑠璃寺を目指して走りました。奈良の市街地を抜け、山に囲まれた道を進むと、まず浄瑠璃寺バス停、続いて終点の岩船寺バス停に辿り着きました。奈良からの所要時間はおおむね30分ほどでした。



729年に創立された岩船寺は、隆盛と衰退を繰り返しながら、鎌倉時代から江戸末期まで南都興福寺一条院の末寺として活動したのち、明治に入ると真言律宗西大寺の末寺に入りました。今では梅雨に咲く紫陽花をはじめとした、四季折々の花を楽しめるお寺として知られています。



山門を抜けると、右に本堂、正面に阿字池が広がり、左手に十三重石塔、さらに奥に三重塔が建っていました。このうち9世紀頃の宝塔に由来する三重塔は、1442年の刻銘が残されていることから室町時代の建立と推定され、重要文化財に指定されています。



境内を一通り見学したのちは、本堂に安置された仏像を拝観することにしました。まず中央には平安時代の阿弥陀如来坐像があり、四隅には鎌倉時代の四天王像が立っていました。とりわけ像高3メートルの阿弥陀如来坐像は慈悲深い表情を見せていて、その佇まいに心惹かれるものを感じました。また普賢菩薩騎象像は『聖地 南山城』展に出展中でしたが、それゆえに普段拝観できない厨子の内側を見ることもできました。



この岩船寺から浄瑠璃寺へは「石仏の道」として徒歩50分ほどで行くことができますが、この日は雷鳴も轟く不安定な天気だっため、ちょうどやってきた木津川市のコミュニティバスに乗り、浄瑠璃寺へと向いました。



1047年に創建されたと伝わる真言律宗の浄瑠璃寺は、12世紀に九体阿弥陀堂が造られると庭園が整備され、12世紀の末には三重塔が京都より移設されると、現在に至るまでの伽藍が築かれました。



浄瑠璃寺の伽藍は池を中央にして、東に薬師如来を祀る三重塔があり、西に九体阿弥陀像を安置する本堂が位置していて、それぞれ此岸と彼岸の世界を表していました。



5年に及ぶ保存修理を終えた九体阿弥陀像のうち2躯は、『聖地 南山城』にて公開中のため、本堂では7駆が並んでいましたが、他で見ることの叶わない光景は極めて独特ではないでしょうか。浄瑠璃寺へは過去、修理に入る前の2015年に一度出向いたことがありましたが、改めて圧倒されました。



しばらく本堂にて阿弥陀如来の前に座っていましたが、博物館の明るい照明とは異なり、ほぼ自然光のみの薄暗がりの中に浮かび上がる金色の光も趣深いものが感じられました。また西陽が堂内へわずかに差し込むと、金色の輝きが俄かに増す様子にも心を奪われました。




今回は海住山寺など他のお寺までを拝観できませんでしたが、『聖地 南山城』展をきっかけに、南山城のお寺まで足を伸ばすのも良いかもしれません。

「真言律宗 高雄山 岩船寺」
開門時間:8:30~17:00
拝観料:大人500円。
住所:京都府木津川市加茂町岩船上ノ門43
交通:JR線加茂駅から「木津川市コミュニティバス」にて約16分。JR線、近鉄奈良駅より奈良交通「お茶の京都 木津川古寺巡礼バス」バスにて約35分。*季節限定運行

「真言律宗 小田原山 浄瑠璃寺」
開門時間:9:00~17:00
 *本堂受付は16:30まで。
拝観料:大人400円。
住所:京都府木津川市加茂町西小札場40
交通:JR線加茂駅から「木津川市コミュニティバス」にて約22分。JR線、近鉄奈良駅より奈良交通「お茶の京都 木津川古寺巡礼バス」バスにて約30分。*季節限定運行
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