晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

雨読 北越雪譜(2) 12/25

2011-12-25 | 雨読

2011.12.25(日)雪

 「北越雪譜」を語るには絶好の日となりましたが、雪というのは多分に地域的なものがあるようです。北陸や丹後の大雪のニュースをよそに上林では中上林の我が家で10cmの積雪と意外に少ない状況です。本格的な積雪は年明け以降なので余談は許せませんが、いずれにしても越後の豪雪地帯とは雲泥の差があります。
 北越雪譜の目的は、誰もが知らない越後の雪のことを知らしめすべく書かれたものですが、よくぞここまで雪に関しての話題があるものかと思うほどです。
 地気雪となる弁、雪の形状(かたち)、雪の深浅、雪意(もよい)、雪の用意、初雪、雪の推量(たかさ)、雪竿、雪を払ふ、、、、、目次は雪に関する項目で延々と続きます。そして中盤以降は熊刈り、鮭漁、機織りなど北越ならではの産業の話や雪頽(なだれ)、氷柱(つらら)など北国の風物や物語について書いています。それは千差万別で、文章の巧さもあって読む者を雪国の世界に引きずり込んでしまいます。
 牧之の雪について語るとき、常に雪に対する嘆き、悲しみ、苦しみ、そして雪の無い国への羨望がついて回ります。
 「今年も又此雪中(ゆきのなか)に在る事かと雪を悲(かなしむ)は辺卿(へんきょう)の寒国に生たる不幸といふべし。雪を観て楽む人の繁花(はんくわ)の暖地に生たる天幸を羨(うらやま)ざらんや。」という如しです。
 特にこの傾向は前半に多いのですが全編を読み終えると、氏は雪の苦しみに耐え忍ぶことが雪国に生きる者の定めであり、そのことがまっとうに生きるという証であり、暖国では決して味わえない楽しみや喜びもあることをうったえているように思えるのです。Img_2142
 
今年の初めは上林も30年振りの大雪ということでした。
(2011.1.13)


 牧之は極めて科学的な思考の持ち主であって、雪の結晶図は中谷博士が書かれたものと同様であり、凍傷の治療法なども理にかなったものであります。珍談奇談についても確かめることが出来るものは現地に赴き確かめていますし、怪しげな話は道筋を立てて否定しています。例えば「雪中の火」という項では越後の七不思議として紹介していますが、信じられないようなこの話も新潟県に産する石油や天然ガスのこととすれば納得のいくものです。
亀の化石、天麩羅の始まり、異獣、火浣布、両頭の蛇等々面白い記事が満載であっという間に読んでしまうお勧めの一冊です。

【作業日誌 12/25】
地域の餅つきがありました。つきたてのおろし餅は絶品です。P1000645





今日のじょん:今朝の積雪は10cm、それでもじょんは大喜び。P1000631 P1000637 P1000639

 

 

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雨読 北越雪譜(1) 12/24

2011-12-25 | 雨読

2011.12.24(土)曇

 クリスマス寒波が到来し、日本海側の各地で大雪のニュースが流れています。津南町では明日180cmを越すだろうと言われていました。津南町といっても知らない人が多いでしょうが、平成18年の豪雪で4mの積雪をみ、一気に知られることとなった町です。2006年8月25日、野沢温泉から小千谷に向かってこの町を通過しました。真夏のこととて雪の情景は微塵もなかったのですが、雪の季節になると津南町、十日町、小千谷のことを思いだすのです。Img_0353
 
夏の津南町は何の変哲もない町です。



 北越雪譜の著者鈴木牧之は信濃川沿いの現在の117号線からもう一本山手の上越線沿い、三国街道沿いの塩沢の商人です。いずれにしても日本有数の豪雪地帯で、この書は初編上中下三冊の発行とされ、天保六年、七年に刊行されています。越後の雪についての民俗学的な書という極めて希な書物であります。
 北越雪譜 岩波書店 1982年9月 第三刷 定価1,600円
P1000646  冬の登攀こそが神髄と考えていた30代のわたしにとって、雪崩は最大の敵でした。雪国と言うにはあまりに中途半端な丹波に生まれたわたしにとって、雪は親しみ深いものであっても戦う相手ではありませんでした。信州の山々では先輩達がその雪の犠牲になっています。同じ白い雪なのに何が違うのだろうと問い続けていました。
 そんな中で買ったのがこの本なのですが、文語体の煩わしさに読み進めることなく書架に眠っていたものです。
 雪降り積むこの時期に再度頁を開くこととなったのは、生活の中での雪を知りたい、感じてみたいと思ったからです。
 まず、あれほど煩わしかった文語文が実にすんなりと読めるのです。先日幸田露伴の五重塔に挫折してしまったのが不思議なくらいです。読みやすいように編集してあるのかも知れませんが、文語体には違いないのです。そして文語文とはいかに感情表現が簡潔にしかも佳麗に行われるかということを知りました。つづく

今日のじょん:新じょん語録(1)はさまりじょん
 雪の朝は嬉しいようだ、無垢の白さが新鮮に感じられるのだろうか、外に出ると走り回っている。ところが外に出るまでは大変だ。レインコート着せられるので固まってしまうのだ。しかもサークルと窓の間に挟まったまま固まるので、はさまりじょんと呼ばれている。P1000617 P1000621_2

今朝の雪はこんなもん。

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