2014.7.11(金)曇り
「二上山」の本題は今まで書いてきたことでなく、古代の葬送儀礼である。第二章以下、「哭く(なく)」ということ、「誄(しのびごと)」という儀礼、葬送の歌「挽歌(ばんか)の流れというふうに時代をおった葬送儀礼が述べられる。実は古代の葬送儀礼については他の書物で幾度となく読んでいるのだが、それらはすべて退屈で記憶に残らない文章だった。
ところが本書の場合は、飛鳥から二上山周辺のいわゆる竹内街道の村々、哭沢(なきさわ)、四分(よぶ)、笛吹、笛堂(ふえど)、柿本、當麻(たいま)、東条(ひがんじょう)や柿本人麿、當麻氏、笛吹氏、行基、恵心僧都などの人物と相呼応して書かれているので実に理解しやすい。ここのところが本書の優れた部分だと思う。研究書や論文といったものは筆者本人は理解していても読者にはちっとも解らないものが多い。本書のように理解し安く書かれたものは書物を手に入れた甲斐があったものと満足する。
第7章「死者の伝記」は死者がこの世に残す墓誌銘、その中に「傳(でん)」と呼ばれる特殊な文章に付いて書かれている。本書のあらかたは、葬送の道竹内街道周辺を舞台として書かれているが、この章にはその北方にある穴虫越が主役である。現在の穴虫から発見された、国宝威奈大村蔵骨器について書かれているわけだが、この章こそがわたしを二上山へ向かわせるきっかけとなった。(訪問したのは穴虫周辺で詳しくは「穴虫考」の中に記載している)
香芝市穴虫のゴボ山、この辺りで発見されたという。写真はレプリカ。
そして第8章以降「當麻寺の謎」「當麻曼荼羅の語るもの」とつづくのだが、ただ名前だけは知っていた當麻寺について、葬送儀礼の歴史からみると重要で興味深い存在であることに気付く。
このように読み終えて、多くのことを知ったというより、多くのことを理解したといえる貴重な一冊であった。おわり
【今日のじょん】休みの日はちょい遠散歩に行くんだけど、念道橋周辺の畑を見るとさびしくなってくる。数年前までは近所のおばさん達が競うようにして野菜を育て、畑の世話をしておられた。こちらの野菜作りにも随分参考にさせていただいた。それが年齢のせいか知らないけどだんだん耕作されるのが少なくなってきた。立派な(?)防獣柵はできたんだけどねえ。