都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」 東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」
2020/10/17~2021/1/12
東京都庭園美術館にて開催中の「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」を見てきました。
今回出展したのは、青木美歌、淺井裕介、加藤泉、康夏奈、小林正人、佐々木愛、 志村信裕、山口啓介の8名のアーティストで、「人間と自然の関係性」をテーマに、絵画や彫刻、インスタレーションなどの多様な作品を公開していました。
淺井裕介「混血ーその島にはまだ言葉がありませんでした」 2019〜2020年
まず本館の大広間で目立っていたのが、土を用いた泥絵などを制作する淺井裕介の「混血ーその島にはまだ言葉がありませんでした」でした。少年や鹿に似た動物、はたまた草花や装飾的なモチーフが壁一面に広がっていて、それこそ森羅万象の生態系が描かれているかのようでした。
淺井裕介「頭上の森」 2020年
土はもちろん、赤ペンキや墨、またアクリル以外に、近年取り組んでいるという鹿の血も絵具として用いていました。また淺井は蝦夷鹿の頭骨や角を使った「頭上の森」などの立体も展示していました。いずれも角の先に動物の装飾が施されていて、未知の生き物として生まれ変わったかのようでした。
山口啓介「香水塔と花箱」 2020年
白磁の香水塔のある次室と大客室に展開した、山口啓介の「香水塔と花箱」も美しいかもしれません。
山口啓介「香水塔と花箱」 2020年
ここではドライフラワーや造花、また種子などを天然樹脂で固めた「カセットプラント」と呼ばれる作品が並んでいて、一部は窓の外から淡く色とりどりの光を室内へと写し込んでいました。
山口啓介「花波ガラス」 2020年
さらに山口は本館と新館をつなぐスペースに「花波ガラス」を展示していて、透明の小箱に入れられた自然の花と造花が美しいグラデーションを描いていました。花の向こうに屋外の庭園の緑が重なって映るのも良かったかもしれません。
加藤泉 展示風景
円形の窓から庭園を望む大食堂に作品を展示していたのは、胎児のような人型の彫刻や絵画で知られた加藤泉でした。
加藤泉 展示風景
ちょうど手足を広げて浮遊するような彫刻や、男女の肖像のような絵画が並んでいて、いずれもシュールでかつコミカルな表情を見せていました。その様子からは、あたかもアール・デコの空間を楽しんでいる住人のようにも思えました。
加藤泉「無題」 2020年
この他にも市松模様の大理石の敷かれたベランダをはじめ、大きな金庫のある小部屋にも隠れるように作品を置いていました。とりわけ後者はまるで金庫から飛び出してきたような仕草をしていて、愛おしくさえ映りました。
加藤泉「無題」 2020年
今回の展覧会の中で最もアール・デコの空間に映えていたのは加藤の作品だったのではないでしょうか。かくれんぼうならぬ作品を探して歩く面白さも感じられるかもしれません。
佐々木愛「鏡の中の庭園」 2020年
漆喰を用いて自然の景色を彫刻として表現した、佐々木愛の作品にも魅せられました。そのうち「鏡の中の庭園」では、丸い円盤状の支持体へ草花や蝶を線描のように刻み込んでいて、カーテン越しの柔らかい光を受けていました。
佐々木愛「鳥たちが見た夢」(部分) 2020年
「鳥たちが見た夢」も同様の漆喰の作品で、草花や鳥の繊細な模様があたかもカーテンのレースのように広がっていました。
小林正人「名もなき馬」 2014年
さらに本館では床置きした絵画を描いた小林正人や、自然のランドスケープを立体に表現したような康夏奈の作品も目を引きました。
「生命の庭」 新館ギャラリー1 展示風景
一方の新館では、広いホワイトキューブを活かして、山口啓介や小林正人が比較的サイズの大きな絵画を展示していました。
また山口は絵画の他に、東日本大震災以降ひたすら原発に関するニュースを記す日記「震災後ノート」も公開していて、まさに現在のコロナ禍などについても事細かに記述していました。
青木美歌 展示風景(本館部分)
さらにギャラリー2では、ミクロのウイルスなどを連想させるガラス彫刻を制作する青木美歌が、それこそ宝石の煌めきを思わせるような美しい展示を繰り広げていました。(ギャラリー2のみ撮影不可)こちらもお見逃しなきようにおすすめします。
志村信裕の「光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)」 2020年
かつて朝香宮が所有していた楽譜と映像を組み合わせた、志村信裕の「光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)」にも魅せられました。ちょうど楽譜の部分に庭園で撮影した緑や光が移ろうように映されていて、景色だけでなく静かに流れる時間までが切り取られているようでした。
12月28日から1月4日は年末年始のためにお休みです。
1月12日まで開催されています。
「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:2020年10月17日(土)~2021年1月12日(火)
休館:第2・第4水曜日(10/28、11/11、25、12/9、23) 、年末年始(12/28~1/4)。
時間:10:00~18:00。
*11/20、11/21、11/27、11/28、12/4、12/5は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円 、大学生800(640)円、中・高校生・65歳以上500(400)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは当面中止。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」
2020/10/17~2021/1/12
東京都庭園美術館にて開催中の「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」を見てきました。
今回出展したのは、青木美歌、淺井裕介、加藤泉、康夏奈、小林正人、佐々木愛、 志村信裕、山口啓介の8名のアーティストで、「人間と自然の関係性」をテーマに、絵画や彫刻、インスタレーションなどの多様な作品を公開していました。
淺井裕介「混血ーその島にはまだ言葉がありませんでした」 2019〜2020年
まず本館の大広間で目立っていたのが、土を用いた泥絵などを制作する淺井裕介の「混血ーその島にはまだ言葉がありませんでした」でした。少年や鹿に似た動物、はたまた草花や装飾的なモチーフが壁一面に広がっていて、それこそ森羅万象の生態系が描かれているかのようでした。
淺井裕介「頭上の森」 2020年
土はもちろん、赤ペンキや墨、またアクリル以外に、近年取り組んでいるという鹿の血も絵具として用いていました。また淺井は蝦夷鹿の頭骨や角を使った「頭上の森」などの立体も展示していました。いずれも角の先に動物の装飾が施されていて、未知の生き物として生まれ変わったかのようでした。
山口啓介「香水塔と花箱」 2020年
白磁の香水塔のある次室と大客室に展開した、山口啓介の「香水塔と花箱」も美しいかもしれません。
山口啓介「香水塔と花箱」 2020年
ここではドライフラワーや造花、また種子などを天然樹脂で固めた「カセットプラント」と呼ばれる作品が並んでいて、一部は窓の外から淡く色とりどりの光を室内へと写し込んでいました。
山口啓介「花波ガラス」 2020年
さらに山口は本館と新館をつなぐスペースに「花波ガラス」を展示していて、透明の小箱に入れられた自然の花と造花が美しいグラデーションを描いていました。花の向こうに屋外の庭園の緑が重なって映るのも良かったかもしれません。
加藤泉 展示風景
円形の窓から庭園を望む大食堂に作品を展示していたのは、胎児のような人型の彫刻や絵画で知られた加藤泉でした。
加藤泉 展示風景
ちょうど手足を広げて浮遊するような彫刻や、男女の肖像のような絵画が並んでいて、いずれもシュールでかつコミカルな表情を見せていました。その様子からは、あたかもアール・デコの空間を楽しんでいる住人のようにも思えました。
加藤泉「無題」 2020年
この他にも市松模様の大理石の敷かれたベランダをはじめ、大きな金庫のある小部屋にも隠れるように作品を置いていました。とりわけ後者はまるで金庫から飛び出してきたような仕草をしていて、愛おしくさえ映りました。
加藤泉「無題」 2020年
今回の展覧会の中で最もアール・デコの空間に映えていたのは加藤の作品だったのではないでしょうか。かくれんぼうならぬ作品を探して歩く面白さも感じられるかもしれません。
佐々木愛「鏡の中の庭園」 2020年
漆喰を用いて自然の景色を彫刻として表現した、佐々木愛の作品にも魅せられました。そのうち「鏡の中の庭園」では、丸い円盤状の支持体へ草花や蝶を線描のように刻み込んでいて、カーテン越しの柔らかい光を受けていました。
佐々木愛「鳥たちが見た夢」(部分) 2020年
「鳥たちが見た夢」も同様の漆喰の作品で、草花や鳥の繊細な模様があたかもカーテンのレースのように広がっていました。
小林正人「名もなき馬」 2014年
さらに本館では床置きした絵画を描いた小林正人や、自然のランドスケープを立体に表現したような康夏奈の作品も目を引きました。
「生命の庭」 新館ギャラリー1 展示風景
一方の新館では、広いホワイトキューブを活かして、山口啓介や小林正人が比較的サイズの大きな絵画を展示していました。
また山口は絵画の他に、東日本大震災以降ひたすら原発に関するニュースを記す日記「震災後ノート」も公開していて、まさに現在のコロナ禍などについても事細かに記述していました。
青木美歌 展示風景(本館部分)
さらにギャラリー2では、ミクロのウイルスなどを連想させるガラス彫刻を制作する青木美歌が、それこそ宝石の煌めきを思わせるような美しい展示を繰り広げていました。(ギャラリー2のみ撮影不可)こちらもお見逃しなきようにおすすめします。
志村信裕の「光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)」 2020年
かつて朝香宮が所有していた楽譜と映像を組み合わせた、志村信裕の「光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)」にも魅せられました。ちょうど楽譜の部分に庭園で撮影した緑や光が移ろうように映されていて、景色だけでなく静かに流れる時間までが切り取られているようでした。
12月28日から1月4日は年末年始のためにお休みです。
【年末のご挨拶】本年も東京都庭園美術館を応援いただき、ありがとうございました。12/28~休館となります。年始は1/5~開館します。*最新情報はウェブサイトでご確認ください。今年はどなたにとっても困難な年だったかと思います。新たな一年は佳き年となりますように。#東京都庭園美術館 pic.twitter.com/C7QCy1jnd1
— 東京都庭園美術館 (@teienartmuseum) December 26, 2020
1月12日まで開催されています。
「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:2020年10月17日(土)~2021年1月12日(火)
休館:第2・第4水曜日(10/28、11/11、25、12/9、23) 、年末年始(12/28~1/4)。
時間:10:00~18:00。
*11/20、11/21、11/27、11/28、12/4、12/5は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円 、大学生800(640)円、中・高校生・65歳以上500(400)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは当面中止。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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