上海ミーティング二日目の午後はエクスカーション(視察)でした。 湿地帯の半島部にある農村集落を訪れました。平野が続く都市郊外の農村風景は、山が見える中で生活している私にとっては、身を隠すところがないようで、少しばかり精神的に不安になります。
訪問した集落で見たもの、見たことはオーガニック農業と自然学校の意外な展開のコラボでした。 都市生活をしていた人がここ2、3年、農村集落に移住をしてきて地域農民と一緒に約3haの有機栽培と自然学校を展開しているのです。
移住した農場スタッフが住んでいたコンクリート船の上のコンクリートの家。 つまり浮かんでいます。
農場長さんは、元中国空軍で20年軍人生活、その後外国自動車ディーラー・アウディの役員をして車の営業を(軍関係者に売ってたんでしょうな)7年か8年やって、3年前に脱サラ。 ご自慢の電動三輪車バイク型。 一般交通手段として中国には電気バイクがたくさん走っています。
自然教室を展開しているNGO(非政府系ということで、中国ではNPOではなくNGOと自称カテゴライズしています)が三団体入っており、農業チームは別に組織化されており、「生き物がたくさん棲む農業」をコンセプトに地域(つまるところは国家ですが)から畑と田んぼを借りて有機農業を始めています。それらが連携しながら協同・共同体を創りだそうとしているのです。 まだまだ土作りには時間がかかるということでしたがいろいろな野菜を生産、特に地域独自の種の保存も心がけている、生き物が住める環境を創り出す努力をしている、さらには1300羽もの合鴨農法の水稲づくりも展開していました。既存の農業者は離農しているようで、日本同様、都市周辺の農業は高齢化しており、地域の農民のお年寄りたちが生産に協力をしています。
役目を終えて田んぼから離れ、肥育中のみなさん。 これから肉へと出荷されてしまいます。
話は元へ戻して・・、自然学校や農場は、子ども、親子を対象にした有料の自然体験活動、土にふれることを目的にした大都会上海にある企業研修にも農業・自然体験活動を実施しているとのこと。もちろん、作物も出荷しています。 農業型の自然学校を進めていました。出資者は都市生活者であり、やればできるんだなと、むしろ、私の方が参考になりました。
ただ、社会主義国ですから、土地の個人所有はできないので、一応は10年契約で土地利用をしています。しかし、急速に人口が増えている上海、すでに2000万人、新興住宅のような同じ設計の住宅も農場の近くには建てられており、研修会の会場付近には高層アパートも建てられていました。土地利用の政策がいつ変わるともしれないことには不安があるようでした。
一方、ミーティングの参加者の中には、自然生活・児童自然教育をテーマに掲げ、日本の大地の会のような安全安心の農産物などの宅配システムを行い、その収益をつぎ込んで親子自然教室を展開している人のプレゼンもありました。ドイツに研修にも行き学んできたそうですが、ヨーロッパ型の自然学校しか知らなかったと言い、スタッフの確保、研修等運営上の悩みの相談を受けました。事業と成り立っている、スタッフさえいればもっと拡大できるという話にも、私の方が驚きました。
億の単位の貧困層と億の単位の超裕福層、そして数億の中間層が台頭している中国です。 既存企業への就職がままならないなか、20から30代の若者の社会起業へのモチベーションも高まっていると感じました。
う~~ん、中国市民社会の進展はあなどれず。
私達日本人、そして中国人も 対中、対日報道は、政府報道だけに頼っています。 日本の大手TVも新聞ももうひとつの本当の中国の姿を伝えていません。日本の本当の姿は中国の多くの人が知らないと同様に、日本人の多くも中国の一般生活者のことを知らないと思います。 中国では日本の右傾化ばかりがクローズアップされ、日本でも中国市民社会の様子はまったくと言っていいほど紹介されません。 これではお互いの溝が深まるばかりです。
しかし、両国の社会システムはかなり違います。 それを含んだ上で、市民同士の友好な関係を産んでゆくのは、両国の次世代にとって、とてもとても重要なことだと思います。