『おいしいボタニカル・アート』 SOMPO美術館

SOMPO美術館
『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』
2022/11/5~2023/1/15



SOMPO美術館で開催中の『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』を見てきました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

古代ギリシアにさかのぼり、18世紀から19世紀にはイギリスをはじめ、ヨーロッパ各地で盛んに描かれたボタニカル・アートには、多くの食にまつわる植物もモチーフとして取り上げられました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

そうしたボタニカル・アートからイギリスの食文化を紹介するのが『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』で、ロンドンのキュー王立植物園の協力のもと、食用の植物を描いた作品などが公開されていました。

まずプロローグではボタニカル・アートに先立ち、食にまつわる絵画などが並んでいて、とりわけ繊細なタッチと瑞々しい水彩にてひまわりの咲く野を描いたジョージ・サミュエル・エルグッドの『ヒマワリ』に心を引かれました。

それに続くのがジャガイモやトウモロコシ、それにトマトといった野菜のボタニカル・アートで、単に作品を並べるだけでなく、それぞれの野菜がどのような経緯を辿ってイギリスへと入り、また食されていったのかについても細かに説明していました。

そのうち南アメリカのアステカを原産とするジャガイモは、16世紀にスペインを介して伝わったものの、芽や茎や葉に有毒な成分が含まれていることが周知されず、多くの食中毒を引き起こしてしまいました。そのために人々に忌避されてしまい、普及には長い時間がかかりました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

ロンドン園芸協会のお抱えの画家である、ウィリアム・フッカーの代表作『ポモナ・ロンディネンシス』が魅惑的と言えるかもしれません。「ロンドンの果物」を意味する同連作は、リンゴやモモなどの果物を植物学的に正確にでかつ生き生きと描いていて、まさに「おいしいボタニカル・アート」と呼べるような表現を見ることができました。


18世紀末から19世紀初頭のティー・セッティング 中期ジョージ王朝様式から摂政様式

茶やコーヒー、またチョコレートや砂糖、それにアルコールにまつわるボタニカル・アートも充実していて、茶やコーヒーに関しては食卓を飾るティー・セットなどもあわせて展示されていました。ミントンやウェッジウッドといった器好きにも嬉しい内容と言えるかもしれません。


アーツ・アンド・クラフツ運動の時代の喫茶文化

ボタニカル・アートそのものの展示は珍しいことではないかもしれませんが、食にテーマを絞り、そこからイギリスの歴史や文化を引き出した好企画ではないでしょうか。海外より多くの植物がもたらされ、それが食材としてイギリスの人々に食されるプロセスを知ることができました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

イロハニアートにも展示の見どころについて寄稿しました。

おいしいボタニカル・アート | 見どころは? | イロハニアート


ヴィクトリア朝のダイニング・テーブル・セッティング

一部の展示スペース、作品の撮影も可能です。


2023年1月15日まで開催されています。

『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』 SOMPO美術館@sompomuseum
会期:2022年11月5日(土)~2023年1月15日(日)
休館:月曜日。但し1月9日は開館。12月29日~1月4日は休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1600)円、大学生1000(1100)円、高校生以下無料。
 ※( )内は電子チケット「アソビュー!」での事前購入料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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